金沢ふるさと偉人館は、石川県金沢市にある「郷土が生んだ優れた先人」を顕彰し、その業績を広く伝えるための博物館です。1993年の開館時は、金沢市ゆかりの人物5人を紹介していましたが、さまざまな分野で国際的国家的業績をあげた人びとを加え、現在では20人を超える人物の常設展示を行っています。特定の人物でなく、地域が輩出した複数の人物を対象として顕彰する施設は珍しい。
 
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金沢は、藩政後期から今日まで、さまざまな分野にわたり多くの先人を生み、育んできました。特に、明治期においては、新しい時代の幕あけとともに、国内外に優れた業績を残し、世界に誇れる「ふるさとの偉人」を輩出しています。特にナンバースクールという旧制高校があったことの意義は大きいと思います。金沢市には、旧制第四高等学校が置かれ、偉人の多くはこちらの出身者でした。ちなみに第一高等学校は東京、第二高等学校は仙台、第三高等学校は京都、第五高等学校は熊本、第六高等学校は岡山、第七高等学校は鹿児島、第八高等学校は名古屋です。

金沢ふるさと偉人館は、こうした先人たちの中でも、(金沢で)よく知られている代表的な人物について、資料や著作の展示、パネルによる解説などにより、その生涯や業績などを広く紹介する人物館です。特に、次代を担う子供たちには、見学や体験などを通じ、その偉業と生き方を知ると共に、こうした先人たちの研究の拠点ともなることを目的とするものです。

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小中学校の遠足先・郷土史調べ等に利用されているそうです。

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人物の生き様を紹介をすることによって、地域の歴史を知り、地域を好きになることによって、共通の価値観を持つことができます。共通の価値観を持った次世代の子ども達が育つことによって、地域を愛し、地域のために汗をかこうという雰囲気もが醸成されるでしょう。その意味では特定の人物でなく、地域が輩出した複数の人物を対象として顕彰するほうが、より効果的だと思います。

当初は偉人5人からスタートしたそうですが、遺族等からの貴重な資料の寄附が集まり、現在では20人を超える人物の常設展示を行っています。こちらの施設は、金沢市から指定管理により財団法人が運営していますが、毎年一定の指定管理料が必要になります。また資料を収集し、魅力的な展示とするための、精力的な学芸員個人も必須です。それらを支える市民の意思が、この施設を成り立たせているといってもよい。

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こちらでは『もっと知りたい 金沢ふるさと偉人館 91人の偉人たち』という冊子を配布しています。これは、金沢市が2012年に市の独自予算で、金沢ふるさと偉人館に委託して、小学生向けに郷土人物伝を編集・発行したものです。

2013年4月には、この『もっと知りたい 金沢ふるさと偉人館 91人の偉人たち』が、金沢市内の小学生に配布され、教材として使われているそうです。この91人のなかには、いわゆる体制順応型の人物もいれば、体制批判的人物も含まれているようです。紹介スペースには一人2ページが割かれているものから、1ページに10人までさまざまですが、いずれも金沢、もしくは日本の歴史や産業に貢献してきた人達です。
 
こうした文化事業は、時間も手間もオカネもかかります。しかも成果がなかなか見えにくい。したがって行政としても政治としても、やりにくい。しかし地域の子ども達の、先人達への畏怖や尊敬、地域が歩んできた歴史等を知ることは、まちの将来の強さにつながります。この金沢市の遠大な取組みに強く賛同します。
 
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<収録されている金沢ゆかりの人物>
【科学】
高峰譲吉、桜井錠二、木村栄、藤井健次郎、飯盛里安、(その他:大野弁吉、大屋愷あつ、井口在屋、高橋順太郎、辰巳 一、田中□吉、山崎延吉、原龍三郎、冲中重雄)
【文学】
徳田秋声、泉鏡花、室生犀星、中西悟堂、(その他:尾山篤二郞、小松砂丘、島田清次郎、中野重治、鶴彬、長沢美津、中原中也、井上靖、水芦光子)
【学問】
三宅雪嶺、鈴木大拙、西田幾多郎、藤岡作太郎、(その他:石川舜台、長尾巻、赤羽萬次郎、井上友一、桐生悠々、細野燕台、中田邦造、米山久子、駒井志づ子)
【教育】
黒川良安、関口開、北条時敬、加藤せむ、(その他:小川直子、納富介次郎、メリー・ヘッセル、黒本稼堂、山本良吉、日置謙、石原堅正、赤井米吉)
【芸術】
谷口吉郎、北方心泉、松田権六、(その他:竹久夢二、魚住為楽、玉井敬泉、吉田三郎、木村雨山、氷見晃堂、高光一也、寺井直次、蓮田修吾郎)
【産業】
清水誠、津田米次郎、安宅弥吉、八田与一、(その他:関沢明清、中橋徳五郎、早川千吉郎、野口遵、小倉正恒、林 安繁、藤本吉二、畠山一清)
【地域】
小野太三郎、横山隆興、高多久兵衛、森下八左衛門、(その他:西川吉平(長右衛門)、森田柿園、長谷川準也、水登勇太郎、木谷吉次郎、井村徳三郎、三浦彦太郎、安藤謙治、浦上太吉郎、荒崎良道、松本佐一郎)
 
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