平成27年9月議会 学力向上への取組みについて
7番 吉田みきと
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黒字:吉田の発言・質問、青字:執行部からの答弁 

2. 学力向上への取組みについて
(1)  低所得世帯の子どもへの学習支援
(ア) 市内の中学3年生の高校進学率
市内の中学3年生の高校への過去3年の進学率を伺います。

(教育部長答弁)市内の中学3年生の高校への過去3年間の進学率につきましては、平成24年度は98.0%、平成25年度は98.3%、平成26年度は97.8%となっております。

(イ) 市内の生活保護世帯の進学率
市内の生活保護世帯の中学3年生の高校への過去3年の進学率を伺います。

(保健福祉部長答弁)生活保護世帯における高校進学率につきましては、平成24年度が90.0%、平成25年度が89.7%、平成26年度が91.4%となっております。

いわき市の場合、過去3年間の生活保護受給世帯の高校進学率の平均は90%でした。いわき全世帯の高校進学率は98%なので、10ポイント近く下回っていることになります。
今議会においても、高橋明子議員がとりあげた「貧困の連鎖」という言葉があります。生活保護世帯で育った子供が、大人になって再び生活保護を受けることです。平成18年に関西国際大学が行った実態調査によると、貧困の連鎖の発生率は25%でありました。生保の家庭で育った4人のうち1人が、また生保になるということです。なんという税金の浪費でしょうか。この貧困の連鎖を断たねばなりません。社会的損失を防がなくてはなりません。それには生活保護受給世帯の子供たちが、安定した環境できちんと学習活動をし、高校に進学してきちんと卒業し、安定した仕事に就いてもらうことです。将来、自立のための資格を取得したり、就職を有利にするには、高校を卒業することが大切です。

(ウ) 生活保護世帯の教育扶助の金額
そこで生活保護世帯への教育扶助の金額を伺います。
 
(保健福祉部長答弁)中学生に対する教育扶助の金額につきましては、学校給食費を除いた主なものといたしまして、基準額として4,290円、学習参考書等の購入費及び課外のクラブ活動に要する費用に充てる学習支援費として4,450円などが毎月支給されております。

中3で月9千円支給という教育扶助の金額は、学級費、PTA会費等の支払やノートや鉛筆等の学用品の購入に相当するものと思われ、とても授業を補完するための、もしくはもっと上の学校への進学を目指すための通塾費用にはほど遠く、事実上、生活保護世帯の子どもは塾に通いたくても、制度上通えない実態にあります。

(エ) 準要保護世帯への支援内容
生活保護は受けていないが、就学援助費を受給しているような、経済的に厳しい環境の家庭、いわゆる準要保護者世帯に対する学習支援の金額を伺います。

(教育部長答弁)本市の就学援助制度につきましては、現在、通塾費用に当たるような学習支援費は、特に支給しておりません。

代表的な就学援助費である学校給食費の負担額は、中学生で年間約5万4千円です。準要保護世帯はこれさえも支払うことが難しいために、市から支給してもらっているわけで、準要保護世帯は生活保護世帯と同様、子どもは塾に通いたくても、事実上通えない実態にあります。進学した後の方が良い仕事に就くことができ、長い目で家計を助けることになるという場合においても、今、目の前の家計の状況が厳しく、最低限の生活もできない状況であれば、将来の所得増加よりも、現在の所得を選ぶことになるのであります。

(オ) 生活困窮家庭への支援内容
生活保護になってしまう一歩手前で踏みとどまるための施策として、国が定めた生活困窮者自立支援法があります。その中に、学習支援事業というメニューがあり、これは貧困の連鎖の防止のため、生活困窮家庭の子どもへの学習支援事業であります。対象要件は各実施主体において、地域の実情を踏まえ対象者を設定するものとされており、要件を満たせば事業経費の1/2が国庫補助対象となるものです。
こういった国が定めた制度を利用して、国庫補助を受けられるような制度を設計し、経済的にめぐまれない家庭の子どもに対し、貧困の連鎖を防止するために生活環境を整え、学習の機会を設けることに対するお考えを伺います。

