防潮堤サイクリングロードについて

黒字:吉田の発言・質問、青字:執行部からの答弁
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いわき市議会無所属の会の吉田実貴人です。東日本大震災から7年あまりが経過しました。そしていわき市ではこれまで多額の予算を投じて、復旧・復興・創生活動に邁進してきました。その財源は、全国の納税者がそれぞれ納めた震災復興特別税であり、国の国債等であります。われわれの地ではこのような血税を使わせていただき、インフラ復旧をはじめとするさまざまな投資をしてまいりました。この投資は必ず、将来役に立つ資産としなくてはなりません。そうでなくては全国の納税者に申し訳が立ちません。また本日は、傍聴席にいわきの小学生も来ていますが、彼らが将来、こんな資産を残してくれてありがとう、と感謝されるようなものしなければなりません。すべてはわれわれ現役世代の行動にかかっております。そんな思いを持ちつつ、以下、通告順に一般質問を行います。

1. サイクリングロード海岸線ルートについて
(1) 既存の自転車道路網整備計画について
かつて平成26年9月の定例会、平成28年6月定例会の一般質問で、津波対策のための防潮堤をサイクリングロードに利活用していただきたいとの提案をさせていただきました。あれから2年あまりが経過し、大きな進捗がございますので、再度ここで取り上げたいと思います。現在、いわき市の海岸線沿いに、津波対策を目的にした防潮堤が建設されており、既存の道路と接続させることで、いわきの海岸線をずっと走れるサイクリングロードができようとしています。これはいわき市の自転車道路網整備計画に位置づけられるものですので、まず、既存の自転車道路網整備計画について伺います。

<平成26年9月議会の提案は、コチラ>

整備計画の経緯
既存の計画は、平成10年前後に岩城光英市長の時代に作られたと伺っております。整備計画を作られた経緯を伺います。

(土木部長)
市自転車道路網整備計画につきましては、車社会の進行による交通渋滞の緩和をはじめ、環境負荷の小さいまちづくりの促進、サイクルスポーツ・レクリエーションとしての健康づくり、及び地域間交流・連携の活性化などを目的として、既存の道路や河川堤防などを活用し、安全で快適な自転車走行空間を形成することにより自転車利用の促進を図る総合的な計画として、平成10年度に策定したものであります。

まずは健康増進目的ということですね。さらに経済効果等のさまざまな効果を狙った自転車道整備計画と理解しました。
サイクリングは,普段,買い物や通勤などで使用している自転車でも気軽に楽しめることが大きな魅力といえます。ライフスタイルに組み込みやすく,長続きしやすいことが大きな特徴です。また,スポーツとして走ることを楽しむようになると,スポーツサイクルである程度スピードを出すことができたり,100キロ以上の長距離走行が自分の力のみで達成できます。車やバイクと違い,のんびりと,自分が止まりたいと思ったところで,止まることができます。 目的地に到着したときの達成感や,坂道を上り切ったときに眼下に広がる景色も格別です。サイクリングは基本的に椅子に座ってペダルを回すだけなので,自分の体重を支える必要がなく,路面からのショックも自転車が吸収するため,ジョギングやウォーキングなどと比べ足首や膝に負担をかけることなく,長時間続けられる有酸素運動なのです。
すでに整備された計画ルートの概要
どのような計画ルートであったのか、その概要を伺います。

(土木部長)
当該整備計画のうち、既に整備が完了したルートといたしましては、重点路線に位置付けられた「新川・夏井川ルート」であり、当該ルートにつきましては、二級河川新川や夏井川の堤防などを利用し、国宝白水阿弥陀堂から夏井川河口に至る延長約14kmの自転車道として、平成10年度から22年度にかけて、整備を行ったものであります。

市民の利用状況
夏井川ルート・新川ルートについて、市民がどのように利用されているか伺います。

(土木部長)
新川・夏井川ルートの利用状況につきましては、朝夕の通勤・通学時における自転車での走行はもとより、ジョキングやウォーキング、犬の散歩など、社会人や学生をはじめ周辺住民の方々などに幅広く利用されているところであります。

