男性には居場所がなく、女性にはとにかく時間がないことを、膨大なデータとともに実例も交えながら示した一冊。
・居場所のない男:仕事以外の人生の選択肢に乏しく(サービス残業)、世界一孤独とされる日本人男性(住む地域社会に何のつながりも持っていない)。
・時間のない女:婚活(30歳まで)・妊活(35歳まで)・保活(出産後すぐ)といつもリミットに追われ続け、家庭でも自分の時間を確保できない(男性は基本的に家事をしない)日本人女性。

一例として、サラリーマンとその妻との生活は、日中の場所も違うし、時間の進み方も違う。いうなれば、多くの夫と妻はたとえ生涯を共にしても、生活を共にしてはいないということ。それってどう考えても幸せとはいえません。この双方が幸福になるために、一体いま、何が必要なのか?を考えさせる本です。

2019-11-18 16.25.08-1

 あらすじとしては、
・非正規雇用(低年収)ほど結婚できていない日本人男性
・生涯未婚率、孤独死リスクは圧倒的に男性が高い
・男が、女を通してしか社会と接点を持てていない。
・働くことでしか、生きがいを見いだせない男。「覇権的男性性」が男性をも苦しめる
・7人に一人は家事をまったくしない男
・共稼ぎ家庭でも圧倒的に妻の家事時間が長い
と、データを示しながら論を進めるが、ここまでは一般的な話。ここからが著者の真骨頂。

専業主婦はヒマ、なんて幻想。さらにいえば、日本のワーキングマザーは、事実上、世界一働き者。現代日本でいったん母親になれば、共働きであろうとなかろうと、ほとんどの育児と家事労働を引き受けている(夫は会社から帰ってこないから)。家事とひとことでいっても、炊事・洗濯・掃除・育児・買い物にとどまらず、家計の計画と維持、ご近所や親戚や学校繋がりの人間関係の維持、子供の精神的ケア、妻としての美しさの維持等、限られた時間で同時並行で一人でこなすことが暗に求められている。こんな社会の下で子供を、複数産み育てていくのは、あまりにしんどい。こは、産みたくても産めない「社会的不妊」という言い方もできる。

それに加えて、今の日本の政策「女性活用、一億総活躍社会」は、絵に描いた餅。労働力不足を補うべく、共働きで稼いでくることまで期待されているけれど、これ以上活躍する時間なんて残されていない日本人女性は多い。この現状を変えずに、さらに女性活躍を加えるなら、それは「日本女性超人化計画」とも呼べるだろう。

そもそもの原因は、家事を社会が労働とみなさないから。妻の労働をタダと思っているから、結果的に睡眠時間(40代女性の睡眠時間は6時間とも)を削ってでもハードに動かされている。また正規雇用の労働者の長時間労働と低い生産性が、男性を家庭から遠ざけ、妻の母性に頼り、家事を押しつけている。これは男性・女性双方にとって、幸せではない。

本来、力をいれなくてはならないのは、教育とそれをサポートする社会環境の醸成のはず。それらは子供という未来への投資ともいえる。そのために、その子供を育てる親を強力にサポートしなければ、良い子供も育つわけがない。

<処方箋>
・異常な長時間労働の法規制
ワークシェアを進め、父親が早く家に帰り、家事育児や余暇の充実に時間をさく。地域に居場所をつくり、生きがいを複数作る。そうすれば男も女も楽になれる。ただこれには、日本全体の社会意識の改革が必要。民間の自発的行為を待つのは時間がかかりすぎるので、政府規制によるのが早い。

これは難しいようですが、すでにオランダで先例があります。1996年の差別撤廃法により、いくつかの働き方が選択できるようになりました。
1. 従来のフルタイム労働(週36-38時間、週休2日)
2. 大パートタイム労働(週30-35時間、週休3日)
3. ハーフタイム労働(週20時間)
4. フレキシブル労働(臨時労働)
特筆すべきは、少なくとも1-3は、完全に待遇が平等であること。これにより労働時間あたりの賃金格差が是正され、人々は自らの生活・就労形態を選択することができました。日本でも、「同一労働・同一賃金」が目指されていますが、実質的に、そうはなっていません。

・生産性の向上
限られた時間で結果を出す、すなわち生産性の向上が、時間的余裕を生み、また給与・国民所得の向上に役立ちます。働き方改革の根本的な原因は、時間に見合った給与が支払われておらず、現状だけでなく、将来に不安があるから。時間を浪費するような根性論でなく、しっかりと稼げる仕組み作りが必要。

なお、これら2つの処方箋は、日本人の勝算 デービッド アトキンソン著の提言と、軌を一にしています。

<日本人の勝算 デービッド アトキンソン著は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/53001483.html