リバタリアニズムは、個人的な自由、経済的な自由の双方を重視する、自由主義上の政治思想・政治哲学の立場(ウィキペディア)。自由至上主義。これを主張するのがリバタリアンと呼ばれる人達で、日本で代表的なのが、橘玲さん。その学術的根拠が、オーストリア学派の経済学です。この学派のメジャー学者が、ミーゼス「Human Action」とハイエク「隷従への道」。ミーゼスの弟子が、このマレー・N・ロスバード氏です。

現代の経済学は、マルクス経済学にはじまり、ケインズ経済学がメインとなってます(新古典派等もありますが)。大学等で実際に教えられているし、経済政策の実務においても、「乗数効果」「IS-LM曲線」「積極的財政政策」等は、すべてケインズ理論に基づいています。

その結果、何が起こったか。政府の肥大、大きな政府の登場です。ケインズ理論によれば、景気が悪いときは、積極的財政政策をとる(政府支出を大きくする)ことで、民間の代わりに投資の乗数効果を政府がやればよいとします。しかし本当に政府の判断は正しいのか?無駄な支出はないのか?将来をすべてを見通すことができない(神以外に)以上、なるだけ市場、切磋琢磨し変化を続ける民間に判断を任せたほうがよいのではないか、というのが、オーストリア学派の立場です。極論すれば、政府は小さい方がよいのです。個人の自由という観点からも、政府が税金として個人資産を取り上げ、勝手に政府支出に使ってしまうのではなく、個人の資産は自己所有権として、自由に使わせて欲しいのです。

<幸福の「資本」論 橘玲著は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/50430112.html
2019-09-24 08.14.52

景気循環に対する各学派の違いが、おもしろい。
・マルクス経済学:不況や恐慌をなくすために社会主義がある(実は、社会主義でも好況不況が発生することは、すでに歴史が証明済みですが)
・ケインズ経済学:景気変動を調整するためには、政府が経済を管理し、金融・財政政策を行わなければならない(現代の主流な考え方)。
・オーストリア学派:好況時の無駄な投資はマイナス精算され、不況時の有効な投資は大きくプラスに精算されるはず。すなわち投資効果の歪みを是正するのに有効に働く。その結果、市場の神の見ざる手を借りて、景気変動が自動的に調整されるはず。

オーストラリア学派が正しいと証明されたのが、1929年の世界恐慌です。1920年代の不況を打開するため、米フーバー大統領は信用拡大を行い、労働者を保護するため賃金維持を企業に求め、解雇を制限しました。これらの政策の結果、恐慌が悪化し長期化したといわれています。オーストラリア学派ならば、不況時には政府は何もしないので、民間の自発的な活動・調整(賃金水準や投資水準が、神の見えざる手で決まってくる)で、景気が回復する。

要するに、オーストラリア学派によれば、政府は何もしなくてよい、税はもちろん、教育や福祉、警察、道路等にインフラ等も、なるだけ民間に任せたほうが、ムダがない。この理論は既存の自治体から見れば、存在意義がないといわれているようなもので、大きな脅威で、実際に「国家の敵」と呼ばれているそうです。しかし、現実に自治体を民間が運営する、米国サンディ・スプリングス市が登場しています。この自治体では、市役所職員は数名のみで、消防や警察等の機能もすべて民間委託していて、住民満足度も高いとのこと。市の運営費を、半分以下に抑えることに成功し、コストカットによって生まれたお金は富裕層の要望によって、市民の安全を守るサービスに使われているそうです。一度、現地を視察してみたいですね。

<自治体を民間が運営する都市―米国サンディ・スプリングスの衝撃 は、コチラ>
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3488/1.html

なお、リバタリアンは、国家が軍隊を持つことも否定的で、戦争には反対です。それは非暴力の非戦主義ではなく、侵略してくる国家に対して個人が戦うゲリラ戦を行い、個人の生命と財産を守るという、実は激しいもの。

橘怜氏の分類によれば、自由主義思想をざっくり三つに分類しています。私の信条は、リバタリアニズムに近いと思ってきましたが、敬神崇祖や天皇陛下と国民の大御宝のことを考えると、自由主義・民主主義・資本主義、そして「共同体主義」だと思います。

・リバタリアニズム:人は自由に生きるのが素晴らしい。
・リベラリズム:人は自由に生きるのが素晴らしい。しかし「平等」も大事。
・共同体主義:人は自由に生きるのが素晴らしい。しかし「伝統」も大事。