「えろまん」。何という淫靡なタイトルでしょうか!?エロスでよみとく万葉集を省略した呼び方なのでしょうが、衝撃でした。著者は、これまで「日本の古典はエロが9割」や「本当はエロかった昔の日本」「愛とまぐはひの古事記」という本を出してきた方。曰く、万葉集は漢籍の影響を受けているものの、日本の国柄・オリジナリティは、エロにある。

その第一例が、万葉集のトップ(巻第一・一)に出てくる雄略天皇の歌。「こもよ み籠こ持ち 堀串ふくしもよ み堀串ぶくし持ち この岡に 菜摘ます子 家聞かな 名告のらさね そらみつ 大和の国は おしなべて 我われこそ居をれ しきなべて 我われこそ座ませ 我われこそば 告のらめ 家をも名をも」。
著者の超意訳によれば、雄略天皇が花摘みにきた娘の名前を聞いてナンパ(よくいえば求婚)している歌。雄略天皇は、気性の激しい暴君的なところもあったようですが、案外、人間くさい、かわいらしいところもある。ナンパの歌が、万葉集のトップとは、万葉集のイメージが変わりますね。

中国の古典にはこうした恋の歌は、ほとんどなく、情愛・エロは、日本の古典の特徴なのだとか。振り返ってみると、万葉集だけに限らず、源氏物語や今昔物語集、好色一代男ら日本文学の一ジャンルを見れば、好色が褒め言葉であることは、日本の特徴といっていいでしょう。

<誰も言わないねずさんの世界一誇れる国日本は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/52354493.html
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そのほかにも、「あらかじめパンツを脱いで待っている女」の歌が紹介されています。「人の見る 上は結びて 人の見ぬ 下紐開けて 恋ふる日ぞ多き」。超意訳では、人が見る上着の紐はきちんと結んでおき、人が見ることの出来ない下着の紐をあけておいて、恋人に逢う(=セックスする=下着を脱ぐ)ためのおまじないに自分でわざと紐を解いておく、というもの。

そのほか、花鳥風月や比喩でエロを表現した歌の例示が、多数、紹介されていて、4500首もある万葉集の読みこみの深さには、感嘆させられます。当時の万葉集は、ひらがなに相当する表音を、全て漢字の当て字を使って記されていたということも初めて知りました。さらには「人妻」というそのままの意味と文字が登場し、原文では当て字で「比登豆麻」と記されているのだとか。1300年近く前に、われわれの先人たちが、四季折々の美しい自然と生きる根幹を性愛に見いだし、一生懸命生きていた、活動していたその息づかいをダイレクトに感じることができました。

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