経済協力開発機構(OECD)では世界の15歳生徒(高校1年生)を対象に、3年ごとに学習度到達調査(PISA: Programme for International Student Assessment)を行っています。3分野(読解力、数学力、科学力)について、日本では無作為に抽出された約6,000人がサンプル対象です。分析対象国は65カ国です。

日本は、2006年の読解力、数学力、科学力のすべてで順位が低下しました。一転、2009年は順位が回復し、その要因としては、ゆとり教育の見直しが功を奏したのかもしれません。下図は2009年の点数とともに、2000年から3年ごとの順位を示しています。

新たに参加した上海、シンガポールを含め、アジア勢が上位を独占している点も見逃せませんが、一方、米・英・仏・独のランキングが意外に下位であることに違和感を覚えます。

底流に流れているのは、言語力を高め、論理的な思考で迅速に活動しよう、という点です。石原さんも元作家なので共感したようです。私のブログでもとりあげた、PISAの読解力テストに注目しているといいます。例えば、落書きについて議論させた場合、日本人は単純に落書きは悪いことだという思考で止まってしまうことが多いです。しかし、求められている回答は、「社会に余計な負担をさせないで、自分を表現する方法を探すべき」という否定的な意見と、「店の看板を立てた人は許可を求められていない、落書きも許可を求める必要なない」という肯定的な意見、それぞの見解に触れながら論拠(証拠)を立て、自分の意見を示すことです。

PISAは、OECDという経済のための国際機関(教育機関でない)が実施しています。労働市場がグローバル化した社会では、国際的な人材の基準を見いだしていく必要があり、基準のなかに言語にかかわる能力があります。すなわち英語だろうが日本語だろうが、フィンランド語だろうが同じ能力を量っていくわけです。なぜならグローバル化により価値観の共有が難しいため、それを前提として、コミュニケーションを続ける能力、技術が求められ、その指標としてPISAがあるわけです。

調査結果から思うに、15才までの教育でそれなりに実績を残しているのに、全体として何故社会人となるときに、自立した、魅力・能力のある個人に育っていないのか?という疑問が湧きます。高校教育及び大学教育へ進む過程、もしくはそのシステムに問題があるのでは?と感じさせる結果です。2012年の調査結果の発表を待ちたいと思います。
 
各国の点数は、 全参加国の平均点が500点となるように計算したものです。

出典: 社会実情データ図録
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3940.html