大鰐町に伝わる伝統野菜「大鰐温泉もやし」は、幻の冬野菜といわれています。温泉熱と温泉水のみを用いる温泉の町ならではの独特の栽培方法により、 およそ350年以上前から栽培されてきたそうです。津軽三代藩主・信義公が大鰐で湯治する際は必ず献上されたらしい。 その食感は、独特の芳香とシャキシャキとした歯触り、味の良さ、品質の高さ。そして、町をあげて、美味しい調理方法と、提供する料理店を紹介しています。また栽培が特殊ということもあり、栽培量が限定されており、基本的に町内でしかかえず、唯一の例外は大手百貨店に卸していることくらい。価格は一袋200円を超え、通常のもやし数十円の数倍であるにもかかわらず、この希少性がまた話題を呼ぶことにつながっています。まちでは、小学生を含む大鰐町地域おこし協力隊を結成し、定期的に東京で販売実演会を行い、世代を超えて大鰐もやしを慈しみ、楽しみながら売り込むという行動を継続的にやっています。

<大鰐もやしのレシピは、コチラ>
http://ur0.link/IJNp
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地下のパイプに温泉水を循環させた畑の上に、建物を建てて栽培します。建物内は電灯が必要なほど薄暗いですが、さらに畑を掘り込み、その地下で栽培し、その上にムロをかけて、完全に光を遮断することで、真っ白なもやしができるそうです。

地下温泉パイプや建物の初期投資に加え、温泉使用料のかかるので、栽培コストはかなり高い。さらに畑の掘り込みや収穫も、スコップ手作業なので、かなり重労働。土を落とし、水洗いして出荷するのも手作業です。そういった意味で、大鰐もやしの栽培・経営のハードルは、高い。

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きっちり管理された畑は、美しい。

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収穫時には、もやしの長さは30cmくらいになるそうです。

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規格外(長さ不足や折れ等)のもやしは、遠慮なく選り分けて、出荷しない。こういう手間も、通常のもやしとの差別化につながっています。

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大鰐町の道の駅鰐comeでは、大鰐もやしを使った「おおわに400年カレー」が販売されていました。価格は800近くしており、日常使いには不向き、あくまで大鰐もやしを食べたい!というおみやげ目的にターゲットを絞った、いわゆる農業の六次化商品です。カレーであれば日持ちもするので、在庫をもってもある程度、大丈夫なので、商品化しやすいようです。実際に購入して食べてみましたが、もやしの味はよくわかりませんでした・・・

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大鰐もやしのおひたしも販売されていました。こちらは、もやしの食感がダイレクトに伝わります。ただ、どれほど普通のもやしと違うかというと、微妙。

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<大鰐もやしのブランディングが成功している私見>
・もやしそのものに、ストーリー性を持たせた(400年の歴史や殿様に献上等)
・美味しく食べれるレシピを公開
・美味しく食べられるお店を紹介
・特殊な栽培方法で、生産・販売量が限定されている希少性
・基本的に、まちに訪れなければ買えない、食べられない希少性
・YouTube等で、取り上げてもらう戦略
・町人みずから、もやしを慈しみ、育てる風土
・町人みずから子どもたちも巻き込んで、楽しみながらもやしを売り込む行動

農業の六次化商品は、品質や味は当然として、上記のような活動があって始めて、商品として成り立ちます。栽培コストや後継者等の課題もあるものの、大鰐町の取組みは、ブランディングをしていく上で、非常に実践的なものでした。