(市長答弁)生活困窮者自立支援法の任意事業の一つに、貧困の連鎖を防止するため、生活保護を含む生活困窮世帯の子どもに対し、学習支援や居場所の提供、進路相談のほか、親に対する養育支援などを実施する学習支援事業があります。
市においては、現在、生活保護世帯の子どもを対象に高校進学支援プログラムを実施しておりますが、今後につきましては、同プログラムの効果や本年4月に設置した生活・就労支援センターに寄せられました相談内容を分析・検討するとともに、先進自治体の取組みなども調査・研究しながら、本市における学習支援のあり方について、検討して参りたいと考えております。

埼玉県では、埼玉県生活保護受給者チャレンジ事業として、生活保護受給世帯の子供たちの高校進学率の向上を目指し、平成22年度から中学生を対象に高校進学を目指した学習教室を始めています。その学習教室には小学校で習う小数の足し算や分数を理解していない生徒もいるので、先生役の大学生ボランティアがマンツーマンで子供に付いて、一人一人の学力に合った学習支援を行っているそうです。この事業で、高校進学率が向上しています。平成24年度には中学3年生の対象者782人のうち316人の中学3年生が学習教室に参加し、その結果、309人が高校に進学し、教室参加者の高校進学率は97%となりました。事業開始前の平成21年度の生活保護受給世帯の高校進学率86.9%より11ポイント以上高くなりました。
また教室の会場は特別養護老人ホームの会議室や食堂を無償でお借りし、教員OBなどの支援員と大学生ボランティアが、指導しているそうです。老人ホームが会場だと、施設職員の方や入所中のお年寄りと施設の行事などを通じ交流することができ、こうした交流の中で、生徒の人間的な成長も期待できるそうです。
また、高知市でも「チャレンジ塾」という類似の学習支援の仕組みをやっており、福祉部局と教育委員会が連携し、生活保護受給世帯の中学生を対象とした学習支援を実施しています。やりかたとしては就学促進員が定期的に家庭訪問し、保護者へ事業参加への働きかけ等を行うものです。民間団体に委託して、教員OB・大学生などの学習支援員が週2回程度、市内5カ所で学習支援を実施したところ、平成24年度は生活保護受給世帯の生徒106人が参加し、中学3年生43人のうち41人が高校へ進学したそうです。チャレンジ塾のOBの子どもたちの中で、自分が大学とか卒業してもここへ教えにくると言ってくれている子どもたちが出てきています。次の後輩を自分が教えに行くということで、そういう意味でも非常にうまくいいかたちで回っているそうです。なお、この事業に対する予算額は平成26年度、平成27年度とも年間3,200万円であります。

私が申し上げたいのは、何も生活困窮者をことさら優遇しようとするものではありません。「情けは人のためならず」という言葉があります。生活困窮世帯であることを遠因として学習意欲に欠けてしまっている生徒に対する支援をし、家庭環境や学習環境を改善することにより、まわりめぐって、そうではない生徒にも良い影響をもたらすことができるということであります。ご存じの通り、30人あまりのクラス編成の中では、学習意欲に欠け、さらには他の生徒に悪影響を与える問題児がおります。教師はそういった問題児への対応に時間がとられ、他の生徒に接する時間が減ってしまう、また本来の目的である授業に集中できない等の問題があります。そういった学習意欲を持たない生徒が学習意欲を持つようになることで、その生徒の将来の可能性広がるだけでなく、教師の目が多数の生徒に行き渡りやすくなり、クラス内の他の生徒も安心して学習に取り組めることにもなるということです。クラス全体のためにも、ぜひ調査・研究を進めて頂きたいと思います。


注)上記記載内容は、当方の手許メモを元に作成したものですので、正確には市議会公式HPをご確認下さるようお願いいたします。