私の事務所に議員インターンシップとして研修に来ていた、福島大学2年生の堀内くん(小名浜出身)に、いわき市20才代の若者が転出する理由という課題を分析・レポートしてもらいました。以下、彼の了解を得て、加筆・修正を経ての転載です。20才のフレッシュな視点が、鋭いところをついています。ぜひお読みください。
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我が国は少子・高齢化の進行に伴い、2008年をピークに人口減少社会へ突入している。今後、人口減少は加速しこのまま推移した場合、現在平成27年時点の人口は、1億2,689万人であるが、45年後の平成72年には、8,674万人へと3割以上減少する見込みである。いわき市においては、平成10年の361,934人をピークに人口減少に転じており、人口減少局面は全国平均よりも10年早く進行している。また、年齢区分別でみてみると、生産年齢人口、年少人口が減少する一方、高齢者人口は増加している。
注目したいのは、同じ区分での福島市と郡山市との比較である。15歳~24歳まで区分の移動(減少)が、いわき市△5,000人近いのに対し、郡山市△2,000人、福島市△2,200人程度と、約半分の減少ですんでいることである。同じ県内の地方都市であるにもかかわらず、人口移動(減少)が著しく異なるのは何故であろうか。この原因について考える。
考えられる要因① 大学が少ない
現在いわき市内の大学は、いわき明星大学と東日本国際大学の2校しかない。それに比べ福島市は福島大学や福島大学医科大学など4校あり、郡山市は日本大学工学部や奥羽大学などの3校がある。さらに福島駅から郡山駅は電車で約40分と通学圏内であり、実家から通える距離である。なので、福島市在住の大学生が、郡山市の大学に通うからといって、わざわざ郡山市に引っ越す必要もない。しかし、いわき市在住の大学生が郡山市の大学に通うとなると、高速バスを利用しなくてはならなく、料金も片道1600円と、実家から通うのは難しい。さらに、いわき市内の大学は、全国的にみて偏差値が低いため、大学にも魅力を感じられないことも要因の一つであると考えられる。
考えられる要因② 交通の便の悪さ
福島市と郡山市は、東京ほどではないが電車とバスの数が多い。しかしいわき市は、いわき駅のほうはそれほど不便さを感じないが、泉駅、湯本駅など地域によって数が少なかったりする。さらにいわき市は広すぎるがゆえに車がないと移動がままならない。やはりそんなところよりもう少し交通の便が良いところに行くのではないかと考えられる。
考えられる要因③ 娯楽施設の少なさ
福島市と郡山市にはラウンドワンやイオンがある。しかし、いわき市にはない。私は、わざわざ郡山まで友達とラウンドワンに行っていたほどである。いわき市にある代表的な娯楽はパチンコや競輪である。いわき市にはとてもパチンコ店が多い。賭博が好きな人たちにとっては最高なのであろうが、今の若者は賭博とかはやらず、無駄にお金を使わない貯蓄タイプの人のほうが多い。このように娯楽施設の少なさも考えられる要因の一つであると考えられる。
考えられる要因④ IT企業・IT関係の仕事が少ない
会津大学に通う友達によると、いわき市に関わらず福島県はIT関係の仕事が少ないそうである。なので、東京など中央に行って就活をするとのことだった。現在はIT産業が発展してきている。そして、ITに興味を持ち、その道を進みたい若者も増えてきている。しかし、いわき市にはそんな仕事が少ない。そんな状況だったら他県に出ていくのも当然ではないかと考える。
考えられる要因⑤ 所得の低さ
図4を見て分かるようにいわき市の平均所得は郡山市や、関東圏に比べて低い状態である。
働くならばできるだけ所得が多いほうが良い。つまり関東圏に仕事を求めて市外に出て行く若者が増えていると考えられる。
出典:いわき市いわき創生総合戦略、単位:万円考えられる要因⑥ 東日本大震災による原発事故
