炎の牛肉教室! は、牛の繁殖・肥育・精肉業界の外にいるジャーナリストによるものです。しかし、自ら子牛のオーナーとなり、肥育に係る預託料を継続して支払い、自らの牛を精肉し、販売し、自ら食し、その上で収益を得たという希有な経験を持つ方が語る自らの経験は、貴重です。まさに副タイトルのとおり、NO BEEF NO LIFE!を地で行っている方が、一般消費者がおいしい肉と出会うための方策を本気で考えていると感じました。

ちなみ生育するまで、牧草地で放牧中(120円/日)、牛舎内で肥育中(600円/日)、と畜精肉(9万円)を支払い、かりに一頭が85万円で売れたとしても、そんなに儲かる商売ではないとのこと。そんな中、知らなかった事実が、いくつも出てきます。

・肉用牛の「和牛」
黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種の四種がある。流通されているものの、ほとんどが黒毛和種。なぜなら、日本の牛の価格はほぼ等級制度で値段のランクが決まっていて、サシが入りやすい(霜降り度合いが高い)黒毛和種が、コスパが良いため。

・「国産牛」は乳用種がメイン
ホルスタインは乳用種だが、オスは乳を出さないので、ほとんどが去勢された上で、肥育・と畜される。結果として、日本の国産牛の4割以上が、乳用種ホルスタインが占めているという事実。黒毛和種よりも多い。

・「A5」格付けは、美味しさの評価ではない。
「A」の意味は精肉の歩留まりが高いということ、そして「5」は肉質です。一般的な肉用牛ならA格付け、乳用種ならB・C格付けとなります。問題は1-5の肉質等級です。脂肪交雑・肉の色沢・肉の締まりおよびきめ、脂肪の色沢と質等で、決まってきます。そこで一番重要視されるのが、サシ、すなわち霜降り度合いなのです。よって、A5とは、「肉がたくさんとれて、かつ霜降り度合いが最高レベルに高い」牛を指すわけです。これの基準を決めたのが、日本食肉格付け協会。そこではA5が、肉が美味しいかどうかは言っていない。

ただこのランク付けによって、日本では事実上、A5の肉が最上級ということになってしまい、高価格になったことが、肥育農家の行動に影響を与えてしまった。すなわち歩留まりが悪く霜降り度合いが低い品種は、結果的に価格が下がることになり、生産者としては、在来種である褐毛和種・日本短角種・無角和種が味わいが深い肉であっても、経営を考えると、黒毛和種に転換してしまうことが合理的なわけです。

そもそも美味しい肉って何だろう?と考えてしまう。ちなみにA5の肉には、粗脂肪量が50%を超える肉も多いそうです。ここまで来ると、「赤身肉の中にサシがある」のではなく、「サシの中に赤身肉がある」状態ではないか。そんなにサシが欲しければ、赤身肉の中に人工的に牛脂を加えるインジェクション加工肉で良いではないでしょうか。

<インジェクション加工肉は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/46849651.html
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そもそも肉の美味しさって、油ではなく、タンパク質ですよね。そう考えるとサシ信仰は、かなり妖しくなってきます。ちなみに著者が提唱する牛の味を決定する方程式は、以下のとおり。
牛の肉の味=(牛の品種 * 餌 * 育て方)* 熟成
すなわち、和牛かどうかという品種のみならず、どういう餌を与えたか(輸入コーン主体か、それとも牧草か)、どう育てたか(牛舎内のみか、それとも放牧か)、何ヶ月肥育したか(22ヶ月以内で出荷するか、それ以上育てるか)、肉を低温熟成させるか否か。

低温熟成期間として、著者が提案しているのは、と畜後20日以上。これだとかなり「見た目の鮮やかさ」がなくなり、肉の色が暗褐色になるそうです。このような変色が、スーパー店頭で購入する一般消費者に敬遠されがちなことは、明らかですね。では、われわれはどうすればよいか。著者の提案は、スーパーの小売店舗での商品にも、必ず個体識別番号10ケタが表示されており、これが日本独自に進化を遂げた牛の個体識別番号でえす。これは牛の戸籍謄本のようなもので、品種や性別、生年月日、出生地、出荷日、と畜日等がわかります。特に、生年日とと畜日との差が肥育期間を表し、これが長いほうが、一般的に味わい深いものになるらしい。スマホからでも確認できるので、ぜひスーパー店頭ではこれを活用しよう。

<おまけ>海外産の牛肉についても、著者は感想を述べています。
・アメリカ
米国の肉牛は99%、肥育ホルモンを投与して生産している。基準内であれば人体に影響はないと言われているが、22ヶ月以内で出荷できるくらい大きくなるので、USビーフは味わいが薄い。

・オーストラリア
日本の牛のほとんどが、輸入コーン飼料を食べさせて肥育するが、こちらの牛はほとんどが牧草地で草を食べて大きくなる(グラスフェッド)。いろいろな味わいがある。

・フランス
赤身肉を好む。サシ・霜降り肉など捨てられてしまう。日本と全く価値観が違う。