呉市海事歴史科学館、愛称、大和ミュージアムの方が有名です。隣にある海上自衛隊呉史料館(てつのくじら館)が、海上自衛隊の広報施設であるのに対し、こちらは、呉市が設立主体です。隣の目玉が、潜水艦あきしおの実物展示であるのに対し、こちらの目玉は、戦艦大和の1/10スケール展示です。1/10といっても、全長20mを越す超弩級の大きさです。こんなものが海に浮かんで、30ノットで航行して、46センチ砲で砲撃していたなど、想像を絶するスケールです。なんと日本の技術力、生産力が高かったことか。

<潜水艦あきしお展示 ホンモノの潜水艦!は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/48767606.html
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展示は、「大和」の建造と、その背景の軍事活動が中心ですが、明治時代以降の造船の街として、軍港・鎮守府としての呉の歴史や、基幹となった製鋼や造船などの科学技術等が展示されています。毎年、100万人近くが訪れています。100万人といえば、京都の清水寺に匹敵する観光誘客施設ですね。京都のような観光都市でもないにもかかわらず、この数字は、修学旅行生をはじめとする教育旅行の目的地として利用されているからでしょう。いずれにせよ、設置者である呉市にとっては、歴史的観光資源を再発見できたという意味で、大成功の施設です。なお、建設事業費総額65億円で、国・県・地方交付税・募金等が約36億円、市負担が約29億円だそうです。大きな負担をしても、建設にこぎ着けた呉市の判断は、英断と言えるでしょう。

いまも、屋久島のはるか西方の水深345mの海底に、艦体は艦首と艦尾の前後2つに分かれた状態で、沈没したまま。沈没の最中に真っ二つに爆破し、その衝撃で砲塔やや艦首等が飛び散った状態であることが、実際の潜水調査で分かっています。
 
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引揚げ可能な、いくつかのパーツは引揚げられて、展示されています。士官用の浴室はタイル張りだった。洋上のホテルですね。

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船内の伝令管。何十年も海底にあったにもかかわらず、英霊達がいまにも使いそうなくらい原状をとどめています。

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当時の先人の息吹が感じられるモノが、たくさん展示されていました。

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ゼロ戦の実機展示。

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ゼロ戦のエンジン、プロペラです。ジェットエンジンでなく、レシプロですが、これだけ複雑な構造をしているのですね。戦前にこうした技術が蓄積されていたことに驚きです。

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特殊潜航艇。よくよく考えてみたら、戦前に複数の航空母艦を運用していた国は、アメリカ・ソビエト等、非常に限られた国でしたし、その航空母艦同士の決戦をしたのは、歴史上、日本とアメリカしかありません。その実践経験と、関連技術の蓄積が、アメリカの強さだと思います。

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戦艦陸奥のスクリュー。それにしてもこれだけの軍事関連展示物をよくぞ、集めた。隣の海上自衛隊の海上自衛隊呉史料館(てつのくじら館)なら、自前の展示ですむけれど、なんといっても、呉市という「(前例主義の)お役所」が主体です。おそらくリーダーと担当者の構想力と行動力が、これを超越したのではないか。

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