地方公会計システムについて

黒字:吉田の発言・質問、青字:執行部からの答弁
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(1) 導入目的について
導入済みの先進自治体
企業会計は企業がその活動内容および成果を報告する手段として行う会計であります。資金の運用成果の説明責任を果たすために行う会計報告が必要になります。複式簿記を用いて、借方と貸方の設定と仕訳の記帳を行い、仕訳帳、試算表、総勘定元帳、財務諸表を作成します。費用は発生主義を採用し、収益は実現主義で把握されます。一方、これまでの地方公会計は、単式簿記、現金主義でした。これを企業会計に近づけるべく、あらたな地方公会計を導入する動きがあり、国もその方針を示しております。この既に地方公会計システムを導入している主な自治体について伺います。

(財政部長)
国が示した統一的な基準による地方公会計を導入している主な自治体につきましては、中核市では、平成26年度決算から導入いたしました旭川市と倉敷市の2市となっておるところでございます。
また、これより先行して取り組んできた自治体の例といたしましては、東京都が、平成18年度決算から、統一的な基準では純資産変動計算書に計上する税収を、行政コスト計算書に計上するなどとした独自方式で取り組んでいるところであります。

導入済みの先進自治体の導入目的
企業会計の目的は、大きく分けて財務会計と管理会計があります。財務会計の目的は外部の利害関係者への報告であり、財務諸表等を用いて企業の財務状況を明らかにする役割を担っています。また、管理会計は経営者が企業自身の財務状態を把握し、経営の意思決定に役立てるための資料提供を目的としています。この企業会計導入メリットとして財務会計と管理会計をはじめとして、いろいろなものがありますが、先進自治体における地方公会計システム導入の目的について伺います。

(財政部長)
先進自治体における導入の目的につきましては、独自の方式で先行的に取り組んでいる東京都の例で申し上げますと、自治体の財務状況をこれまで以上に正確かつ迅速に把握することによって、限られた資源の一層の効率的・効果的な活用に努め、戦略的な行政運営を展開していくことなどを目的としているとのことでございます。

いわき市における導入目的
いわき市における地方公会計システムの導入目的について伺います。

(財政部長)
本市の導入目的につきましては、資産・負債等のストック情報や、減価償却費等のコスト情報の正確な把握のほか、市民の皆さまや議会等に対し、財務情報をわかりやすく示すといった開示手段の充実、政策調整や予算編成等に有効に活用するなど財政の効率化や適正化に向けたマネジメントの強化、さらには、自治体間での比較可能性の確保などが期待できるものでありますことから、国の統一的な基準により、導入することとしたものであります。

(2) 導入スケジュールについて
現段階での導入スケジュール
現段階での地方公会計システムの導入スケジュールについて伺います。

(財政部長)
地方公会計システムの導入に向けた今後のスケジュールにつきましては、平成27年度に整備しました固定資産台帳の更新や、日々仕訳による複式簿記の導入に向けたシステムを構築するほか、職員の研修等に取り組むこととしており、平成29年度決算からの財務書類の公表に向け、計画的に作業を進めて参りたいと考えておるところであります。

専門スタッフの任用
地方公会計を導入するにあたっては、導入目的を達成するためにさまざまな活動が必要になります。例えば、現在の款項目節で大分類から小分類される科目表示ですが、それをあるべき集計単位と整合させるために、会計原則・経営管理・会計システムに詳しい公認会計士を内製化している自治体があります。例えば埼玉県和光市においては、導入検討中ですが、大手監査法人の若手会計士に市役所内に常駐してもらい、現在の会計システム及び会計処理の実務、具体的には、現在の会計伝票の処理、支払の実務、固定資産管理のプロセス等を理解してもらい、それを踏まえた上で、スムーズに新会計システムのメリットを享受できるようにしています。大事なのは、外部に発注して任せるのではなく、導入検討段階から、公会計の専門家に市役所に常駐してもらい、現在の実務を踏まえた上で、内部のスタッフとして、いわき市のため、市の経営管理に役立つような仕組み作りに手を動かしてもらうことであります。おりしも社会人採用が始まったところであり、このような専門スタッフを大手監査法人から、公会計専門の会計原則・経営管理・会計システムに詳しい若手公認会計士を任用することについての市の考えを伺います。

(財政部長)
地方公会計システムの導入にあたりましては、国が作成した実務的な手引書となります「統一的な基準による地方公会計マニュアル」を参考としているほか、平成27年度からは、他の自治体において導入支援の実績を有する外部専門家による支援により、専門的な知識の習得に向けた研修等による職員のスキルアップなども図りながら作業を進めているところであります。

(3) 導入コストについて
導入コストの内訳
地方公会計システムの導入にあたっては、システム構築に関する外注コストだけでなく、数名の市役所総合職が専属で導入にあたることになるかと思いますが、その他にどのようなものを想定しているか、地方公会計システムの導入コストの内訳について伺います。

(財政部長)
地方公会計システムの導入コストの内訳につきましては、固定資産台帳の作成・更新をはじめ、日々仕訳の導入に向けた助言、職員の知識習得に向けた研修の実施等に係る外部専門家への委託料として、平成27年度から28年度までの2か年で約1,800万円となっております。
今後につきましては、外部専門家による支援業務を継続するとともに、財務会計システムの更新と合わせて導入いたします複式簿記に対応したシステムの導入費用等が必要になるものと考えておるところであります。

