ドイツ人の働き方の生産性が高い要因を分析した著書です。ドイツ人が1年に約150日休むのに対し、日本人の場合、平均的な休暇日数は124日です(土・日・祝日+平均的な有給休暇取得日数8日)。その差は26日もありますし、さらに残業時間を含めた労働時間を考えるとその差は44日もある(1日8時間計算)ことに、愕然としました。さらにサービス残業を含めたら、どれだけ日本とドイツの働き方が違うのでしょうか。

本当に「ドイツはすごい」のは、これだけ労働者時間が少ないにもかかわらず、製品の国際競争力が高いことです。それは対外経常収支がつねにプラスであることが証明しています。すなわち、その意味するとこは労働生産性が日本より高く、競争力の高い製品を作っているということです。さらにいえば、ドイツ政府は、プライマリーバランスを完全に達成しており(赤字国債を発行していない)、政府の借金を減らして財政が健全化しつつあります。あまりに完璧すぎて、うらやましい。 

ここまでは、ドイツを手放しで賞賛するのですが、何事にも表裏があります。高い労働生産性を維持するためにドイツが犠牲にしているものとして、派遣社員などの低賃金層の拡大していること、サービスの質の低さ、社会保障が手厚い分、国民負担率が日本と比べて大きく、可処分所得が少ないこと等も指摘されています。

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筆者は日本人が真似すべきことと、真似すべきでないことを挙げています。

日本人が真似すべきこと
・仕事への高い集中度と具体的な要求をすることによって、労働生産性を高くする
・そのために国が法律によって労働時間を誘導し、国民のワークライフバランスを保つ手助けをする
・例えば、「残業が多い社員は、会社への忠誠心がある」という、過去のメンタリティの残渣を完全になくすなどの企業側の考えも変革していく。「長時間残業して成果を上げた社員」よりも、「残業をせずに成果を上げた社員」への評価を大幅に高くする、等

日本人がマネすべきでないこと
・人件費の節約のためにサービスの量・質が悪くなること 

上記を踏まえて、日本人が取り入れたいドイツ流の報われる働き方を提言してくれています。というかドイツ流でなくとも、まっとうな会社なら、いずれも実践していることばかりです。
・自分に与えられている権限の中で決められることは、自分の責任で判断する
・打合せや会議は、どんなに長くても1時間以内とする
・出張報告書や打ち合わせのメモを書くときには、最も重要な内容だけを簡潔に記し、ペーパー1枚にとどめる
・メールなどの送り先の数は、最小限に。
・退社するときには、次の日に達成するべき課題を、箇条書きにして自分の机の上に置いておく。翌日出社してきたときに、何を仕上げれば良いか一目瞭然でわかる。
・課題リストに記した事柄を処理できたら、さっさと退社する
・課題リストには、優先順位を付ける
・まず顧客の問い合わせを最優先で処理する
・重要で複雑な課題は、集中度が高い午前中に処理する
・口頭で済む連絡は、口頭で済ます
・どんなに忙しくても10時間を越えそうになったら、退社する
・週に一回は早い時間に退社して、仕事とは全く別の活動を行い、気分転換を図る
・会社から与えられた有給休暇は、思い切って全部消化してみる
・長期休暇は、不公平感がないように、課の全員が交代で取る
・長期期間中は、会社のメールは読まない
・共通フォルダ等を作成し、誰が見てもすぐに業務を担当できるようにする
・電子フォルダーは、年度や件名などで単純に分類し、誰でもすぐに書類が見つけられるようにする
・誰かが長期休暇を取るときには、顧客から問い合わせがあっても、他の社員がすくに対応できる体制をとる
・早く退社できるように、昼休みは45分以内にする
・9:00-17:00の間は、タバコやコーヒーの休憩や無駄話、個人のネット閲覧を極力減らして、なるべく早く代謝する
・特定の仕事を仕上げなければならないときには、電話がかかってきても出ない
・社内の打ち合わせが多すぎると、特定の仕事に集中できない。自分で入れる打ち合わせは一日一件まで。
・週に一度はスポーツをする
・ 自分の所属する部や課内の上司や同僚からの理解を得る
・家族を大切にする

日本と決定的に違う条件が、ドイツは外国からの移民を多数受入れてきたことです。ドイツの在留外国人数は、人口の約10%を占め、移民系ドイツ人を含めると約20%に達するそうです。1950-60年代の移民は、単純労働者が多かったため、移民者はドイツ語を積極的に習得しなかったため、ドイツ社会になじめず、また転職も困難になったため、問題となっていました。現在では、移民の受入の基準を「その人間が、ドイツ経済に貢献できるか否か」に切替えているそうです。労働条件や社員への期待値や労働条件も、ドイツ人と外国人とで差はないとのこと。結果として、今後は一定のスキルがあってドイツ経済に役に立つ外国人が増えていくでしょう。日本で日本企業で働く外国人が、日本人社員との期待値(ポジションや勤務先、将来のキャリア)や労働条件が必ずしも一致していないのと、好対照です。

筆者の日本の労働条件改善の提言は、「企業で働く全ての社員に無期限の雇用条件を与え、書面化を義務づけること」だとしています。ドイツではすべての社員が雇用契約書を持っています。これにより、社員と経営者の両方がお互いの義務と権利を理解することになります。私もシンガポールでの勤務時には、毎年、給与、ボーナスの条件、仕事の詳細内容、休暇日数、医療保険、各種手当等が、詳細に記載された雇用契約書を毎年人事部と締結していました。これは完全に個人ごとにたくさんの事項がカスタマイズされていて、(良い意味でも悪い意味でも)同僚に決しても見せられないような内容でした。確かに、ドライではあるものの、権利義務を明らかにし、フェアに働くという視点からは、極めて有効な方法かもしれません。課題は、そういった契約社会に「慣れる」までちょっと時間を要するという点でしょうか。少なくとも、企業にとって貢献できる外国人を雇用しようとする限り、ここは避けて通れない道だと思います。