先日の東京都知事選挙で、現副知事の猪瀬直樹氏が選出されました。旬の方の、副知事時代を語る本を改めて読みました。

高速道路の審議委員等をやっていたものの、当時の本業は作家で、副知事就任時に、都庁の慣習や仕事のやりかたについて、かなり違和感を感じていたそうです。その後、彼なりの視点を持ち込み、石原知事とタッグを組んで、東京都として日本全体のために、迅速に活動されてきました。

底流に流れているのは、言語力を高め、論理的な思考で迅速に活動しよう、という点です。石原さんも元作家なので共感したようです。私のブログでもとりあげた、PISAの読解力テストに注目しているといいます。例えば、落書きについて議論させた場合、日本人は単純に落書きは悪いことだという思考で止まってしまうことが多いです。しかし、求められている回答は、「社会に余計な負担をさせないで、自分を表現する方法を探すべき」という否定的な意見と、「店の看板を立てた人は許可を求められていない、落書きも許可を求める必要なない」という肯定的な意見、それぞの見解に触れながら論拠(証拠)を立て、自分の意見を示すことです。

ドイツの国語教育では、説明・描写の技術、報告の技術、議事録の記述技術、要約の技術、絵やテクストの分析と解釈・批判の技術、論文の技術、議論の技術、ディベートの技術、プレゼンテーションの技術などが教えられるそうです。それに対し、生徒は論理的に思考し、論理的に表現することが求められます。日本はそういった教え方をしていませんが、このグローバル社会にドイツのような教育を施している国が、現実としてあるということを受入れなければなりません。

また猪瀬氏は、東京都に対して非常に高い意識を求めています。東京生まれで地方を経験していない人はどうしても地方を見下してしまいがち。東京からだけでなく、地方から見なければ、日本全体や世界の中での東京の位置、自分自身の存在も見えてこない、という視点から、積極的に地方公共団体へ、都職員の派遣を行っています(現在の夕張市の鈴木市長も、当時東京都の職員で、夕張に応援派遣されたのをきっかけに、夕張市長になった)。震災時には、東京都水道局職員が早期にいわき市に応援に来てくれたおかげで(埼玉県水道事業団が1番目、東京都が2番目)、水道復旧が早まりました。
この視点は、逆に地方についてもあてはまると思います。地方からだけでなく、東京目線から見なければ、日本全体のいわきの位置、自分自身の存在も見えてこない、という視点です。

他にも、散文的ではあるもののいろいろ刺激的な内容が書かれており、示唆を与えてくれる本でした。この方が都知事にしたとき、その指示をどれだけの実務部隊が応えられるかが肝だと思います。
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