国庫補助金等の財源の手当について
地方公会計システムの導入にあたって、国庫補助金等の財源の手当があるのかどうか伺います。地方公会計システムの導入コストに係る一般財源について伺います。

(財政部長)
地方公会計システムの導入にあたりまして、地方交付税措置はあるものの、国庫補助金や県補助金等の特定財源は予定されておりません。
 
一般財源からの負担
国庫補助金等の財源の手当がないとすると、いわき市の一般財源から支払われるということになりますが、改めて地方公会計システムの導入コストに係る財源について伺います。

(財政部長)
導入コストにつきましては、全て一般財源での対応となるものでありますが、地方財政措置といたしまして、固定資産台帳の整備のための資産の評価及びデータ登録に要する経費のほか、財務書類等の作成に必要な専門家の招へいや、職員研修に要する経費、情報システムの整備及び運用に係る経費の一部につきましては、地方交付税措置がなされるものであります。

(4) 固定資産台帳について
固定資産台帳の整備状況について
国から示されたンフラ総合計画に基づいて、平成27年度から固定資産台帳の整備を始めていると伺っておりますが、現在の固定資産台帳の整備状況について伺います。

(財政部長)
固定資産台帳につきましては、地方公会計制度に基づく財務書類の作成に当たって必要となる資産の状況を正確に把握するために不可欠となる帳簿でございます。
固定資産を取得から処分に至るまで、その経緯を個々の資産ごとに管理するため、土地・建物・備品など、市が所有する全ての固定資産について、取得年月日や取得価格、耐用年数、減価償却累計額、数量等の情報を網羅的に記載するものであります。
本市におきましては、平成27年6月に関係各課からなる庁内の「公会計ワーキンググループ」を設置し、外部専門家の助言を受けながら、資産の棚卸しや、資産情報の集約・整理を行い、平成26年度末現在の固定資産台帳を昨年度整備したところであり、今後は、毎年度、台帳の更新をしていくこととしておるところであります。

整備するにあたって把握された課題について
固定資産台帳を整備するにあたって把握された課題について伺います。

(財務部長)
今回整備した固定資産台帳におきましては、土地・建物・備品など、約11万7千件に及ぶ資産の情報を記載したところでありますが、資産の所管部署においては、個々の資産の取得年月日や取得価格等の様々な情報を整理する必要があり、相当な作業時間を要するといった課題が明らかになったところでございます。
今後におきましても、毎年度の台帳更新に伴う資産情報の整理が、財務書類の作成には必要不可欠でありますことから、市の歳入・歳出等を管理する財務会計システムと固定資産台帳システムの連携を図るなど、効率的・効果的な事務の執行に向けた検討を進めて参りたいと考えておるところであります。

(5) 利活用の方法について
財務諸表利用者にとっての利便性
地方公会計システムが導入されることにより、これまでよりもわかりやすい財務諸表等が作成されることが期待されます。地方公会計システムにより作成された財務諸表を広く市民に対して提供することのメリットについて伺います。

(財務部長)
地方公会計システムの導入による財務諸表利用者にとっての利便性といたしましては、発生主義・複式簿記による財務書類の作成により、現金主義・単式簿記では評価しきれない資産・負債等のストック情報や、減価償却費等のコスト情報をより正確に把握することなどにより、市民にわかりやすい情報の提供が可能となることから、財政の透明性が高まることなどが、期待できるものと考えておるところであります。

経営管理目的での利便性
地方公会計システムによる財務諸表の作成により、市の経営管理や政策判断にどのようなメリットがあるのか伺います。

(財政部長)
地方公会計システムの導入による経営管理上のメリットにつきましては、これまでの現金主義会計では見えにくかった資産・負債等のストック情報や減価償却費等のコスト情報の正確な把握により、政策調整・予算編成等への活用や、財政の効率化・適正化に向けたマネジメントの強化が図られるほか、自治体間での比較が可能となることなどが期待できるものと考えておるところであります。

行政コストとサービスとのタグ付け
これまで市が提供するサービスに関して、いくら税金がかかっているのかわからないといる課題がありました。地方公会計システムによる財務諸表の作成により、行政コストとサービスの関連性がどの程度明らかになるのか伺います。

(財政部長)
行政コストとサービスとの関連性につきましては、地方公会計システムの導入により作成することとなる財務書類のうち、行政コスト計算書において、現金主義会計では見えにくかった減価償却費など、現金支出を伴わないコストも含めた適正な期間損益計算を行うことが可能となるものであります。
また、貸借対照表を作成することにより、行政サービスを提供するうえで必要となる土地や建物、現金などの資産と地方債や引当金等の負債の状況などのストック情報の把握も可能となるものであります。
市といたしましては、導入の効果等について検証を行うとともに、具体的な内容につきまして、先進自治体の事例や専門家の意見等も踏まえながら、検討を進めて参りたいと考えております。

会計システムの変更は、単なるプロセスの変更に留まらず、誰に報告するのか、何を報告するのか、どのようなことに税金を使っていくのかの情報提供の仕組みです。多大な工数をかけて導入する以上、いわき市の経営がより、有効に、効果的に、効率的になっていくことを祈念して次の質問に移ります。