『マネーロンダリング』『永遠の旅行者』をはじめたくさんの経済小説を出されている、橘玲氏。徹底したリアリスト、資本主義論者です。最近は、もっと軽いノリの人生の生き方を出していますね。「幸福の資本論」がその典型ですが、この本「専業主婦は2億円損をする」はそのベースとなったと思われる本です。

確実に、各界各層から反発・反論の出そうなタイトル名です。氏の立場、あくまで個人の嗜好や感覚的な幸せの視点ではなく、全体的・経済的・客観的な視点からの分析です。その意味で、幸せってのは個人的な感覚なものだろう!という方からは、絶対に受け入れられないだろうな。なんせ日本の中年女性のマジョリティを占めている専業主婦が否定されているんですから。

幸福は、しっかりとした土台の上に築かれるべき。そのためには、①金融資産、②人的資本、③社会資本という3つの資本を蓄積し、「幸福に生きるための土台(インフラストラクチャー)」を、各個人が設計することの提案は、幸福の資本論と同じ。

プア充:田舎のマイドルヤンキーは、オカネ(金融資本)がなく、稼ぐ力も弱い(人的資本)。しかしいつも一緒にいる仲良しメンバー(社会資本)と充実した田舎ライフを送れるかもしれない。一方、その友だちネットワークから外れると、3つの資本すべてを持たないこととなり、そのまま即「貧困」である。
リア充:若くして高収入を得られる職業につき(人的資本)、友だちや恋人がいれば(社会資本)、預金ゼロでも(金融資産)、充実できる。
金持ち:稼げる能力を持ち(人的資本)、一財産稼いだ(金融資産)が、その過程で友人や家族を犠牲にしている。

著者のいわんとしていることは、3つの資本をすべてそろえた「超充」を達成することは難しいが、せめて2つをそろえれば「幸福」といえる状態になるのではないか、ということ。年収400万円の人でも、同じく年収400万円の人と結婚して、働きながら人生を送れば、①はともかく②と③は達成でき、人生の勝ち組?にカテゴライズされるでしょう。自分はその資本が充実しているのか、どのカテゴリーに当てはまるのか、そう考えると、ちょっとは気楽に生きられるかもしれない、という元気ができてきました。

では、ここで専業主婦はどうかという視点で考えてみましょう。③社会資本は、ママ友をはじめとする人的ネットワークで満たされています。一方、①金融資産(貯金)はほぼないし、②人的資本(稼ぐ力)は、とうの昔に置いてきて忘れてしまった・・・すなわち、仮に①をも失ってしまうと、目も当てられない状況になってしまうわけです。

著者がいいたかったことのひとつは、結婚&出産&子育ての人生と、結婚&仕事&子育ての人生が、それぞれの女性にとって、実質的に自由に選択できる世の中が日本に到来して欲しいということだと思います。老若男女すべてが社会に参加し、やりがいを持って働き、それぞれの幸せを感じながら、人生を送れるような社会になって欲しいと思います。

<幸福の「資本」論 橘玲著は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/50430112.html
2020-06-14 16.30.52-1