まんがで読破シリーズの、マルクス著による資本論・続資本論です。ストーリーは、田舎のチーズ職人が投資家と組んで小さなチーズ工場を作り、売上と利益を追求していきます。チーズ工場をさらに大きくするために、作戦を練って実行していきます。たくさんの従業員を雇って仕事をさせる。そして、工場を建てるために借りたお金を返していく。利益を上げるために、労働者に過酷な労働を強いてしまうが、黒字にさせるには仕方がない。そんな、社長自身も実は資本家に利用されていた・・・。資本家と労働者の 両方の立場の考え方の違いやそれぞれの悩み・苦労などを踏まえ、商品と貨幣、剰余価値、資本の蓄積過程、資本主義の残酷さがわかります。その過程で資本主義の利点とその矛盾に気付かされるというもの。最後のセリフ、「俺たちは奴隷じゃない」という言葉が印象的でした。

19世紀前後に起こった産業革命による工業化によって、安価での商品の大量供給が可能になりました。それ自体は良かったのですが、結果として資本家と労働者との貧富の差はますます広がることになりました。労働者の生活は豊かになるどころか苦しくなるばかり。資本主義に基づく、効率的な生産を追求すればするほど、労働者を酷使する生産工程となっていきます。付加価値を生み出すのは資本家のリスクテイクとビジネスアイデアだけなのか?であれば、労働者からみると「搾取」のシステムといっていい…。当時、常識であった(今でもか?)の資本主義社会の矛盾を堂々とつき、その問題を生涯をかけて立ち向かった革命家・マルクスの代表作「資本論」。

このように、あまりに高尚で難解なテーマを、マンガ化するという姿勢に、まず恐れ入りました。そしてその内容!非常にわかりやすくマルクスの思いが伝わってきて、かつ胸をえぐるような当時の労働者の搾取の状況を描写していて、感動!!!

利益を追求する資本主義社会が抱える矛盾とは何か?
なぜ不況が起こるのか?
なぜ失業者が増え、貧富の格差が広がるのか?
そもそも、資本とは何だっけ?
そもぞも、資本主義とは何だっけ?
そもそも、お金とは何だっけ?
そもそも、価値とは何だっけ?
等を、突き詰めていく内容で、かなりおもしろい。

恥ずかしながら、資本論の原典にあたったことがありません。一方、これまで経営論に深く携わってきたこともあり、マルクスの資本論についてはある程度理解しており、究極的には共産主義理論の本だ思っていました。一歩立ち戻ってみると、「資本論」は、その名の通り「資本って何でしたっけ?」という根本から分析した書籍で、そういう意味においては、資本主義社会を把握する上で必読の書だと思います。
 
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ポイントは、①限られたリソースのなかで企業が利益を増やすポイントは「剰余価値」、②「労働の生み出す価値」と「労働力の価値」はイコールではない、ということ。労働者と資本家は理論的には対等ですが、現実社会においては、(数億人いる)労働力に対して、(すぐれた起業家は少ないという)資本が不足していることから、その需給関係から、資本家の強みがあります。そんなことを100年も前にマルクス・エンゲルスが指摘していたことに驚きです。リスクテイクをする意味が、理論的にわかって腹に落ちました。