戦時中・戦後の広島を語る上で、原爆は避けられないし、そしてそれは悲惨な体験だったという論調ばかりです。それは事実なのだけれど、その被爆直後から奇跡の復興に焦点をあてた本がありました。広島に投下された原爆は、その悲惨さとは別の視点から、広島がいかに迅速に復旧していったか、また、そこには、どのような人の思いがあって、どう実行されたかを、分かりやすく漫画で示した作品です。福島の原子力災害からの復興の参考となるのではないかと思い、購入しました。
 
1945年8月6日、世界初の原爆投下で広島は破壊され、10万人もの一般市民がアメリカ軍によって虐殺されました。当時、原爆による放射能汚染によって「今後75年は草木も生えない」といわれました。しかし、原爆投下直後、8日の午後には広島-西条駅間で鉄道が再開、9日には市内路面電車が運転開始しています。8日には日本銀行広島支店が業務を再開、焼け残った日銀の建物で地方銀行12行も営業を再開しています。復興のスピードは意外なほど早かった。

それはなぜか?原爆で、10万人もの市民が亡くなったにもかかわらず、この当時の人びとの「責任感」、「公共心」、「広島人の矜持」があったからといわれています。その三点によって、異常ともえいるスピードで復興をなしえました。福島の原子力災害からの復興はどうでしょうか。加害者にきっちりと責任を取ってもらうという視点だけでなく、それぞれの個人・企業が、「責任感」、「公共心」、「福島人の矜持」を持つことこそが、復興をなしえる条件なのかもしれません。条件なのかもしれません。

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第1章 復旧最優先!“水道・電気・ガス”
第2章 市民の足、路面電車を動かした女学生
第3章 被爆2日後に営業再開した12の銀行
第4章 活気づく広島の商い
第5章 輸送のかなめ“三輪トラック”
第6章 ともに学ぶ“学校”の再開
第7章 平和を願う街づくり
第8章 心の糧を求めて“映画・音楽・本”
第9章 広島の名物“市民に笑顔を”
第10章 市民球団・広島カープ誕生!