著者の安田秀一氏は、ブランド名「アンダーアーマー」で知られる、株式会社ドームのCEO。快進撃を続けるサッカーチーム、「いわきFC」のオーナーです。ドームの国内最大の物流拠点「ドームいわきベース」は、いわきFCパークの敷地内にあります。

<ドームいわきベースと安田秀一社長は、コチラ>
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<いわきFCパークは、コチラ>
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氏自身も、大学でフットボール選手として活躍し、日米のスポーツ選手を囲む環境の大きな違いに直面したそうです。多忙極める現在でも母校法政大学のフットボール部の監督を務めたり、筑波大学体育会改革のアドバイザーを務めているそうです。現在でも、自らの体を鍛えていて、ドーム本社建物内に併設されている「ドームアスリートハウス」というトレーニングジムで、筋トレしているとのこと。

<ドームアスリートハウスは、コチラ>
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氏いわく、スポーツには、国を強くする3つの力がある。
1.「経済」巨額を稼ぎ出し、地方と国を豊かにする
2.「人材」教育の質を高め、優れた人材を輩出する
3.「健康」人々を健康にし、社会保障費が削減される

それが日本においてうまくいっていないのは、スポーツビジネス業界にオカネがうまくまわる仕組みがないからです。うまくいっているのは、野球の巨人等、極めて少数。高校野球や大学スポーツ全般を含め、選手は一生懸命なのに、関連ビジネスがうまくまわっていないため、選手の待遇向上や、環境整備にオカネが投資されていない。

日本のスポーツの問題点をいろいろ指摘されていますが、目からウロコだったのは、国内の各大学内に設置されている「体育会」は、大学内の正式な組織ではなく、運営はもちろん、そこで発生する費用や収益は、大学とは無関係だということ。これでは、大学本体が、長期的に大学のブランド強化を目的に、スポーツに本腰を入れて施設や広報活動に投資していこうとは思わないですね。アメリカの大学スポーツ(大学対抗アメフトやバスケットボール)が異常に盛り上がるのは、体育会が大学本体の下部組織になっていて本気で選手育成、環境整備、大学のブランド力向上に力を入れている。この違いがあまりに大きい。

また日本で毎年開催されている、国体・高校総体・中体連等の競技の位置づけもあいまいと指摘しています。すなわち、開催目的が、競技なのか教育なのか地域興しなのか?が、あいまいなのです。開催すること自体は、いろいろな意味で良いことだと思います。しかし開催目的がはっきりしなくては、ムダなオカネが毎年、全国でばらまかれることになってしまう。競技が目的なら、人口規模が違う自治体ごとの競争は機会の平等ではないし、毎年各自治体の持ち回りで開催する意味もないでしょう。教育目的ならば、これほど大規模に開催することもないし、順位を過度に気にするあまりハード過ぎる練習する必要もない。地域興し目的なら、学生スポーツをダシにすることはないでしょう。これらのために、毎年、競技設備を公金で整備し、莫大なメンテナンス料も公金で負担することにどれだけのリターンが望めるのか。

最終章で、著者の大胆な各種提言がなされています。なるほど!と膝を打つのもありますし、直感的に各方面から反対されそうだなというものもあります。いずれにせよ、スポーツには「経済」「人材」「健康」に役立つ力があり、それは個人のみならず、国力を高める強い力なので、うまく回る仕組みを作っていきましょう、という著者の思いに賛同しました。

2020-05-01 12.33.15-1