お金を増やすためのノウハウ本があふれている今日、なんという刺激的なタイトルでしょう。そのタイトルだけで購入しました。著者の森博嗣氏は、専門が航空物理学の研究者で工学博士、かつ小説家という異色の方です。ヒットメーカーらしく、氏によると印税収入だけで累計20億円を超えているとのこと。また、私はあまり小説は読まないのですが、「スカイ・クロラ」という小説は、アニメ化されています(著者によれば、小説自体はあまり売れなかったとのこと)。
著者の主張をつきつめれば、自分にとって欲しいものを知ろう、そして買おうということ。現実社会では、多くのひとは自分のためにお金を使っていないように見える。誰かに見せるためにお金を使っている、のではないか。「お金の減らし方」とは、自分が本当に欲しいもの、自分が本当にやりたいことにお金をつぎ込もうということ。それがさらなるチャンスにつながる。
実際、著者の食生活や他人との関わりは、薄給だった国立大学教員だったころとあまり変わらないそうです。逆に小さい頃からやりたかったこと、それは自宅の庭にSL列車を走らせること、ラジコン飛行機を組み立てることに、印税収入をつぎ込む。それ以外の洋服や人付き合い関連支出は、ほとんどしないそうです。
もうちょっと踏み込むと、「お金を減らす方法」が、自分が欲しいもの、やりたいことを実現することとはいっても、単なる消費でなく、その先の探求・研究レベルになると、より楽しくなり、知識が増え、自分の価値が高まる。なるほど、タイトルは「お金を減らす方法」ですが、実は、こういったアプローチでお金を減らすことで、自己実現を達成しようという、著者の実践報告なんですね。新鮮でした。