夏井川ルート・新川ルートは、通勤通学に使用されているのみならず、市民のウォーキングや犬の散歩等、いろいろな目的に利用されております。毎年2月に開催される、いわきサンシャインマラソンが近づく年末になると、早朝からたくさんのランナーが練習している姿を見かけるようになります。通常の市道とは異なり、信号や交差点が少なく、安全に走れる・歩けるということで、いわき市の非常に貴重なインフラだと思います。

道路メンテナンス状況
夏井川ルート・新川ルートについては、多くの部分が河川の堤防を利用して整備されております。もとより河川の管理は福島県の担当ではありますが、当時、いわき市が路面舗装整備し、当該部分については、いわき市が管理を行っております。整備当初は、良好な路面でしたが、20年近くにも及ぶアスファルト路面の経年劣化、近隣樹木の根の張り出し等のさまざまな要因で、路面が亀裂や陥没、隆起している箇所が散見されております。これまでいわき市は、このような状況に対し、どのようにメンテナンスを行ってきたのか伺います。

(土木部長)
新川・夏井川ルートにおける、メンテナンス状況につきましては、ルートを構成する既存の道路や河川堤防などのそれぞれの施設管理者によって路面の補修などの維持管理が行われているほか、河川愛護団体等の有志の方々のボランティア活動により、除草やゴミ拾いなどのルート上の環境美化への協力を頂いているところであります。

サイクリングロード近隣の歩道においても、桜の樹木の根の張りだし、隆起により、路面が大きく荒れている部分が多く見られます。今年度において、南白土や谷川瀬布巾の新川沿いの歩道のアスファルト舗装改修がなされております。この対応に感謝し、今後も整備計画に位置づけられているサイクリングロードの路面補修も要望申し上げ、次の質問に移ります。

(2) 今回の自転車道路網整備事業(海岸線ルート)について
2011年に発災した東日本大震災の津波被害を受け、福島県はいわき市の海岸沿いに防潮堤を建設することを決定しました。これは海面から高さ7mものの高さになるもので、津波から生命を守るというプラスの効果と、内陸側から白砂青松の景観が見えなくなる等のマイナスの効果があるといわれております。個人的には、巨費が投じられて作られる防潮堤が、何の利用もされず、コンクリートの塊として置かれることに忸怩たる思いがありました。今回、防潮堤部分も活用して市道として自転車道路網整備事業(海岸線ルート)に位置づけていただくことができました。

事業目的
まず今回の自転車道路網整備事業(海岸線ルート)の事業目的を伺います。

(土木部長)
自転車道路網整備事業海岸線ルートにつきましては、本市特有のすぐれた景観を有する海岸線に沿って、国・県道や市道などの既存道路や復旧・復興事業により整備された防潮堤の管理用通路、防災緑地の園路などを自転車走行空間として活用することで、健康増進やレクリエーション活動の場を提供するとともに新たな観光資源として市内外の多くの方々に利用されることにより、復興のシンボルとなるよう整備するものでございます。

整備主体
防潮堤の建設主体は県や国であり、既存の市道・県道・国道も活用して今回の自転車道路網整備事業(海岸線ルート)を構成しております。その海岸線ルートの整備主体を伺います。

(土木部長)
海岸線ルートにつきましては、国・県及び市の関係課で組織するいわき市自転車道路網整備計画・海岸線ルートに係る連絡調整会議により調整を進めてきた結果、既存の国・県道や市道については道路管理者である国・県及び市がそれぞれ整備を行い、新たに市道となる防潮堤や防災緑地のほか、休憩施設や注意喚起看板等については市が整備を行うところでございます。

財源
いわき市が担当する部分の財源の見込みを伺います。

(土木部長)
 財源につきましては、国が事業費の2分の1を交付する社会資本整備総合交付金を基本としまして、残りの2分の1に復興基金を充て整備を進めることとします。

