著者の早瀬利之氏は、マスコミ出身の石原莞爾研究家です。石原莞爾信者、フリーク、マニアといってよいかもしれません。石原莞爾といえば、関東軍作戦参謀。満州での満州国建国の立役者であり、1万人の関東軍だけで、20万の兵を持つ張学良軍を破った柳条湖事件・満州事変は、当時、全世界を驚かせたらしいです。

陸軍中将まで上り詰めますが、東条英機との確執で陸軍を追われ、立命館大学の教授や、中国と講話すべしという東亜連盟の活動をしました。東城嫌いは有名で、「私には些細ながら思想がある。東條という人間には思想はまったくない。だから対立のしようがない」といって、東條の無能さをこきおろしたそうです。晩年は病になり、故郷の酒田で療養するのですが、GHQはその石原に証言させるべく、酒田にまで出向き、東京裁判酒田法廷を開催します。そこでも、明らかに戦争犯罪と認識されている大都市空爆や原爆投下をもって「トルーマンが戦争犯罪人だ」と主張しました。また、法廷で、判事に歴史をどこまでさかのぼって戦争責任を問うかを尋ね、「およそ日清・日露戦争までさかのぼる」との回答に対し、「それなら、ペリーをあの世から連れてきて、この法廷で裁けばよい。もともと日本は鎖国していて、朝鮮も満州も不要であった。日本に略奪的な帝国主義を教えたのはアメリカ等の国だ」と持論を披露しました。スゴイ切り返しですね。

石原寄りの本ではありますが、当時の史料や関係者へのインタビューを基に書かれており、天才・石原莞爾は、事実なのでしょう。実際、ナポレオンやフリードリヒ大王らを研究し、天皇陛下へご進講することもあったほどの、読書家。その才能をやっかむ東条英機等により、失脚させられたわけです。男の嫉妬は、女の嫉妬の数倍あるといいます。しかしそんなことで、日本の行く末が方向付けられたとすれば、残念で仕方ないし、これを教訓にこれから繰り返してはならないと思います。
2020-03-09 16.23.58-1