いわき都市計画事業薄磯震災復興土地区画整理事業の宅地完成式が、2017年7月15日に行われました。震災前の薄磯地区は、年間26万人もの海水浴客が訪れる、いわき市内、いや福島県内屈指の海水浴場でした。長くて幅広い砂浜には、夏の間、4軒の海の宿が営業していました。2011年3月の東日本大震災により、高さ8.5mもの津波被害を受け、豊間薄磯地区1100戸あまりのうち852戸が全壊、200人近い死者を出しました。

そこで、まちの復旧・復興のため「土地区画整理事業」と「高台移転」を組み合わせて、一大住宅ニュータウンを完成させたのが、この事業。総事業費は薄磯地区だけで115億円、豊間地区で204億円と巨額が投じられています。

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震災前は雑然とした漁師町で、道路も狭く、折れ曲がっていました。整備された区画は、整形地で、道路も広く、一直線。どこかの高級ニュータウン?と見間違うばかり。それもそのはず、薄磯地区の高台住宅地は、当時、標高50mの高さの丘陵を削り取って、20mの高さに新規に造成したものだからです(ちなみにその土砂は、近隣の防災緑地のかさ上げに使用されています)。まちづくりゲーム「シムシティ」も真っ青な、以前の風景が全く想像できなくなるような造成工事です。

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宅地からは、太平洋を望むことができ、眺望・日照・通風とも申し分なし。住宅開発業者がオーナーなら、さぞかし販売しやすいことでしょう。しかしながら課題は、これが土地区画整理事業であること。すなわち、それぞれの区画は、原則としてもとの所有者の所有物であるということ。すなわち、ほとんどの画地は一般に分譲されず、もとの所有者の意向で建物が新築されるかどうか決められると言うことなんです。日本は私有財産制をとっているので、所有者に住宅建設を強要することはできないのです。

聞くところによると、薄磯地区では3年以内に住宅を新築する意向の世帯は、1/4の約50世帯だそうです。その意味は、今後3年経過しても、のこりの3/4、200区画以上が更地のままということを意味します。これでは、スカスカな住宅団地となってしまうし、そもそも自治会として機能しない。

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隣接には、新築の豊間中学校と、既存の豊間小学校があります。住宅団地の土地部分が、学校の4階部分とほぼ同じ高さになっています。通学至便。

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現在、100区画以上もあるこのエリアで建設されている建物は、2棟のみ。引き渡し直後ですが、すでにペンペン草が生えています。このまま更地状態が継続すれば、雑草の刈り取りをどうするかが、すぐ目の前の課題となりそうです。本来であれば所有者が管理責任があるのですが、すでに所有者は市内に住宅を建設して生活を初めていらっしゃる方が多いと聞いています。そういう方は、豊間薄磯の宅地をすぐに利活用する予定はなく、雑草管理も行き届かないでしょう。

国・県・市としても、計画人口823世帯に対して合計319億円もの公的資金を投入して開発整備した地域です。こんな高価は復興事業など実施せず現金を各世帯に4千万円ずつ支給したほうがそれぞれの生活再建のためになったなど批判されないよう、それぞれがきちんとした生活再建し、まちとして再生できるよう、知恵と汗をかかねばなりません、。

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