著者の中野香織氏は、服飾史家。東京大学文学部卒、英国ケンブリッジ大学客員研究員などを経て、ライターとなり、アパレル関連の著作多数です。その氏が、1858年以降のアパレル業界に革新をもたらしたイノベーター達の足跡を紹介するという、斬新なものです。50人もの方を紹介しているのですが、特に印象に残ったのは、以下の14人です。

・モードのサイクルを作った、クリスチャン・ディオール
・女性の社会進出を後押しした高級既製服の始祖、イヴ・サンローラン
・時代にふさわしい男性像、女性像を作ったジョルジオ・アルマーニ
・アメリカの上流階級という幻想を創出した、ラルフ・ローレン
・遊び心と親近感ある英国紳士像を体現する、ポール・スミス
・デザイナーズ・アンダーウェアを発明した、カルバンクライン
・ミニマリストの女王、ジル・サンダー
・アジア人初のパリ・オートクチュール組合会員、森英恵
・実用エレガンスの巨匠、芦田淳
・テクノロジーを駆使したファッションデザイン、三宅一生
・モードの哲学者、山本耀司
・コムデギャルソン、川久保玲
・ファストファッションを生み出した、アマンシオ・オルテガ
・コモディティファッションの価値を変えた、柳井正

多くのブランド名が、創始者・イノベーターたちの名前ということが改めてわかりました。すでに鬼籍に入られた方も多く、ブランドのテイストを受け継ぎながら、後継者がブランドを維持していくことに成功しているところもあれば、後継者がいなかったり、会社自体が倒産してしまっているところもあります。本の中で著者は、「人の見え方を変えることは、あり方を変えること」、「ファッション史を学ぶことは、時代と人のあり方の関わりを学ぶことにつながる」といっていますが、先人たちの足跡の先に、今のアパレル業界があることを改めて、体感しました。

2020-04-18 16.15.26-1