いわき市では、7000戸を越える市営住宅を保有・運用しています。その敷地は、市所有だけでなく、相当部分が民間からの借地です。市営住宅団地内に点在する入居者の集約を図ることで、入居していない棟を取り壊せます。その跡地の空き地を作り、その借地を民間に返還することで、住宅地不足を解消していこうというものです。

平成 27 年度から平南白土団地で、この「市営住宅借地返還促進事業」が開始され、現在、宮田団地・船戸団地・下平窪団地・中神谷団地で、同様の取組みが進行中です。

宮田団地の解体予定棟は7棟34戸で、この跡地を更地にして、元の所有者3名に返還します。その面積4,393㎡、1,300坪強です。50坪の敷地面積なら26戸あまりが新規に建設できる土地が生まれることになります。

ちなみに、あえて新規募集を停止している住戸を「政策住居」と呼んでいます。空いた住戸は防犯等の理由により、ガラス窓等の開口部分には、ベニヤ板が打ち付けられ、いかにも空き家であることが明確にわかります。市内の市営団地には、こうした部屋が点在しています。

R0001601

宮田団地の解体予定棟は7棟34戸で、そこに住んでいた移転必要な方は16戸でした。この16戸の方は、特別に、同団地内、もしくは他の市営団地に移転していただくことになっています。移転していただくにあたり、移転先の部屋は、大きくリフォームされます。キッチン周りの交換、洋式便所新設、クロス貼替え、鉄部・木部塗り替え等です。1戸あたり100万円以上をかかるそうです。また、公共事業に係る移転・引っ越し費用として、20万円程度まで、実費補償もされます。

この部屋は3DK、40㎡です。間取りは1階が3畳とキッチン・風呂・トイレ、2階が6畳と3畳です。いまどき3畳の部屋というのは見かけませんが、この宮田団地が建設されたのは、昭和46-48年度には、一般的だったのでしょう。リフォーム前・後では家賃は変わりません。年収によって家賃は変動しますが、8,000円~12,000円/月と、周辺に比べて格安であることは、間違いありません。

R0001610

キッチン・ガス台は、老朽化・陳腐化が激しいので全部取替えです。一方、蛇口はそのままなので、新旧の対比が対照的です。

R0001608

和式便器も、洋式便器に総取替えです。幸い、宮田団地は公共下水が通っていますので、非常に衛生的です。

R0001613

間取りとともに、改装不可なのが、階段です。狭くて急な階段は、高齢者につらいかも。

R0001611

市営団地の特徴的なひとつが、「風呂がない」ことです。風呂場としての、コンクリート打ちっ放しのスペースは確保されているのですが、風呂釜・浴槽・シャワー等の設備が一切無し。すべて、入居者負担で設置しなければなりません。

R0001612

低層の市営団地の特徴のひとつが、住戸ごとに専用庭が付いてくることです。ここを家庭菜園にしても良いし、簡易な倉庫を設置することも認められています。微妙なところですが、立派な風呂建物を置いている方もいます。

R0001604

建物躯体が古いこと、そして部屋割りや天井高の制限があり、最新の民間住宅とは比べものになりません。しかしながら、1万円程度の家賃負担と、専用庭が付いてくること、そして事実上、駐車場が無料なことも、(所得制限があり、誰でも入居できるわけではありませんが)市営団地が人気な理由です。直近の新規募集倍率は、数倍と狭き門です。