2008年著、約10年前に上梓された本です。「青森市」「長野市」「日向市」「宮崎市」「柏市」のコンパクトなまちづくりの成功例を紹介しています。

興味深いのは、当時、成功例と位置づけられた、青森市の再開発ビル運営会社が、2016年に経営破綻し、再開発ビルアウガの民間商業施設部分が、4フロア全部が撤退・閉鎖になったことです。10年の年月が経営環境を変えたのか、それとも、もともとの事業スキームに無理があったのかは、予断できません。

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いずれにせよ、ここから読み取れることは、表層的な成功事例に飛びつくのではなく、事例の背景や、目的、関係者の行動様式等の本質をきちんと明らかにした上で、まちづくりをしなければ、手法をまねただけの猿まね再開発を繰り返すことになってしまいます。役所主導の再開発は、先例・成功事例の進め方を踏襲することで、(まちづくりの背景・目的や、資金の流れ、各当事者の行動様式を明確にしなくても)当事者の説明責任を果たし、また責任を回避しながら、公的資金を投入して再開発をすすめがちです。

いわきにも再開発の先例として、一町目再開発ビル(ティーワンビル)や、いわき駅前再開発ビル(ラトブ)があり、それぞれ公的資金が投入されています。今の評価では、再開発の成功例となっていますが、これだって時代の激変で、将来の評価がどう変わるか予断はできません。