著者の前著では、経済低迷が続く日本への提言として、以下10の施策を提案していました。
1. 地方創生のための観光戦略
2. 商品の輸出促進
3. 強い中堅・大企業の増加促進
4. 経営者教育
5. 技術の普及による生産性向上
6. デザイン性向上
7. 女性活躍
8. 社員教育
9. 最低賃金の継続的な5%引き上げ
10. 全国一律最低賃金への移行

この10の中でも特筆すべき提案は、政府主導で最低賃金の持続的上昇させることにより、企業の生産性の向上を強力に促し、それが、経済へ大きく寄与するとの主張です。しかし何故かうまくいっていません。

<日本人の勝算 デービッド アトキンソン著さは、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/53001483.html
2019-11-22 14.41.02-1

前著の提言は、残念ながらいまのところ、実現に至っていません。今回の本は採用に至らないその原因、ネックとなるものを「中小企業の社長」と断言。日本再生のための最終結論は、中小企業改革だというのです。これまで日本経済を牽引してきたのが、中小企業という常識からは考えられない結論です。

実は、最低賃金の上昇は、中傷企業経営者の動機付けになっていないんです。すなわち人件費の上昇(日本経済全体・労働者のためには良い)は、個々の企業の利益に反する。経営者は、同条件で企業間競争しており、それで経営できないというのは甘えであり、無能ということを示してしまうので、嫌がるわけです。

また、日本の中小企業は、規模が小さいため、生産性向上のための大きな投資ができない。例えば便利なICTシステムを導入したほうが効率的に業務が進むにもかかわらず、導入コストが企業規模に対して重いため見送ってしまい、ヒトの長時間労働でそれをカバーしてしまう。一方、中堅・大企業ならば、躊躇なくICTシステムを導入し、効率的・効果的に業務をこなし、生産性向上し、労働時間も短くできます。結果、日本経済全体・労働者の幸せに寄与します。

ここからいえることは、中小企業が合併し、強い中堅企業となることで、人件費の上昇を受け入れ、人財育成投資や、効率化投資を負担することで、生産性向上が達成しやすくなるということ。

最悪のシナリオは、手をこまねいているうちに、南海トラフや首都圏直下型地震等の大災害が発生し、甚大な経済的損失を受けたときに、その復興資金が枯渇したときです。アメリカが助けてくれれば良いけれど、アメリカファーストの考えで手を引かれたら、もう頼れそうな資金を持っている大国は、中国くらいでしょう。中国にとっても、援助という美しい大義名分の下で、日本の資産を安く買える大チャンスであり、復興資金のために背に腹は代えられない日本がそれを受け入れざるをえない。現実にも今、アフリカ諸国が経済的援助の下で、中国から資金を受け入れ、経済的に支配されつつあります。

ある試算によると、南海トラフで1400兆円・首都圏直下型地震で800兆円の経済的損失が見込まれているそうです。日本のGDPは約600兆円ですから、国難的災害になったら、とても賄いきれない。過去には160年前に、安政の東海地震の津波・南海地震の津波・安政の江戸地震の建物倒壊・さらには安政の江戸暴風雨が、たった数年の間に立て続けに発生したという歴史的事実があります。それを考えれば、南海トラフや首都圏直下型地震等の大災害が複合災害となる可能性だって排除できない。

いつそうした災害が起きるかわからないし、国債が1000兆円を超え、1秒ごとに100万円増えていくともいわれています。とにもかくにも一刻も早く、中小企業をまとめ強い中堅企業とし、労働人口を集約させ、生産性向上を追求しなければならない、という主張ですが、政府はそれを理解し、腹を決めて遂行できるかが問われています。