社会資本整備総合交付金、すなわちインフラ整備のための国土交通省所管の地方公共団体向け補助金を活用しての、市の事業であると理解しました。

防潮堤の一般開放
自転車道路網整備事業(海岸線ルート)は総延長50kmにも及びますが、その1/3近くは防潮堤が活用されています。一般論でいうと防潮堤の目的はあくまで、津波対策であり、一般市民の利用は想定されてないと思います。しかし今回は自転車道として、また散歩、散策のコースとして一般市民に広く開放することが予定されています。どのような手法で開放するのか伺います。

(土木部長)
 防潮堤の管理用通路の利用につきましては、通常、自由使用の範疇で利用いただいているところでごさいますが、今回、海岸線ルートとして整備する区間におきましては、平成30年3月に市道認定を行いましたことから、今後は安全施設等を整備し、道路法に基づき共用開始を行うことから、従前にも増して歩行者や自転車利用が安全で快適に利用できるもと考えております。

防潮堤の安全対策
サイクリングルートに使用される防潮堤天板部分は、通行幅は約3mであり、その高さが海面から7mもあり、ある意味、通行に危険が伴う箇所もあります。どのような安全対策を取るつもりなのか伺います。

(土木部長)
海岸線ルートにおける防潮堤の安全対策といたしましては、走行路である管理用通路において走行方向や走行位置を示す路面表示、歩行者との接触に十分に注意するよう呼びかける注意喚起看板等を設置し、また、管理用通路と地表面との高低差が大きい箇所においては転落を防止するための防護柵を設置するなど、利用者の安全確保に努めて参る考えでございます。

関連施設の整備
サイクリングルートは単に道があれば利用されるというものではありません。道路に付随する関連施設が必要です。サイクリングルートの整備に伴い、どのような関連施設を整備していくのか伺います。

(土木部長)
 利用者の利便性向上を図る施設として、全体ルート及び周辺観光施設等を表示した案内板や、休息施設として利用できる四阿(あずまや)及びベンチ、自転車の駐輪ラックなど、関連施設を整備することとしており、これらの施設は本ルート沿線の休憩拠点となる既存の観光施設や公園などに設置することとしております。
 
 安全確保のための標識等の設置は当然ではありますが、利用したくなるような市民目線でお願いしたいと思います。具体的には、今どこにいるのか一目で理解できるような距離表示や、絶景ポイントの案内、コースアウトしないような表示等です。地元の人は熟知の地名や道路名であっても、市内の他の地域の人にとってはわかりにくいかもしれません。ここにこそユニバーサルデザインの思想、すなわち、文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用することができるように目指した施設・製品・情報などの設計・デザインを積極的に取り入れていただきたいと思います。

整備効果
今回のサイクリングルートの整備に伴い、どのような効果を見込んでいるのか伺います。

(土木部長)
海岸線ルートは、復旧・復興事業により建設された防潮堤等を活用し、白砂青松などの本市特有の優れた景観を有する海岸線に沿って整備されることから、健康増進やレクリエーションの活動の場のみならず、観光資源として市内外の多くの方々に利用されることにより、本市の交流人口の拡大に寄与するとともに、津波により被災した沿岸域のまちなみが復興・再生していく状況を見ていただくことにより復興に向け力強く進む本市の姿を広く発信できるものと期待しているところでございます。
 
日本の自転車道の聖地ともいわれる、瀬戸内の広島県と愛媛県にかかる「瀬戸内しまなみ海道では、起点となる尾道側には、電動自転車・ママチャリ・タンデム自転車等のレンタサイクルショップ・自転車が持ち込み可能なホテル・おしゃれな飲食施設があり、また海道の途中のコンビニエンスストアごとに、駐輪場や自転車ラックや無料の空気入れ等の提供がされています。このように自転車を持っていない人でも楽しめる環境が、さらにサイクリストを引きつけています。その経済効果は10億円を超えるともいわれております。

(3) 愛称募集について
自転車道愛称を募集した理由
市民に広く知ってもらい、親しんでもらい、利用してもらうためには、まずは周知が必要です。そこで愛称募集をした理由を伺います。