15歳から24歳の若者は東日本大震災のとき、まだ小学生から高校生であった。そのため、避難して福島県に戻ってくるかは親の判断であった。しかし、自立して自分で考えて行動するようになったとき、このまま福島県にいて家庭を持ち、子供ができても、子供の健康や環境は大丈夫なのであろうかと考えるときがくる。このまま福島で暮らしても問題ないと考える若者もいれば、他県に移るべきだと考える若者もいるはずだ。そんな他県に移るべきと考える若者が多いのではないかと考えられる。
考えられる要因⑦ 地元愛の低さ
いわき市の地元活性化のために何かしようという人たちを見てみると、年配の方が多い。地方テレビを見ていて、地元のために何かしようという団体を紹介する時も、若くて30代の方たちばかりである。若者の代表として言わせていただくと、地元なんかの地方より、都会へ行ってみたいという気持ちのほうが大きい。つまり、若いうちは地元の良さが分からないが、だんだん大人になっていくと分かってきて、地元に戻ってくるので、高齢者も増えるのではないかと考える。
考えられる要因⑧ 医療
現在いわき市は医師不足が問題になっている。親も右手が急にしびれ、固まってしまったので、共立病院に受診したところ、血液には何の問題もないし、特に命に別状はなさそうとのことで、途中までの点滴も抜かれて帰させられたとのことだった。それほど命に別状はない患者にかまっている暇もないということが分かる。さらに福島市には福島県立医大付属病院があり、最先端な治療を施してくれるが、いわき市にはあまり魅力的な最先端治療がない。若者が将来のことを考えたら、医療のことも考えるだろう。そんな時に、いわき市は医療があまりよろしくないとなれば、市外に移ることもありうると考えられる。
考えられる要因⑨ 産婦人科が少ない
いわき市は産婦人科が市内面積に比べて極端に少ない。なので一か所に集中し、連日混んでいる。こんな状況では安心して子供を産むことができないと考える若者が、市外に出ていくのではないかと考えられる。
考えられる要因⑩ いわき市に住む魅力がない・知らない
そもそもいわき市に住むにあたって、上記に述べたように、メリットを感じることがないように感じる。いわき市の政策は、奨学金補助制度や、サイクリングロード計画など、より良い町づくりのためにいろいろ頑張っている。しかし、そんなことを知らない市民が多い。友達に5年間いわき市で働いたら奨学金の最高半額分、市が負担してくれることを知っているかと聞いたところ、知らなかったと答えた。このようにとても役に立つ情報のほとんどを知らない市民が多いのも、いわき市の魅力に気づかず市外に移り住む要因であると考えられる。
<解決策>
要因①を解消するためには、簡単にいえば大学を増やすことであるが、そう簡単に増やすことはできない。さらにただ増やしていっても、その大学に魅力がなかったら意味がない。なので私が提案する解決策は、交通の便を良くすることである。要するに、もっと他市他県に電車やバスで行きやすくすることである。これにより、いわき市に住みながら通勤通学ができるようになるので、若者の市外転出を防ぐことができる。
そして、市総出でIT産業に力を注ぎ、福島県のいわき市が先進IT都市と言われるようにすることである。いわき市から他市他県に働きに行くのではなく、他市他県からいわき市に働きに来させる状況をつくる。いわき市のIT産業が発展し、人口が増えれば、自然と所得も上がり、娯楽施設も増えるはずである。さらに言うと、医療面でも、ITの発展に伴い、最先端医療の開発も見込まれる。要するに、現在著しく発展を遂げているIT産業を、我が市で全面的に支援し、いわき市を先進IT都市とすることが、若者の人口転出を防ぐ糸口になると考える。
あとは、現在行われている政策をもっとPRをする必要もあると考える。私は議会傍聴をして、いわき市に住んでいながら知らないことがたくさんあった。いわき市で行っている政策を知らず、いわき市に住むメリットがないため、他市他県に転出する市民もいる。それを防ぐためには、もっといわき市の政策をオープンにし、いわき市の魅力に気づいてもらう必要があるのではないかと考える。