2016年2月末に退任したホセ・ムヒカ、ウルグアイ第40代大統領。2012年のリオ会議での感動的なスピーチを中心に「世界一貧しい大統領」として有名になり、初来日しました。大統領官邸に住まず、以前のまま小さな平屋に住み続けた。大統領専用車も使わず、30年くらい前の愛車を使っている。大統領の給料の9割を寄付し、残り1割の半分は将来農業学校を作るための貯金に充てているそうです。議員である妻の収入に頼り、生活費は月に1000ドル程度という極めて「大統領」らしくない、というより「政治家」らしくない方です。
 
氏を一躍有名にしたのは、2012年、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された国連の「持続可能な開発会議」で、「もっとも衝撃的なスピーチ」をしたこと。それは、一枚のパワーポイントも使わず、メモも見ずに、自分の言葉だけで行った8分間のスピーチで、演説終了後には、喝采の拍手が鳴り止まなかったそうです。
 
以下、名言。
<質素に関して>
私は貧乏ではない。質素なだけです。
貧乏とは、欲が強すぎて満足できない人のことです。
少ししか物を持っていなければ、その物を守るための時間も少しで済みます。

<時間に関して>
自分の時間を、好きなことに使っているときが、本当に自由なときなのです。
時間であふれることこそ、自由なのです。
物を持つことで人生を複雑にするより、私には、好きなことができる自由な時間のほうが大切です。

<現代の消費経済社会に対しての批判>
現代社会では、消費をひたすら早く多くする必要がある。
消費が停滞すれば不況になるからだ。こうして世の中は、使い捨ての社会を実現した。
しかし西洋の富裕社会が行う消費を全世界の人ができる資源が地球にはない。
環境危機が問題の源でなく、根本的な問題は、私達の社会モデルであり、見直さなければならないのは、私達の生活スタイルだ。
 
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青年時代には極左武装組織の一員としてゲリラ活動を行い、逮捕後、13年間に亘る苛刻な獄中生活を送り、拷問、虐待を受けたそうです。それがきっかけとなり、現代社会の矛盾を(ちょっとだけでも)正すために、政治家になったそうです。第40代大統領に就任してからの5年間には、麻薬組織をオープンにするための大麻の合法化、妊娠中絶の合法化、同性婚の合法化など、必ずしも100%の支持を得られない政策を進めました。そこには、彼の頑健なまでの信念を感じます。

もっとも衝撃的なスピーチの末尾に、豊かさとは何か、人生で大切なこととは何かを、断言しています。
「発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛を育むこと、人間関係を築くこと、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限の物を持つこと。発展は、これらをもたらすべきなのです。