大谷資料館は、大谷石採石場跡に建つ資料館です。大谷石は軽くて軟らかいことから加工しやすく、耐火性に優れる軽石凝灰岩と呼ばれる石です。このため石塀・防火壁、門柱、蔵、石垣等、と幅広い用途に用いされてきました。かつての帝国ホテルに使用されていたそうです。戦後はコンクリート等の普及によって、現在は採掘は行われていないようです。

資料館が地下坑内入口となっていて、実際の地下数十メートルにある採石場の坑内に入ることができます。

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坑道を降りていくと、ほどなく、ぽっかりとした巨大地下空間が現れます。ライトアップされた石の壁に囲まれたこの空間は、地下宮殿という表現がぴったりきます。

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360度、四面全面が大谷石!!!巨大な岩石の中にいるというわけです。人間が掘り出した空間とは思えない。

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現実には採石場の跡地、もう使われなくなった坑道ですから、廃墟になりがちな産業遺産です。しかし、坑道を安全に確保し、見学用通路を整備し、ライトアップされることで、この空間は、産業遺産の観光資源として生まれ変わり、それがモダンアート、展示会や、コンサート等の多様な使用を生み出しています。いわきにも常磐炭田を素材にした、みろく沢炭鉱資料館等がありますが、まだまだ工夫の余地がありそうです。

<みろく沢炭鉱資料館は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/23082277.html
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ブルーのライトアップは幻想的でした。訪れたカップルが必ず写真を撮るスポットのひとつ。

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産業遺産として、注目すべき点のひとつが、縦に切り跡が付いた壁です。これは大谷石を機械掘りで切り出すときについた跡で、規則的に並んでいます。

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坑内は年平均気温が8度前後と低温状態がキープされるため、太平洋戦争時には、陸軍糧秣廠・被服廠の地下秘密倉庫に利用されたそうです。また政府米(古々米)の保管庫として利用された時期もありました。現在は、ワインや日本酒、納豆などの貯蔵・熟成に使われているそうです。

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コンサート、猿楽、映画会、観劇、美術展、ダンスパフォーマンス、セミナー、映画、テレビドラマ、テレビCM、プロモーションビデオ等の撮影が行われた際の記録写真が展示されていました。本当に数多くの用途に使われています。

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最近では大谷石の多孔石という美しさに注目し、アートとして使用されているようです。コチラはルームライトです。

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なんと公衆トイレや自動販売機までもが大谷石で作られている!(実際には、トイレの外壁はホンモノの石でしたが、自販機の外側を大谷石風のラッピングがされているだけです)。大谷石という素材だけで、ここまで集客でき、かつ楽しく産業遺産の学習ができるという発想と実行力は、とても参考になりました。

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