「武士道」新渡戸稲造が書いた名著です。世界を魅了する日本人魂の秘密、すなわちThe soul of Japanを、西洋人に理解できるように明快にしたこと。それはとりも直さず、現代の日本人にとっても、先達の思想行動様式を改めて頭で理解する伝手となります。私たちの祖先が蓄えてきた人生の宝のエッセンスをマンガで表現したコレは、とても意義がある。

そもそも新渡戸稲造が、武士道を英語で出版するきっかけは、ベルギーの法学者ラブレーと教育・思想について議論したこと。そのときラブレーは、宗教教育こそがこどもに道徳を身につけることだと主張。新渡戸は、日本に宗教教育がないのに、なぜ道徳心を持つことができるのかに、疑問を持ち、独自の調査・分析をして、それが「武士道」、いわゆる西洋のノブレス・オブリージュ(高い身分の人は、それだけの義務を負わねばならない)もしくはフェアプレイであることに気づきました。その日本人の精神を欧米の人に知ってもらうために、英語で出版したわけです。

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 いろんな本で紹介されていますが、私の理解では、武士道の根っこに流れているのは、次の3つ。
①仏教(運命を受け入れる・宇宙の摂理と人との調和)、②神道(自然崇拝・祖先崇拝・愛国心・忠誠心)・③儒教(仁・義・礼・智・信)。

これをベースに、サムライは「名誉」と「忠義」のために行動した。名誉は人間としての尊厳。恥をかきたくないという気持ちから正当な価値観が生まれ、人間として正しい行いへと導く。そして忠義。武士道を育んだ封建制の日本では、主君と家臣との間の上下関係こそが、あらゆる人間関係の中心だった。その関係性を支えたのが「忠義」。この点は現代社会とちょっと違和感があるかもしれません。

新渡戸が日本と欧米の結婚に対する価値観の違いについて言及していることも興味深いです。すなわちアングロサクソン・キリスト教では、たとえ結婚しても夫婦は別人でそれぞれのひとりの人間として考える個人主義。それに対して日本人は、結婚すると夫婦は和合して一心同体のものとなる。互いを自分の半身と考える、というものです。新渡戸は、だからこそ日本の夫は、自分の妻を、他人に対する礼儀上、謙遜しおとしめるように呼ぶという慣習につながったと分析しています。なんと明快でしょう!

こんな武士道が、江戸時代に町人にも昇華し、「大和魂」へつながっていきました。これを本居宣長は、「桜」にたとえました。すなわち純真であり、とげや毒がなく、華美を誇らず、生死を自然に任せる覚悟を持つこと。その気品と優雅さを持つことこそが、武士道と大和魂の神髄、すなわち理想の日本人像だということ。

あらためて、日本人とは?につい考えさせられました。先達の残したものは、あまりに偉大です。