(土木部長)
 愛称募集につきましては、海岸線ルートの正式な市道名「勿来・久之浜線」とは別に、市内外の皆様に当該ルートを広く認識して頂き、本市の魅力向上や自転車活用の推進につなげ、地域の方々や利用者に親しみやすい路線となるよう、愛称の募集を行ったところでございます。

応募状況
現在までの、市民等からの愛称の応募状況を伺います。

(土木部長)
 応募状況につきましては、去る9月1日から20日までの20日間の募集期間中にメール、FAX、ハガキ等により、市内の79名の方々から204作品、市外は遠方の長崎県の方を含む51名の方々から286作品、合計いたしますと、130名の方々から490作品の応募がございました。

決定プロセス
どのようなプロセスで選考され決定されるのか伺います。

(土木部長)
 決定プロセスにつきましては、皆様からご応募頂きました作品について、海岸線ルートに係る連絡調整会議におきまして審査いたしまして選定することとしております。
 なお、愛称につきましては、後日、記者会見等で公表する予定でございます。

この自転車道構想の発端は、ある市民が美しいいわき七浜を見ながらサイクリングということで、(仮称)いわき七浜サイクリングロード構想という提案を新聞投稿したことだったと記憶しております。ぜひ市民に愛される名称を付けていただくことを要望して、次の質問に移ります。

(4) 今後の予定について
全線開通までのスケジュール
全線開通までのスケジュールを伺います。

(土木部長)
 今後のスケジュールにつきましては、今年度より総延長約53kmのうち、勿来の関公園から三崎公園までの約26kmの区間において工事に着手し、国道・県道をはじめ、防潮堤及び防災緑地などの各施設管理者と調整・連携を図りながら、平成32年度の全線開通を目指し、整備を進めてまいる考えであります。

ルートの開通イベント
全線開通の際にはどのような開通イベントを企画されているのか伺います。

(土木部長)
 海岸線ルートの整備にあたりましては、今年度から平成32年度までの3か年で勿来地区から久之浜地区へ向け順次整備を進めてまいる考えであり、開通イベントにつきましては、市内外の皆様に本ルートを広く認識して頂くため整備が完了した区間ごとに行う予定であり、今後、実施の時期や内容などについて検討してましりたいと考えております。

全線開通に一度にまとめて開通イベントでなく、部分開通ごとに地元の方、特に小中高生に声がけしての開通式等をぜひお願いしたいと思います。

市民への周知
市民に広く知ってもらい、親しんでもらい、利用してもらうためには、まずは周知が必要です。どのような周知を予定されているのか伺います。

(市長)
 海岸線ルートに関係する市民への周知につきましては、先般、記者会見を行い、市内外の皆様に本ルートについて広く知って頂くとともに愛称を募集したところでありますが、今後につきましても、「広報いわき」をはじめ、「市ホームページ」や「フェイスブック」等の広報媒体の活用はもとより、記者会見や開通イベントの開催など、さまざまな機会を捉えて沿線の素晴らし景観を取り入れた本ルートについて効果的に情報発信し、市民の皆様はもとより、市外の皆様にも認知され利用していただけるよう努めてまいりたいと考えております。

自転車道が市民に愛され利用され、健康や経済に良い影響を与えていくようになるためには、一部の自転車愛好家や地元の人を対象にしただけではダメです。具体的には、女性が利用したくなる環境を作っていくことが何よりも大事です。すなわち、女性が安全に走行するための整備、女性が行ってみたくなる、気軽に足を運んでみたくなる施策の実施、女性へのきめ細やかなサービスの提供です。これは私オリジナル意見ではなく、自転車道を活用したまちづくりの盲点として、まさにあのしまなみ街道でも同様の分析・提案がなされているのです。ぜひ先人の知恵を生かし、また他山の石としていただきたいと思います。将来、われわれの次の世代から、この海岸線ルートが評価され、作ってよかったねといわれることを祈念して私の一般質問を終わります。ご静聴、ありがとうございました。

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注)上記記載内容は、当方の手許メモを元に作成したものですので、正確にはいわき市議会公式記録をご確認下さるようお願いいたします。