タウンズビル病院Townsville Hospitalは、クイーンランド州政府が運営する公立病院です。ベッド数732、約30の診療科に6,000名を超えるスタッフが勤務しています。この病院は、タウンズビル市(人口18万人)のみならず、クイーンランド全体(70万人の地域住民)の救急救命センターの役割も持っていることから、救急車が複数台常設され、ヘリポートも設置されています(一日数回は、患者搬送のためヘリが飛来)。

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午前9:00前にもかかわらず、駐車場の8割くらいがうまっていました。患者が病気になった際には、基本的には、まずGP(General Practitioner、かかりつけ医)に診てもらい、紹介して予約しなければ、病院では診察してくれません(救命救急を除く)。そういった、いわゆるウォークインの患者がいなくても、それなりに混雑していました。

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病院の診療受付とは別に、ボランティアが常駐する窓口があり、黄色いおそろいのポロシャツを着たボランティアスタッフが、道案内や相談等に乗っていました。

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エントランスのホール。非常にシンプルです。

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病院全体の敷地図。当初は、広大な敷地内に余裕を持って病院が建てられ、十分な駐車場もあったそうです。しかし、度重なる医療需要の伸びとそれに対する診療科の増設、そのための建物新築を繰り返した結果、敷地は広大にもかかわらず、多数の診療建物が建ち並び、駐車場スペースを圧迫し始めています。

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診療科のトップである、Dr. Andrew Johnson氏に、タウンズビルの医療事情について伺うことができました。
・17年前は250人だったドクターが、現在は750人に加え、5,000 人の常勤スタッフ
・年間65,000人の入院患者(平均入院日数は、3.7日)、75,000件の救命救急、2,600人の新生児の出産
・大病院には、Referral Hospital(Major Hospital)とGeneral Hospitalがあり、それぞれ棲み分けしている。
・患者はまず、GPへ診察に行くので、小さな病気でダイレクトにReferral Hospitalにやってくることはない
・Referral Hospitalは、Specialistをたくさんかかえていて、運営コスト高い
・General Hospitalは、どのような症状でも診ることができるドクターが主
・ひとつの診療科には、3交代勤務を考えると少なくとも、3人のドクターが必要
・医師・看護師等の医療職の待遇を減らすことは、医療スタッフの士気を維持するため困難
・地域医療のHospital PlanとClinic Planを作っている
・勤務医師の50%がタウンズビル出身もしくはJCU出身のドクター、それ以外でも全豪で募集している
。またER部門は独自に採用活動している
・リクルートする際のポイントは、①病院自体の評判、②AttractiveでIconicな指導医、③Key Leader
・医師が定着する一番の方法は、地元の女性と結婚すること、女性はあまり他の地域に移住することを好まないので、これに尽きる
・病院の予算は、毎年、クイーンズランド州のHealth Department of Stateとの交渉
・Health Department of Stateは、病院から一定の質・量の医療サービスをPurchaseするイメージ
・毎年、達成すべき目標数値(VolumeとTarget患者数だけでなく、医療レベルも)を設定し、達成/未達成を報告し、これが翌年の予算交渉の実績資料となる
・病院のCEOの平均在任期間は約2年。政権交代等で、ボードメンバーが替われば、CEOも変わる場合が多い
・8名のボードメンバーの任期は、5年。ボードメンバーがCEOの選任・退任を決める
・ほとんどの手術患者は、日帰り手術、もしくは1泊のみ。最大でも4日(入院平均3.7日)。なぜなら、病院の入院コストは、とても高いため、長く入院させることは患者のお財布のためにならない。
・妊婦の出産でも、原則8時間以内で退院
・ドクターは原則として3交代、48時間/週、4日間×12時間の勤務形態
・超過勤務させないのは、医師個人のフレッシュさを維持するとともに、適度な休暇をとってもらい、長く勤務して欲しいため

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Emergency Room(救命救急)部門に、案内していただきました。救急車を呼ぶ(警察・消防車と共通番号「000」)と、どこの救急車Ambulance carが近いのか判断し、近くの救急車がかけつけ、救急隊が収容が必要かどうかを判断し、必要であれば、原則としてタウンズビル病院に搬送してきます。

まず驚きなのが、救急隊が搬送必要なしと判断すると、搬送しないことです。単なる酔っ払いや、いたずら、タクシー代わりに使うなど悪質の場合は、逆に警察をその場に呼ぶこともあるそう。

次に驚きなのが、救命救急に運ばれてきたものは全てER対応のドクターが診るという体制。それもそのはず、ER対応のドクターは、約100人(3割がベテランのスペシャリスト、3割が研修医、4割がその他医師)。Ambulanceでやって来る患者数は、3000件/年(さらにヘリパッドには、数回/日の患者の飛来がある)、病院に入院する患者の約3割を占めるそうで、運営コスト・運営収入とも非常に単価が高いことから、病院経営にとって、とても重要な部門です。

見学させていただく間にも、数人のけが人、患者が単価で搬送されてきました。焦ることもなく、淡々とテキパキと仕事をしていくのに、プロフェッショナルさを感じます。

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ER対応だけで34のベッドがあり、ER専用のX-ray、CT-SCAN装置を持っているそうです。このような研修の機会を持つことは、この病院は、クイーンズ州の首都であり、若い医師には人気がある一方、どうしもも若い医師はいろいろな課の研修をしなければならないので、結果的に勤務期間は短くなるそうです。

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小児科ER用に、年齢や体重別に、よく使う薬や、検査キットが棚ごとに色分けされ、誰が見ても使いやすいように工夫されていました。属人的な経験や知識を、組織全体に共有、使えるようにしておくというのは、一般の職場でも同じこと。

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ERといっても、緊急手術だけでなく、一般の検査機器も普通に充実していました。

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ER部門が、ER専用のCTスキャンそして読影スタッフを専属で抱えていました。もちろん内科部門等は、独自のCTスキャンを持っているそうです。

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常時、輸血用の新鮮な血液を、一定量ストックしておくそうです。

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ER診察の練習台も、複数設置されていました。

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負の圧力室。パンデミックや大感染病に備えて、空気の圧力がマイナスのベッドも持っています。菌が外部から入ることはあっても、この部屋から出ることはないという仕掛け。一端、原因不明の菌の大発生に備えて、このような(使う機会がないほうが良い)施設も。

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Townsville Birth Center。日本で言うところの、周産期医療センター。前述しましたが、こちらでのお産は、日帰りもしくは1泊だそうです。

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病院の敷地内に、ホスピス的な役割を持つ高齢者用入居施設もありました。

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病院自体が抱える救急車が、(少なくても)4台。週末の夜に繰り広げられる町中の乱痴気騒ぎでは、酔っ払いだけでなく、けが人も多数発生し、これらがかり出されることも多い。

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救急車から搬送される患者は、この入り口から入ることになります。ちなみにオーストラリアでは、救急車の搬送に、患者負担が発生する州が多いとのこと。ビクトリア州を始め、出動基本料金が数百ドル、それに加え走行距離に応じて料金が加算されるという仕組みです。日本円にして10万円~(民間保険に加入していれば、一定の保険金が下りますが)になるそう。ただし、クイーンズランド州だけは、登録住民については、無料で救急車出動するそうです。すなわち患者個人負担ではないけれど、皆さんから徴収する税金で運営していると言うこと。ここは、日本と同じですね。

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