平成27年9月議会 放課後児童クラブについて
7番 吉田みきと
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黒字:吉田の発言・質問、青字:執行部からの答弁 

1. 放課後児童クラブについて
(1) 運営の現状について
(ア) 運用学校数
放課後児童クラブは、児童福祉法第6条の3第2項の規定に基づき、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室や児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るというものであります。ここではいわゆる「学童」と呼びますが、これについて伺います。まず市内の小学校区で学童が設置されている割合をお示し下さい。

(こどもみらい部長答弁)放課後児童クラブにつきましては、平成27年4月1日現在、46クラブを設置しているところでありますが、一つの小学校区に複数のクラブを設置しているところもあることから、市内67の小学校区のうち、40の小学校区に設置しており、設置割合は60%となっております。

現在、市内では約2000名の児童が、学童に在籍しております。

(イ) 運営主体
学童の運営主体を伺います。

(こどもみらい部長答弁)放課後児童クラブの運営主体につきましては、クラブを利用する児童の保護者で組織された保護者会により運営されているものが27クラブ、保育園及び幼稚園等を運営している社会福祉法人や学校法人により運営されているものが14クラブ、その他NPO法人等により運営されているものが5クラブとなっております。

保護者会が運営主体となっているケースが大多数ということがわかりました。

(ウ) 平均的な終了時刻
学童の平均的な終了時刻を伺います。

(こどもみらい部長答弁)放課後児童クラブの終了時刻につきましては、各クラブの運営者が利用者のニーズに応じて、それぞれ定めているところであります。
平日の終了時刻につきましては、午後6時30分以前としているのが3クラブ、午後6時30分としているのが12クラブ、午後7時としているのが28クラブ、午後7時以降としているのが3クラブとなっており、平均では概ね午後6時50分となっております。

「小1の壁」という言葉をご存じでしょうか。これは、これまで幼稚園延長保育や保育園で18:00過ぎまで子どもを預かってもらっていたのが、小学校に入学し、16:00過ぎには帰宅するようになり、6才の子どもが両親の帰宅まで時間を過ごす場所がないという問題であります。
もっとも、これには両親が共働きであり、かつ自宅や近隣に祖父母がいないという前提です。本来であれば、愛情あふれる近親者に自宅にいてもらい、そこでともに時間を過ごすというのが理想ではありますが、現実社会ではそのような条件が揃っている家庭だけではなく、そのようないわゆる「保育に欠ける」児童を社会的に対応しようというのが、学童保育制度であります。
学童保育は保護者の児童の安全を守る場であるとともに、学齢期の児童が自立するための成長支援・健全育成を実践する場でもありますが、結果的に「仕事と子育ての両立」を実現するための、極めて有効なツールとなっていることも事実であります。もし学童保育がなかりせば、保護者の就労等に大きな不都合が生じることになります。

(エ) 平均的な市委託料
学童の運営に対するいわき市の補助、すなわち支払っている委託料の平均を伺います。

(こどもみらい部長答弁)放課後児童クラブの運営主体に対する委託料につきまして、平成26年度の実績で申し上げますと、平均で約486万円となっております。

(オ) 平均的な会費
保護者が学童の運営主体に対して、支払っている毎月の会費の平均額を伺います。

(こどもみらい部長答弁)放課後児童クラブの会費につきましては、各クラブが運営状況に応じて定めているところでありますが、平成27年4月1日現在の状況で申し上げますと、月額7,000円から1万6,500円の範囲内にあり、平均で約9,600円となっております。

先ほどの答弁のとおり、学童の運営の多くは、保護者会が直接行なっています。児童の親は月会費1万円程度を負担し、公費負担と併せ、それらを原資に保護者会が、指導員・補助員を雇用しています。多くの学童の運営費総額は年間10百万円-12百万円程度と伺っています。この運営費から5人程度の専属の指導員・補助員の人件費を負担し、備品購入、イベント開催費等を考慮すれば、運営は非常に厳しいといわざるをえません。

