著者のたかぎこういち氏は、服好きの68才。若くして服飾雑貨卸業を大阪で起業するも、うまくいきませんでした。その後、ヨーロッパ・香港等で、長らく服飾ブランドに携わって来られた方です。文化服装学院、東京モード学園という学校でも講師を務められたそうです。50年近くに及ぶ服飾ビジネスの実務経験から、今のアパレルの業界の現状と今後の課題を問うたビジネス書です。

「アマゾンvsZOZO」「ユニクロvsGAP」の章が、それぞれの特徴をつまびらかにしてわかりやすかった。まずZOZOが成功した要因として、最大なのがまず「トライ」して創造的なサービスを開始するスピードの早さ。その一方、過去に終了したサービスも数多いです。またECサイトに出品者を引きつけたのが、出品者が最も悩む、写真撮影・商品紹介ページ作成・梱包・発送を、すべてやってくれること。ほぼ丸投げ可能なので、ZOZOの手数料30%と高い水準を維持できています。そして上記作業をすべて、自社で上記を行っているため、サイト運営を含めサービス全般のクオリティが高いこと。それもアパレルには少ないIT人材に強みがあり、他のECサイトと差別化できたことです。

一方、ZOZOの凋落の例としては、前評判が高すぎたZOZOスーツ。採寸のクオリティが低く、サイズ違いが頻発し、生地や縫製のクオリティが高かったものの、すぐに生産中止に追い込まれました。また独自の値引きをするZOZO ARIGATOは、独断で進めたこと他のアパレルの信用を失い、中止に。いったん離れた出品者を呼び戻すのは難しい。またプライベートブランドを始めたがこれは、別のビジネススキルが必要でしょう。

Amazonの現状に対する考察も鋭い。AmazonがECコマースの巨人であることはもちろんだが、ファッション業界に多額の投資を始めている。日本ではアマゾンファッションウィーク東京を開催し、デザイナーをサポートしている。近い将来には、顧客の好みにぴったりのリコメンド商品を推奨するシステムができるのではないか。

GAPの凋落。GAPは中間マージンを廃したSPA業態という形で、大成功を収めた。しかしショッピングモールへの大量出店が、大量閉店を招いた。

ユニクロの躍進。東レをはじめとする素材メーカーとのコラボによる、素材からの差別化。上質な縫製工場との協力関係。グローバル旗艦店の出店による知名度向上。マーチャンダイジング(商品・時期・場所・量・価格)の適正化。SKUが少ないので、1SKUあたりの生産量を多くできる、結果、コストダウンが図れる。誰に何を売りたいかを一目でわかりやすく見せる、ビジュアルマーチャンダイジングに力を入れている。

これからのアパレルは、ますますパーソナル化していきます。突き詰めれば、すべての商品が適正な価格でオートクチュール化していくのも夢ではありません。そこでは「ホンモノ」が求められます。その条件は、
1.模倣品でなく、ブランドが生み出すオリジナル
2.クラフトマンシップを持ち、匠の技や優れた技術の美があること
3.誠実・正直であり、透明性があること
4.実質の価値を持ち、実用性があること
5.一貫性を持った価値観・哲学で事業が行われていること

日本の服飾機関のレベルは、高いそうです。しかしアパレル人材への教育・処遇が不足しているように感じます。まず、彼ら(彼女ら)を業界に引きつける待遇面を改善すること。また実店舗では販売スキルとともに、ファッション業界に通じたITスキルを持つこと。ビジネススキル、財務やお金の知識を持つことが、大事でしょう。

<ユニクロ対ZARAは、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/54456041.html
2020-04-27 10.59.20-1