潜水艦の軍事オタクの本だと思っていました。ところが!これは防衛大卒、海上自衛隊幹部学校卒、潜水艦「せとしお」艦長による本です。実体験にもとづく潜水艦の実態と、潜水艦実機の内部の豊富な写真が掲載されており、国防上、本当にここまで公開して良いのか?という疑問さえ湧きます。

日本は、国土を海に囲まれていて、輸出入の99%以上を船舶に依存していて、海上シーレーンを自由に利用できるか否かは国の存亡にかかわります(その意味で中国が、南シナ海を自国領有化宣言していることは、フィリピンやベトナム、マレーシアの近隣諸国だけでなく、日本にも致命的な影響があると思います)。その防衛の任は、水上艇が主役なわけですが、圧倒的な水上艇兵力の差があってもそれを覆すことができるのが、潜水艦です。いったん水中に身を隠すと、(音響以外では)事実上、どこでどんな行動をしているか、現代でも全く捉えることができないからです。だからこそ、いまでもアメリカやロシア、中国などは核弾頭を装備した弾道ミサイルを搭載する原子力潜水艦を保有しています。

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艦長室・士官室・隊員の2段ベッド、魚雷発射管、ソナー室・艦橋・潜望鏡・艦内トイレの写真も掲載されています。艦内トイレの汚物をどうやって処理するか、その悪臭をどうするか等の下世話な話しから、海図が広げられないような狭さの艦内でどうやって、作戦計画を練るか等、狭い潜水艦内での活動等が、よくわかりました。

あくまで狭い艦内、いったん航海に出る数ヶ月帰投できない。さらには、めったに海上にも出れない、非常に過酷な任務です。海上自衛隊は、スマートを基本として活動していますが、こういった陰の役者がいて、海上自衛隊、ひいては日本が支えられているということをあらためて感じました。