旧中山道沿いの巣鴨町屋跡の発掘調査が進んでいます。こちらは、通り沿いの洋菓子店の建替え工事に伴って、埋蔵文化財の調査が行なわれるものです。豊島区では、文化財が埋まっている可能性が高い地域を予め文化財包蔵地として指定し、一定の開発が行なわれるときに、事前の発掘調査を義務づけています。巣鴨地蔵通り周辺一帯は、巣鴨遺跡として指定済みです。
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調査は、教育委員会主体で実施されますが、実質的にはNPOとしま遺跡調査会に調査作業を委託しています。こちらは行政のパートナーとして、遺跡調査をより強力に、安定して推進することを目的としている団体です。発掘場所には、お知らせ立看板が掲示してあり、何が行なわれているか周辺住民にわかるようになっています。
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地蔵通りの通行人はそれぞれ立ち止まって、何の発掘調査が行なわれているか興味津々です。 ある意味、ただの工事現場の囲いに人だかりができているようです。
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このお知らせ看板の内容が秀逸です。現在の地図に、現在地・古地図・過去の町割り・既調査地点等が分かりやすく工夫されて表示されています。これなら素人でも興味を持って見ることができます。
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同時に古地図そのものを掲示されており、当時の中山道沿いの巣鴨村の様子がわかるようになっており、素人にも興味が湧く仕掛けになっています。
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さらに、素人とって分りやすい説明文章も掲示されています。
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豊島区の学芸調査員?と思しき方が、発掘作業の手を止めて下さり、通行人からのさまざまや質問に丁寧に対応されておられました。私が立ち聞きした質問と回答のやりとりは以下の通りです。

・どうやって今の地層と昔の地層の区別を付けて発掘するの?→地層ごとに柔らかさや色が異なるのは判別可能です。
・発見した土器等は誰の所有になるの?→土地所有者でなく、豊島区教育委員会に寄贈されます。
・大発見した場合、開発中止になるの?→(可能性としてはあるが)きちんと埋蔵物を収集し、地層等を記録すれば、その後の建物等を建築するための開発は可能です。
・発掘作業にはどれくらいの期間を要するの→3-8週間程度です。
・発掘作業自体で、遺跡を壊すこともあるのでは?→(否定はしませんが)熟練の技術でやっているので、まず起きません。

発掘捏造が騒がれた時もありましたが、考古学はこのような真面目で地道な取組みの積み重ねであることが分りました。
<発掘捏造についてはコチラ>
http://www.mikito.biz/archives/24191452.html

このような丁寧なお知らせ看板と、丁寧な説明員(本来は発掘作業そのものが役割なのでしょうが・・・)があれば、周辺住民や通行人は大きな関心を持って発掘作業に理解を示していただけることが分かりました。発掘作業というと、お堅いイメージ、わかりにくいイメージ、日常生活に関係ないイメージ等があることは否めません。しかし、われわれの現代生活は、まさに先人達の歴史の上に成り立っているのであり、それを知らずに過ごすことは、先人達の歴史を冒涜していることになりはしないでしょうか。

そのためにも教育委員会等が、素人に分りやすく、表示等に取り組むことは非常に大事なことだと思います。ぜひ全国の教育委員会様には、それぞれの地域で郷土愛を育むためにも、発掘調査を広く知ってもらう努力をすべきだと感じます。