クマガイソウは、ラン科多年草の1種で、扇型の特徴的な葉をつけます。珍しい植物ですが、日本最大級の群生地が、いわきの田人町綱木地区にあります。山の斜面一面に5万株ものクマガイ草が花を付けていました。その名前の由来は、膨らんだ形の唇弁が、源平合戦の際に熊谷直実(くまがい なおざね)が背中に背負った母衣に似ていること。ちなみに熊谷直実が討ち取ったのが、15才の笛の名手、平敦盛。そちらも同様、クマガイソウと似た植物に、アツモリソウという希少植物があります。

群生地といえば、この季節にはいわきの高蔵寺でのシャガが群生しており、そちらも車ならば20分くらいの距離なので、両方セットで鑑賞するツアーもありでしょう。

<高蔵寺の三重塔 シャガの群生地>
http://www.mikito.biz/archives/47343217.html
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神戸の一の谷の合戦で敗れた平家を追って、熊谷直実は、自分の息子と同じ年ごろの平敦盛の首を討ち取らざるを得ず、その後、その霊を弔うために出家しました。永青文庫蔵「一の谷合戦図屏風」に描かれている、平敦盛を呼び止める熊谷直実。大きな赤い母衣を背負っています。この母衣は、背中方向から射られる敵の矢を防ぐ、実用的な武具だったそうです。

Kumagai_Naozane,Ichinotani

平日で、雨模様にもかかわらず、市内外からクマガイ草の群生地を見るためにたくさんの方が来て、写真を撮っていました。ちなみに昨年は公開時期に約6千人の方が、この地を訪れたそうです。

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故平子長雄さんという個人が、約10年をかけて自宅の裏山で3万株にまで育てたそうです。その後、「クマガイ草を守る会」の会員の方が、その志を引き継がれ、現在では5万株にまで増えたとのこと。

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クマガイソウは、栽培が難しく、環境省の絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)に載っています。直射日光は苦手で、一年を通して明るい半日陰で栽培します。よく枝打ちされた杉林の斜面は最適です。一部の場所では、遮光ネットを使って遮光していました。夏の直射日光に当てると葉焼けしてしまい枯れてしまうとのこと。栽培・管理には、一年中、手間暇がかかるのです。それでも珍しい姿を見られるのは、4月下旬~5月中旬の3週間程度。管理している方々に感謝しつつ、花を愛でさせていただきました。

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入園に際し、解説ボランティアスタッフの方が、クマガイソウの名前の由来、平子長雄さんの活動や、守る会の活動、クマガイソウの育て方等を丁寧に事前説明してくださいます。事前知識を得た上で、現物を見るのでは、思い入れが違ってきます。大変にありがたいレクチャーでした。

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昨年まではアクセス道路が劣悪で、自家用車でも来るのが困難だったそうです。現在は、入園に際し一人当たり300円の保護協力金をいただき、すれ違えるような待避場所の整備や、約50台が駐車できるパーキングを準備する等、利便性が向上しています。それでも、メイン道路からは約10km、すれ違いができない山道を伝ってくるので、大型観光バス等は望むべくもありません。

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この綱木地区ですが、約10戸、20名くらいが居住しているそうです。携帯電話の電波が入りません。水道もありません(メインは井戸水)。医療機関やスーパーも(当然)ありません。これだけ聞くと、不便で住みにくいのだろうと思っていましたが、実際に暮らしている方々にお話を聞くと、まあまちなかと比べたらそうかもしれないが、それなりに暮らせているそう。医師・看護士も2週間に一度訪問診療に来てくださるし、植田まで買い物に定期的に出ることは、これまでもずっとやってきたことなので、いつものこと。それよりも、高齢化に伴い、集落の人数の絶対数が少なくなってしまったので、「さびしい」のが一番の悩みだそうです。自分の価値観を人に押しつけてはいけないということを再認識しました。

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5万株の大群生地ではありますが、早足で回ったら約10分で1周できてしまいます。ゆっくり散歩しつつ眺めるのがよいかもしれまん。

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守る会の活動は、開花している期間だけでなく、一年中、下草刈りや腐葉土作り、道路や駐車場の整備等、ボランティア活動されていることに、頭が下がります。

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休憩所では、温かいお茶もしくはコーヒーを1杯無料で出していただけます。地元の方?が作った俳句や、地元の風景写真が展示されていて、ゆっくりできます。

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地元産野菜の産直販売所も併設されています。山菜・野菜・卵・漬け物等、お手製のものばかりです。せっかくの機会ですので、立ち寄ってみてください。

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私がいただいてきたのは、自然薯3本800円、ヤマフキ250円、ワラビ300円。どれも朝採ったものだそうです。特に自然薯!は、すりこぎで摺ると香りが立ち、粘りけが増すのだとか。夕飯が楽しみです。

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