生活保護って、一般のサラリーマン生活には縁遠い話ですが、それをマンガコミックという形で、リアルにバーチャル体験することができる本です。生活困窮者に支給される生活保護費(いわゆる、セイホ)は、日本国憲法第25条に規定する「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」が根拠です。

そして、困窮者に寄り添って話を聞き、伴走して解決していくのが、自治体の職員であるケースワーカーの役割です。一方、その財源は国民の血税なので、それらの給付が正しく使われているか、他に生活を自立させる方法はないのか、不正受給がないかどうかをチェックするのもケースワーカーの一面です。基本的には困窮者を支援する立場ですが、不正受給が発覚した場合等によっては困窮者と厳しく対立することもあるわけです。
 
生活保護のマンガは、「神様の背中」を読みましたが、援助する側が、される側に回ることがある複雑な、ケース側からの視点でした。今回は、ケースワーカーの仕事そのものに焦点を充てたものです。

<神様の背中 ー貧困の中の子どもたちー さいきまこ著は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/45613440.html 
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<あらすじ>
新卒公務員の義経えみるが配属されたのは福祉事務所。主人公は、ケースワーカーという生活保護に関わる仕事に就くことになります。大卒のまっさらな人間が、生活に困窮した人々の暮らしを目の当たりにすると、どうなるか?彼らの葛藤は?本来、生活保護の制度は何のために存在し、どういった役割を果たすべきなのか?

マンガだからこそ、リアルな生活保護業務を、受給者(ケース)の部屋の中なども、細かく描かれていて、勉強になります。頑張っている受給者、怠惰な受給者、親身に相談に乗るケースワーカー、上から目線のケースワーカー。困窮している方々がどういう経緯・事情を抱えていて、それにどう向き合って解決していくかが、ケースワーカーの本質なのでしょう。
  
セイホの家庭の高校生がアルバイトをして得た賃金は、本来、福祉事務所に申告しなければなりません。そしてほとんどの場合、それは家庭の収入としてカウントされ、生活扶助費からアルバイト収入が減額されて、支給されます。そもそもセイホの制度趣旨が、家計内の誰かが働くのが前提で、それでも足りない分を国が補填しましょう、という建て付けだからです。それは一面、正しい。しかしセイホの家庭の高校生本人にしてみれば、自分が時間を使ってアルバイトした金額が、そっくりそのまま家庭の生活費から減額されてしまうのは、納得がいかない。普通の家庭であれば、部活の時間を削って、アルバイトしたら、その分は、余暇の活動に使えるのに・・・なぜ、自分はセイホの家庭に生まれてきてしまったのか???人生の将来に絶望してしまうかもしれません。

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どうしても生活保護の議論をすると、A.セイホは最後の砦なのだから、このセーフティネットを拡充しなければならない!B. 国民の税金で働かないで、最低賃金を上回る給付を受けるのはおかしい!という、二元論になることが多い。その中で、作者は生活保護というテーマを、可能な限り、どちらの視点もいれて、公平に描こうとしているように感じました。実際の現場ではどんなケースがあるのかを、バーチャル体験できると思います。