(カ) 対象者の属性
どのような児童であれば学童に入れるのが、その対象者を伺います。

(こどもみらい部長答弁)放課後児童クラブにつきましては、児童福祉法の規定に基づき、小学校に入学しており、保護者が就労等により昼間家庭にいない児童を利用対象者としているところであります。

(キ) 学童クラブの効果
学童に通うことによって、児童及びその保護者が得られるメリットを伺います。

(こどもみらい部長答弁)放課後児童クラブのメリットにつきましては、保護者においては、子育てと仕事等を両立することができるようになることは勿論、利用する児童においては、安心して過ごせる生活の場が提供されること、学習や友達との交流、遊び、体験活動等が放課後児童支援員の指導のもとに受けられること、各クラブで定められたスケジュールに沿って生活することにより、規則的な生活習慣を身につけることができることなどが挙げられます。

学童クラブの機能として、保護者の帰宅、お迎えまでの間の児童の健康管理・安全確保・情緒の安定、さらには適切な遊び・工作・季節の行事・誕生日会・飼育栽培等により自主性・社会性・創造性を培うことができます。また補食としてのおやつの提供、宿題など自主学習の場の提供、児童虐待や福祉的支援を要するケースなどの早期発見・関係機関との連携等があります。もとより、こと小学生の勉強に関しては、何かを教えるということよりも、机に15分間座って集中して取り組ませるということが大事であります。その点、指導員と一緒に全力でドッジボールや鬼ごっこをし、その後は宿題をするというふうに、学童では外遊びの時間と宿題の時間の切り替えがあります。そこでは指導員の声がけで、児童が机に向かう時間が確保されていて、座りたがらない子にも寄り添って、ソフトに机に誘導し、集中して何かに取り組ませる習慣付けが行われています。宿題というのは何の発見もないし、探求もありません。勉強したことを反復する、その繰り返しです。しかし宿題は重要なことを教えています。それは勤勉たれ、ということです、面白くもないことを勤勉に続けることで、それが端的に成績となって表れます。指導員は直接勉強を教えることはありませんが、わからないところを質問されれば、ヒントをあげたりもして、自主的に学習するよう方向付けてあげたりもしています。また部活動の開始時間までの利用や、いわゆる「中抜け」、それから「特定曜日だけに利用」などにも柔軟に現場で対応していて、学童を利用している家庭にとって、安全かつ有用な児童の居場所として非常によく機能しております。

(ク) いわゆる「保育に欠ける世帯」以外への門戸開放
惜しむらくは利用者が、いわゆる保育に欠ける世帯に限定されているということであります。そして現実に、それ以外の世帯からも学童の利用を求める声があります。ぜひ安全かつ有用な児童の居場所として、資格限定せずにすべての児童を持つ家庭に広く学童を開放していただきたく、市の所見を伺います。

(市長答弁)放課後児童クラブにおける利用対象者の拡大につきましては、国が定める基準と異なることから、実施は難しいものと考えております。
しかしながら一方で、核家族化の進展など、子どもを取り巻く生活環境が大きく変化する中で、放課後対策につきましては、すべての子どもの問題として考え、事業を構築する必要性があることから、先進事例も参考にしながら、関係機関等とも十分な協議を重ね、対応について検討して参りたいと考えております。

