「Soup Stock Tokyo」(スープストックトウキョー)は、首都圏の駅を中心に約60店舗を展開する飲食店です。この企業、マーケティングの世界ではかなり有名事例なんです。実際に自社の商品やサービスを使ってくれるであろうモデルユーザー(ペルソナ)を作り出し、そのユーザーのニーズを満たすような形で商品やサービスを設計するというマーケティング手法(ペルソナマーケティング)です。

Soup Stock Tokyo の成功は、ペルソナマーケティングにあるといわれています。想定されたペルソナの名前は「秋野つゆ」さん。37歳の女性で、都心で働くキャリアウーマン、装飾性よりも機能性を重視していて、フォアグラよりもレバーが好き、プールでは平泳ぎではなくクロールで泳ぐ、というような属性を、設定。そしてこの秋野つゆが満足するであろう、メニュー、店舗の場所や雰囲気を考えていきました。その結果、わずか10年で店舗数50店を超え、売上高40億円も超える、という成功。その秘密は、顧客像(ペルソナ)のみが満足するように商品やサービスの設計を行うペルソナ・マーケティングでは、自然と商品・サービスが特徴ある魅力的なものになってくるというものです。

<スープストックトーキョー オマール海老のビスクスープは、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/45113489.html
20

ここの創業者・著者の遠山正道氏は、創業当時は三菱商事の社員でした。出資も三菱商事やケンタッキーフライドチキンからあおぐ、いわゆる社内ベンチャーです。しかし創業当時は、飲食の素人がてがける商品開発や運営にうまくいかず、長時間労働と過酷な経営で、かなりのブラック企業だったらしい。しかし、それを乗り越えてからの経営拡大もスゴイ。

著書の中には、創業当時に作成した、企画書全文が掲載されています。「スープのある一日」「スープのある風景」という全体のコンセプトから、具体的な詳細の店舗のイメージまで記さ、それが物語的になっている。これだけでも、企画書の書き方のお手本として読むべき。

実際のところ、創業時には「スープで腹一杯になるのか」、「夏はどうなんだ」、「価格が高すぎる」等、周囲から猛烈な反対にあったそうです。実際のところ、ファストフードというカテゴリで考えれば、ランチでも1000円近い客単価の想定は高すぎるでしょう。しかし、秋野つゆという女性が気軽に入れるお店、自宅では実現できないクオリティのスープがいただけるお店としては、独自のカテゴリを作ったといえるでしょう。敵と異なる土俵を作って勝つ、ゲームチェンジをする、機能(メニュー)を絞ることで、強み(味・価格)を出すという戦略は、まさにブルーオーシャン戦略といえると思います。