本書はフーバー研究所の機密文書「トレイナー文書」を研究して1982年に米国で出版した「unconditional surrender」をもとに全面的に書き改めたものだそうです。マッカーサーは占領直後、絶対征服者として日本の「弱体化」と「民主化」させることに成功しました。この成果のひとつが日本国憲法(マッカーサー憲法?)と教育基本法(アメリカの教育方針)の制定です。この日本国憲法と教育基本法は、ほぼそのまま現代で使われており、その意味では戦後70年を迎えても、マッカーサーの呪縛は解けていないといえるでしょう。

アメリカの国立公文書館に保存されている機密文書は、30年の時が経てば公開されるそうです。著者の西氏が日本人として初めて直接、そこに出向き、占領下の資料をいちからひも解いたことによって明らかになりました。そのトレイナー文書は、当時のアメリカ政府の戦略やその経緯が刻銘に記録されていました。アメリカから見た日本の戦前から戦後の事実を初めて見て驚きました。

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これまで、戦後の教育においては、現代史すなわち、戦中、戦後の日本の国情とアメリカの占領政策は歴史の授業では教えられてきませんでした。いや、あえて避けられてきたといっていいと思います。その遠因は、マッカーサーの呪縛、すなわち戦後直後のGHQの30項目の検閲指針にあります。当時から今にいたってもこの30項目に抵触する教育・報道は避けられる傾向にあります。

<GHQ検閲指針、いわゆるプレスコード>
1、連合国最高司令官司令部(SCAP)に対する批判
2、極東軍事裁判批判
3、SCAPが日本国憲法を起草したことに対する批判
4、検閲制度への言及
5、合衆国に対する批判
6、ロシアに対する批判
7、英国に対する批判
8、朝鮮人に対する批判
9、中国に対する批判
10、他の連合国に対する批判
11、連合国一般に対する批判
12、満州における日本人の取り扱いに付いての批判
13、連合国の戦前の政策に対する批判
14、第三次世界大戦への言及
15、ソ連対西側諸国の冷戦に関する批判
16、戦争の擁護の宣伝
17、神国日本の宣伝
18、軍国主義の宣伝
19、ナショナリズムの宣伝
20、大東亜共栄圏の宣伝
21、その他の宣伝
22、戦争犯罪人の正当性および擁護
23、占領軍兵士と日本女性との交渉
24、闇市の状況
25、占領軍軍隊に対する批判
26、飢餓の誇張
27、暴力と不穏の行動の扇動
28、虚偽の報道
29、SCAPまたは地方軍政部に対する不適切な言及
30、解禁されていない報道の公表

上記項目のいくつかは、現代にそぐわないでしょう。しかしながら、現実社会ではいまでもこのコードに縛られているのではないのか?という場面に出くわすことも、あります。GHQの30項目の検閲指針を遵守し、反核平和だけを唱えていても日本の国柄を他国からの侵略から守ることはできません。