徳島県鳴門市の大塚国際美術館に行ってきました。展示は全て複製・コピー、ひとつもホンモノの展示がない美術館として有名です。世界25ヶ国・190余の美術館が所蔵する西洋名画1,000点を、オリジナルと全く同じ大きさに複製し展示する陶板名画美術館です。

大塚製薬グループの一般財団法人大塚美術財団が運営しています。大塚製薬といえば、「ポカリスウェット」「オロナミンC」「カロリーメイト」と、誰もが知っている大ヒット&ロングラン商品を持っている会社です。医薬品会社としても、「オロナイン軟膏」を作っています。グループでの売上高1兆円、営業利益1,000億円の大企業集団の、記念事業として、国立新美術館に次ぐ日本第二位の規模の大塚国際美術館が作られたとのこと。

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陶板名画は、すべてグループ内の大塚オーミ陶業が、名画の撮影データを陶器の板に原寸で焼き付けるという特殊技術です。重さも考慮して、最大3m×1mの陶板は、それを組み合わせることで、どんなに大きい作品であっても、完璧にコピーして再現することができるとのこと。その技術もさることながら、オリジナルの美術品収集に拘るのではなく、複製作品を展示するという発想は斬新です。これにより、時間・コストをかけて現地の博物館へ行ったにもかかわらず、短時間しか鑑賞できないということが解消でき、美術教育に大きく貢献するかもしれません。すなわち、これらを、国内で、原寸で、間近で、さらには直接手に触れて鑑賞することができるということは、ある意味、天地がひっくり返るくらい画期的なことかもしれません。
 
たとえば、このレオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』。これは、修復後のものですが、実は同じ部屋の反対側に、修復前の『最後の晩餐』が展示されていて、修復前後を見比べることができます。こんなことが可能となるのは、この大塚国際美術館だけでしょう。
 
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巨匠ミケランジェロが4年間で描き上げた、システィーナ・ホール。大塚国際美術館の目玉のひとつです。圧倒的な礼拝堂天井の大空間と、それを埋め尽くす大フレスコ画。見事です。

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天井の大フレスコ画の一部を切り取って、足下に下ろしてみるとひとつひとつが巨大であることがわかります。こんなことができるのも、陶板名画だからこそ。この絵には流石にテープがあり、触らないことになっていますが、ほとんどの名画はテープ無し、触っても構わないそうです。

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フェルメールの真珠の耳飾りの少女。贋作が出るほどの有名作品です。ラピス・ラズリという青い顔料が美しい。

<私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/25725395.html
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作品のそばには、真珠の耳飾りの少女の記念撮影用のコスプレの衣装が設置されていました。作品に対する冒涜ではないか?というご批判もあるでしょうが、素直にやってみました。ターバン?だけでなく、ちゃんと耳飾りまであるんですよ。
 
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イタリアのパドヴァにある礼拝堂スクロヴェーニ礼拝堂。ギリシャの隣の部屋は、イタリア。そしてフランスと、数十メートル移動するだけで、他国の美術館に瞬間移動するのは、なんとも不思議です。

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パリのルーブル美術館にあるモナリザ。ホンモノの展示の前には常に人だかりで、なかなか近づいて鑑賞することができません。仮に近づいたとしても数十秒で移動しなければなりません。それがここでは、接近禁止のテープさえない状態で、じっくり鑑賞できます。

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ボッティチェリの「ヴィーナス」の誕生。海の泡から成人した姿で誕生した美と愛の女神ヴィーナス。西風の神ゼフュロスとその妻女神フローラが、春の訪れをイメージする西風を吹き付け、ヴィーナスをイメージさせるバラをまき散らしています。ちなみに、ヴィーナスはなぜかホタテ貝の端に立っているという、ありえない構図。

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モネの「大睡蓮」の絵を、そのモチーフとなった睡蓮の池に囲まれて屋外で鑑賞するという、これまた美術鑑賞としてはありえないシチュエーション。

陶板複製画は原画と違い、物理的なショックに強く、また光による色彩の退行にも強いそうです。さらには、なんとなれば、デジタルデータが残っているので、将来、再度陶板を作ることさえもできるのです。ひょっとすると、これからの美術品の鑑賞・保存のやりかたに一石を投じるのかもしれません。

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