既存の枠組みのご回答は了解しました。一方、その既存の枠組みから一歩踏み出して、放課後の児童の居場所を、全家庭向けに提供している先進自治体があります。茨城県牛久市では、放課後の学び場事業「うしく放課後カッパ塾」を市内全小学校で、保育に欠けるかどうかを問わず4年生~6年生の全児童を対象に平日の放課後に開設しています。基礎学力の向上や、学習習慣の定着を図るための児童の自主学習を支援しています。活動時間は、火~金曜日のうち週2日16:00~17:30で、学習指導員が、児童生徒が勉強したい教材・学習プリント等を使用し、学習内容・方法等の指導助言をするというものです。参加者からは、「友達と一緒に取り組むことで楽しさや達成感が味わえる」「自分のやりたい学習ができ、宿題や自主学習がはかどる」「わからない問題を教えてもらえるので、解くことができてよかった」等の声が寄せられています。また保護者からは、週2日子どもの世話から解放される時間が作れたことで、心に余裕を持ってこどもに接することができるようになったとの声が寄せられております。そうしたことから放課後カッパ塾は、昨年に比べて希望者が1.5倍に増加しているそうです。こうした取組みの結果として、牛久市では近隣の市町村からの移住が増加し、14才以下の定住人口は平成17年から右肩上がりとなっております。国が進めている地方創生に基づき、いわき市でも総合戦略を策定中と伺っておりますが、そのキモは人口ピラミッドの低年齢層を広げることであります。そのために小中学校の児童・生徒を持つ保護者を呼び込むことが必要です。いわき市においても、新しい制度設計として全児童対象として児童の居場所を確保するための仕組みを調査検討していただきたく要望して、次の質問に移ります。

(2) 放課後児童支援員の待遇
(ア) 平均勤続年数
放課後児童クラブの運営の巧拙は、放課後児童支援員、いわゆる学童の先生によるところが大きいと思います。学童にいる先生は、ひとつとして保育士等の資格を持つ支援員、ふたつにその補助員がありますが、それら学童に勤務する放課後児童支援員の平均勤続年数を伺います。

(こどもみらい部長答弁)放課後児童支援員の平均勤続年数につきましては、平成27年4月1日現在で放課後児童クラブに勤務している放課後児童支援員の年数で申し上げますと、約5年8ヶ月となっております。

(イ) 現在の平均年収
放課後児童クラブに勤務する放課後児童支援員の平均収入を伺います。

(こどもみらい部長答弁)放課後児童支援員につきましては、平成27年5月1日現在、男性が17人、女性が140人、合計157人が雇用されており、一人当たりの賃金の平均につきましては、各クラブからの報告に基づき算定いたしますと、時給にして940円となっております。

(ウ) 支援員がよりよく活動できるための環境改善への取組み
ハローワークの募集条件によれば、放課後児童支援員の収入は、一日8時間勤務で月給15万~17万円、時間単位のパート時給で750円~1,000円であります。総務省「平成22年地方公務員給与実態調査結果の概要」によりますと、小中学校教員の43才ベースの平均月給は42万円であり、教員免許の有無や研修制度や責任の重さは全く違うとはいえ、教員と同じように体全体でこども達にぶつかりながら、こどもたちを育成していく職業として、放課後児童支援員の収入は半分にも満たずあまりに低額です。児童の安全を預かる責任の重さやモンスターペアレント対応、生命にかかわる食物アレルギー対応など、求められる仕事が複雑化しているのに待遇が不十分なことから、勤続が長く経験の豊富な指導員が育ちにくいという課題があります。将来を担う子どもの育成の一翼を担う指導員が、しっかりとその役割を果たすためにも安心して働ける環境が必要と思いますが、これに対してどのように改善していくかお示し下さい。

(こどもみらい部長答弁)放課後児童クラブにつきましては、子育て世帯の就労人口の増等に伴い、その需要は高まっていくものと認識しており、その運営の柱となる経験豊かな人材の育成については、重要な課題の一つと捉えております。
現在、放課後児童支援員の賃金については、処遇改善を図るべく、国の交付金を活用して取り組んでいるところでありますが、今後とも、更なる取組みについて、放課後児童支援員の賃金や各クラブの運営の状況、更には、他市の状況なども踏まえながら検討して参りたいと考えております。

現在の学童の運営への公的な財政支援は、国が1/3,県が1/3、市が1/3を負担する仕組みを伺っております。このような公的補助制度及び国の補助メニュー利用しつつ、さらにいわき市の独自の財政負担等も視野に入れて、支援員がより活躍できる環境を整えて頂けますよう要望して、次の質問に移ります。


注)上記記載内容は、当方の手許メモを元に作成したものですので、正確には市議会公式HPをご確認下さるようお願いいたします。