著者は、1980年生まれの消化器外科医。39歳ですから医療現場で現役バリバリの方ですが、2015年に「幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと―若き外科医が見つめたいのちの現場三百六十五日」という本を出版したり、複数のウェブメディアで取り上げられている方。福島県にも縁があり、2017年春に2か月だけ双葉郡の高野病院の院長(当時37歳!)を引き受け、高野病院日記というブログを綴られていました。いまは総合南東北病院に所属しながら、執筆活動やSNS等を積極的にされていらっしゃるようです。

2浪して、鹿児島大学医学部を卒業し、消化器外科、そして都内の病院で初期研修というキャリアは、本の中の主人公にほぼ重なります。ご自身の医大生、そして初期研修の実体験がそのまま書かれているのだと思います。

ストーリーや医療現場の様子が、克明にかかれており、一般人にはぞっとする場面も多い。正義感が強い主人公の研修医が成長していく過程が描かれている。基本的に新米医師には、スキルも経験もなく、結局現場では何もできず何もわからず、先輩医師らからただ怒られるのみ。毎日のように医局に泊まり込んで努力しているにもかかわらず、乗り越えられない壁にあたり葛藤し、泣きながら日々を過ごす・・・これがタイトルの「泣くな研修医」につながっているわけです。著者による、これから医療の道に進んでくる医学生・研修医に対する、大きなエールとなる本でした。

それにしても、生活保護で認知症の老人、同い年で末期がんの青年、そして交通事故で瀕死の重傷を負った5歳の少年・・・初期研修のときに、さまざまな患者、症例を見ることで、育っていくんですね。

2019-05-02 10.01.56

 主人公の先輩医師が、ある患者の病状を家族に説明する場面で、とても印象深い一節がありました。
「人間の体は全てが繋がっている。心臓と肺は連係して体じゅうに酸素を運んでいるし、肝臓が体内に取り込まれた毒を解毒すると、腎臓はそれを捨てている。そして心臓・肺と肝臓・腎臓もいろいろなホルモンでお互いに影響しあっている。人間を一つのシステムとして見る能力は、医学部の試験勉強だけでは身につかない。これを学ぶための研修医生活でもあった」。人間の体は、いまだに解明できていない。