第1回 福島第一廃炉国際フォーラムが、いわき市のスパリゾートハワイアンズで開催されました。経済産業省資源エネルギー庁と原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)との共催です。

国際原子力機関(IAEA)及び経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)等の国際機関や国内外の著名な専門家、霞ヶ関、福島県庁、及び地元関係者が一堂に会する、廃炉分野における初めての国際的なフォーラムです。

<プログラムは、コチラ>
http://bit.ly/1RZ1AL3
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最初は、日本側からのプレゼンテーションが続きました。日米同時通訳がつきます。主に、東京電力福島第一原子力発電所の現状についての説明です。これらのほとんでは、東電のホームページに開示されている、パワーポイントや動画の英語版でした。日本語では、たくさんの情報がありますが、オーソライズされた英語版で、重要なものを要約したものとなると、海外からではアクセスしにくいようです。

オーソライズといえば、主催は、経済産業省資源エネルギー庁、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)ですが、協力は、国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)、日本原子力研究開発機構(JAEA)、国際廃炉研究開発機構(IRID)、駐日英国大使館、駐日フランス大使館、駐日米国大使館、東京電力と、とても強力なメンバーが揃っています。また、後援は、復興庁、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省、福島県、福島大学、福島工業高等専門学校、福島民報社、福島民友新聞社、日本原子力学会、日本原子力産業協会と、これも信頼できる団体名が並びます。

日本語と英語の情報格差(情報の非対称性といってもいい?)が、海外からの、日本に対する不安感を増幅させるかもしれません。今回の福島第一廃炉国際フォーラムのような、オーソライズされた団体が主催し、オーソライズされた方が、英語で発表し、情報を共有するのは、国際的にも必須のことなのだと、改めて思いました。

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一方、知っているようで知らない、国内データもあり、最新の情報をアップデートするという点でとても勉強になりました。

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合間には、後援団体や廃炉関連企業による、展示ブースが置かれていました。共通のパネルで、どんな活動をしているか、廃炉に関するどんな製品・サービスを提供しているかが、展示されていました。

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国際原子力機関(IAEA)が、「福島第一原子力発電所事故 事務局長報告書」という公式文書を2015年に発表しています。その原本の日本語版が配布されていました!貴重なものなので、後できちんと読みます。

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廃炉に関しては、ロボットや遠隔操作装置のデモンストレーションを展示する企業が多かった。

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いわきロボット研究会が、研究開発・製作した災害対応ロボット「がんばっぺ1号」の実機が、有名な企業の展示物に並んで、展示されていました。これは、誇らしい。

<災害対応ロボットがんばっぺ1号は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/42812068.html
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後半は、海外における廃炉作業の実例報告でした。アメリカではハンフォード、イギリスではセラフィールド、フランスではマルクールという都市が、廃炉作業を実際に進めている代表的な都市です。その廃炉技術だけでなく、住民感情の解決方法等の、実例が報告されました。フランスのマルクール原子力施設には、私自身、2014年10月に自費で訪問し、廃炉に至る諸課題を見てきたところでした。

<フランス マルクール核廃棄物処理施設は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/40668915.html
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廃炉の過程で大事だと、何度も強調されていたのは、原子力施設も地域コミュニティの一部だという認識に立ち、情報を公開し、共有することです。そのためには透明性を確保し、反対の意見を持つ者に対しても、オープンに情報を開示し共有すること。そして頻繁に公式・非公式の会合を持つことです。原子力に関する情報は、何よりも先に、地域コミュニティに前もって知らせる。そのことで相互の信頼を得ることができるというものです。

OECD/NEAのマグウッド氏が強調していましたが、「人は組織を信頼するのではなく、人を信頼する」。フランスでは、原発サイトごとに、地元住民への情報公開を目的に「地方情報委員会(CLI)」が設置されています。CLIは、地元市長や議員、住民等で構成(原発に反対する方を含む)され、施設の原子力安全および放射線防護に関する一般的な情報の入手や専門家による環境影響調査などを通じて総合的に情報評価を行い、分かりやすい形で住民へ情報を公開することで、情報伝達の透明性の確保や一般公衆の理解促進を担います。また一定程度、原子力に関する施策の意思決定に関与するそうです。

<地方情報委員会(CLI)は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/40669470.html
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イギリスのセラフィールド原発が立地するコープランド市の、マイク・スターキー市長が登壇されました。コープランド市では、かつて石炭で栄えたが、原子力に産業が取って代わり、労働者人口7万人のうち25%が、原子力関連産業に従事していて、一方、市も国の助成金に依存していたそうです。

そんなセラフィールド原発は、操業開始から、北欧にまで至る広域的な海洋汚染や、幾度もの事故を背景とした周辺住民らへの深刻な健康被害などを引き起こし、1957年には、世界初の原子炉重大事故となるウィンズケール火災事故が起き、16時間燃え続け、多量の放射性物質を外部に放出した。数十人がその後、白血病で死亡したといわれています。1973年にも、大規模漏洩事故が発生し、31名の労働者を被爆させ閉鎖となった施設です。

当時は、地域コミュニティに対して原発事故に関する情報公開もなく、相互に信頼関係はなく、懐疑心だったそうです。しかし1990年に起きたテクニチウム事故をきっかけに、外部との建設的な対話を始めたそうです。大事なのは、透明性と誠実性。それぞれの責任を果たし、オープンに進めること、事実をタイムリーに伝えること、伝える力を持つこととのこと。これらを進めた結果、コミュニティも原子力施設に協力的となり、廃炉作業をサポートしてくれるようになったとのこと。廃炉に関するリスクを理解し受入れることで、次世代に対する政府からの投資を呼び込み、大学等を誘致し、現在では物理学のトップ5に入るという、メリットを享受しているそうです。Center of nuclearといういい方をしていましたが、廃炉をきっかけに、負の遺産でなく、次世代に役に立つものを残すという視点は大事です。日本・福島・浜通りにおいても、上記の様な、地域コミュニティとの情報共有・信頼性確保・相互メリット等のために、地方情報委員会(CLI)に類する仕組みを作れないでしょうか。

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会議の最後には、福島第一原子力発電所事故後の対応に、多大なる貢献した会社、その下請け会社に対する表彰状が手渡されました。内閣総理大臣表彰・経済産業大臣表彰等です。有名ではない、下請け会社ですが、実際には、1Fの最前線に立ち、初めて直面する困難な作業を完遂されたとのこと。その活動に感謝です。

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今回の参加者が、目測ですが、約500名程度。そのうち、福島県内からの参加者は約2割だそうで、残りは海外・東京からの参加者です。経済産業省主導の国際会議とはいえ、もうちょっと地元からの参加者が多くても良かったのでは・・・と感じました。