著者はファッション流通コンサルタントの齋藤孝浩氏。日経ビジネスや日経MJ等でアパレル関連の記事を書いていて、大学等でもファッションビジネスを教えていらっしゃる方です。

昨今、既存のアパレル企業が業績を悪化させている中、SPAと呼ばれる製造小売業が躍進しています。その代表が、ユニクロ・ZARA・H&M・GAP等です。その中でも、特にユニクロとZARAは、一歩頭が抜けていて、世界一のファッションチェーンを争っています。

その2社の大きな違いは、ZARAは製造業から始まり、ユニクロは小売業から始まっていること。このスタートの違いが、同じSPAでもいろいろなところに違いがでてきています。

・ベーシックの品質を極めるユニクロと、最新トレンドの提供スピードに磨きをかけるZARA
・対象客層を広く浅く狙うユニクロと、狭く深く狙うZARA
・中国で作り日本で拡大したユニクロと、自国スペインを中心に作り世界で拡大したZARA
・時間をかけてローコストを実現するユニクロと、スピードを重視して値下げを抑えて実現するZARA
・広告宣伝に投資して集客するユニクロと、広告宣伝を一切行わず店舗に磨きをかけるZARA

日本企業なのでユニクロの分析をしている本は多いですが、スペイン企業であるZARAの分析を、店舗に訪れ、ディスプレイを分析し、スペイン本社までインタービューして調べ上げた本は、珍しい。ZARAが、スペインから全世界に商品を空輸できるのは、年間2000本ものボーイング747チャーター便を持っているとは驚き。

ただ両者に共通するのは、顧客ニーズを毎週ごとにくみ取り、デザインや製造にタイムリーに反映させていることです。ユニクロでいえば、毎週月曜日に前週のアイテム・サイズ・色別ごとに売上と予算を比較し、生産調整発注をかけていること。また年間52週すべてにチラシを制作・頒布し、値下げロスを最小限に抑える仕組み。ZARAでいえば、毎週2回、全店舗に新アイテムを投入し、顧客がいつ来ても新商品が並んでいて、立ち寄りを誘因し、いま買わなければアイテムがなくなってしまうことを印象づけ、実際に平均4週間で売り切ってしまうこと、です。

SPA企業は数多くあれども、トレンドファッションの鮮度でいえばZARA、ベーシックのコストパフォーマンスではユニクロ、というポジショニングは、しばらく不動でしょうね。

2020-03-20 22.05.27-1