いわきのメインの浄水場のひとつが「上野原浄水場」、平のいわき市役所もここからの給水を受けています。その浄水場の水源地、取水口が好間側の上流にあります。この取水口は、大館城(飯野平城)築城の際に、城内用水として開発された施設ですので、約600年前のものです。それが改修を経て、現在もわれわれの水道水・農業用水として利用されていることに対して、先人に感謝するとともに、先人の歩みの歴史を感じます。

その取水口・導水路があまりに人里離れた場所にあるため、道路のアクセスがないばかりか、人が行くことにも困難がありました。そのため維持補修に大きな労苦があり、日常の点検はともかく、災害時には落石等による取水口や導水路の不具合が発生時には、重機が使えないため人力で復旧作業をしなければなりませんでした。それを解消すべく、管理用通路兼導水路として整備されたのが、「大滝江筋用水路整備トンネル」です。それがつい最近、開通したとのことでしたので、見せて頂きました。

<大館城跡 飯野平城は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/42231863.html
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画面中央が取水口です。ここがいわき市民の口に入る上水道の起点かと思うと、感慨深いです。いわゆる「好間のV字谷」と呼ばれるところで、現在、徒歩で切り立った崖を這うように進み、身をかがめて隧道を通っていかなければたどり着かない場所にあります。さすがに流れる水はキレイです。こんな場所に取水口を作ろうなんて企画した方の発想力に脱帽です。

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そんな不便な場所なので、そこまで直線で管理用のトンネルを作ろうとしたのが、500m弱のこの大滝江筋用水路整備トンネルです。これまで現場まで徒歩で1時間以上かかっていたところが、徒歩で5分で行けるようになります。また、重機も運べるようになり、管理が容易になると期待されています。

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好間のV字谷は、岩盤(花崗岩・角閃岩)でできた山です。掘削にあたっては一日4回のダイナマイトによる掘削を繰り返したそうです。それでも掘削が進むのは、一日平均4mくらいだったそうです。一般人が利用するトンネルではないので、トンネルの内部仕上げは、とても簡素です。岩盤をくりぬいて掘ったトンネルですから、常磐炭田のような崩落・落盤のおそれは非常に小さいそうですが、コンクリート吹きつけによる補強、ロックボルトによる岩盤改良等が施工されていました。

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取水口近くの出口です。工事期間中も落石があり、管理用の鉄柱等がひん曲がっていました。自然の力は偉大であることを改めて感じるとともに、きれいな浄水を得るための多大な労力を再認識しました。

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浄水場への原水として最大35,900㎥/日、農業用水として36,000㎥/日を取水・導水できます。その導水路がこちら。取水してまだ沈渣池も通っていない段階ですが、すでも水が澄んでいました。水質の良さはかなりのものです。聞けば、取水口より上流には人家の数は非常に限定されているため、生活排水がほとんど入らないのが一番の要因だそうです。

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