今年の夏は例年になり猛暑であった。来年以降も夏の猛暑が続くことは否定できない。政府は来年夏までに全ての公立小中学校にクーラーを設置するため、予算措置を図る方針を固めたとの報道がなされた。秋の臨時国会への平成30年度補正予算案を提出することが想定されている。
児童・生徒の健康維持、学習意欲や集中力の向上のために、学習環境の整備の一貫としてクーラー設置は良い方向性だ。これまでは、いわき市は東北地方と言葉のイメージから自ら涼しい地域と自ら思い込んでいて、小中学校教室へのクーラー設置に積極的でなかった。しかし、気候の状況や政府の方針も踏まえて、いわき市としても全ての公立小中学校にクーラーを設置する方向性で調査検討を開始した。小中学校を所管する基礎自治体の議員として、また小中学生の子を持つ親としては、諸手を挙げて政府・いわき市の方針発表を歓迎したい。一方、地方の財政を考慮すると課題が多く、地方議員の立場で大きな憂鬱、ジレンマを感じている。

2018-08-21 09.46.17

課題1:初期コスト
市内小中学校数は100校あまり、すべての学校教室に設置には総額約70億円を要すると見積もられている。対象とする通学する児童生徒は約2.5万人なので、一人あたり約28万円の負担に相当する。それだけ多額の設置コストが発生する要因は、当初の学校建物自体がエアコン設置を想定しておらず、単純に家庭用のシンプルな室外機と室内機を設置すれば良いというものではないからだ。一例を挙げれば、キュービクルという大容量の受電設備を新規に設置する必要があり、また専門の設備設計や躯体への新たな配管・配線等も必要となる。
これまでは、このような設備改修コストについては、国が1/3、基礎自治体が2/3(起債措置あり)負担するルールであった。今回の政府発表は、この国の負担率を大きくする(もしくは全額負担する?)ものと見られているが、日本全国対象では巨大な金額になるはずであるので、どれだけ政府・自治体が負担できるものか、財源をどうするのか等、細部については今後注目していきたい。

課題2:運営コスト
さらに、エアコン運転のための夏期・冬期の電気料金が追加的に発生することは自明であり、将来的なメンテナンスコストや設備更新も必要となる。現在は、公立小中学校の電気ガス水道等の運営経費は、基礎自治体の負担となっているが、それが大幅に増加(ヒアリングによると夏期電気代が4割程度増とのこと)することとなり、設置後、毎年の財政を圧迫していく。これが自治体経営の将来の自由度を狭めていくことは明らかである。

課題3:設置時期
マスコミによれば、「来年夏までに全ての公立小中学校にクーラーを設置」との報道であるが、そのスケジュール感があまりに現実的でない。理由のひとつは上記のような巨大な予算を単年度の補正予算で組むほどの財源は見当たらないこと。現実的には、政府は平成30年度の補正予算で全体の一部を措置し、翌年度以降に大なたを振るって新規に財源確保することになるであろう。そしてその財源で複数年度の教育予算を増額していくことになろう。もう二つ目は、工事業者の手配だ。学校の設備設計は、大規模で工事数が少なく、また複雑なことから、一定の規模を持つ工事業者に設備の設計・施工が求められる。そういった工事業者は市内に限られること、また一年間ですべての小中学校100校あまりに施工することは、技術的・人工的な観点からも困難である。したがって、全校へのクーラー設置完了は少なくとも平成32年度以降になると個人的には感じている。

結論:
全ての小中学校にクーラー設置するという方針は、大きく賛同する。個人的は、日本を将来を背負う人財育成のため、ここに投資しないで何に日本の予算を投じるのかとさえ思う。一方、クーラー設置だけが教育環境の整備ではないはず。人財育成のため全体として何に投資配分していくのか、それで本当に日本・自治体が持続的な成長を遂げることができるのかという長期的・俯瞰的な視点が必要だと思う。「暑いから今すぐにでもクーラーがあれば良いね」、という近視眼的に飛びつく発想は危険であろう。