鰻の完全養殖の成功した、増養殖研究所/国立研究開発法人水産総合研究センターを見学しました。鰻の産卵の生態系は不明な部分が多かったのですが、かなりの部分が解明されつつあります。その一つが産卵。これまでは産卵がどこでどのようにされるか、不明だったものが、ここ数年でほぼ特定できたそうです。

国内で流通している鰻の99%が養殖。天然モノは1%に達していません。そしてその養殖のためには、「天然の」シラスウナギが必要なのです。日本ではニホンウナギの数が著しく減っており、2014年には、国際自然保護連合(IUCN)はニホンウナギを「絶滅する危険性が高い絶滅危惧種」に指定し、レッドリストとしました。

このままでは、ニホンウナギの漁が世界的に禁止されてしまうかもしれません。漁を継続するには、絶滅しないとという証拠・エビデンスが必要です。そのために養殖を天然シラスに頼らない「鰻の完全養殖」が求められています。すなわち、人口的な産卵と、卵からシラスまでに育てあげる新技術の確立です(シラスまで育てば、後はこれまでやってきた養鰻経営で成魚まで育てられる)。

シラスの人口産卵・育成ができたのは、ごく最近のことです。
1999年 人工的に産卵させた卵から、シラスの変体前であるレセプトセファルスまで成長に成功
2002年 産卵後250日、53mmまで成長に成功
2009年 シラス成熟に成功
2010年 人口的に産卵・ふ化・生長させた成魚どおしによる、産卵・ふ化に成功

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鰻は1匹で数十万の卵を産卵します。人口的な産卵と、卵からシラスまでに育てあげる新技術の確立したといっても、そのうちシラスまで育つのは、たった数パーセントです。国を挙げて、その率を上げるべくさまざまな実験を繰り返しています。

天然モノであろうと、完全養殖ものであろうと、遺伝的にはまったく変わりがないものの、その後の育ち方に違いがあったりして、まだまだ鰻の成育には調べるべき点がたくさん残っているそうです。写真上は、人口的に産卵させた卵をふ化し、シラスまで育てている部屋です。明るい部屋が苦手なので、普段は暗くし、エサをあげるときだけ、深海の光に近い青色のライトを点けます。

この部屋だけで、9つの20㍑水槽×1000匹/1水槽=9,000匹を飼育しています。しかし約半年でシラスまで育つのは約5%だそうなので、この部屋の飼育で450匹がシラスとして生き残り、巣立つことになります。これだけ手間暇をかけて、半年で450匹。この研究所で、膨大なコストと時間を考えたら、この450匹に数百万円かかっていても不思議ではありません。仮に天然シラスをつかまえるコストが500円/匹として、450匹でも総コスト約22万円。並大抵のことでは、天然シラスをつかまえるコストに完全養殖のコスト近づけることはできないでしょう。そうであっても、絶滅危惧種であるウナギの世界初の完全養殖を成功させ、事業化することには非常に大きな意義があると思います。

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鰻の稚魚、一匹一匹に微少なタグが埋め込まれており、ウナギに端末を近づければ、どの成魚の掛け合わせで生まれたか、生年月日等が一瞬でわかるようになっています。これにより、発育が良い/悪い、環境条件の良い/悪いの比較研究が可能となるとのこと。

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めずらしい「ブチ」模様の鰻がいました。天然でも1万匹に1匹くらいの割合で発生するそうです。そのような種と通常種の発育の違い等も調べていました。

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シラスまで育てば、後はすでに確立されている養鰻のノウハウが使えます。養鰻を効率的に行うには、早期に成魚にすることが必須ですが、そのために必要なのが温かい水だそうです。できれば淡水で25-30度。通常の水ではそこまで暖まっていないので、ビニールハウスにし、さらに加温することが多いようです。この加温に要するコストも、経営上の大きな課題です。どうしても温暖な地域のほうが、競争力を持つことから、養鰻経営は九州地方に軍配があがります。現在では、南鹿児島と宮崎で、全国の養鰻出荷の5割を超えているそうです。

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人工的にホルモンを与え、出産を促している最中のメスのウナギを見せて頂きました。正直、産卵直前かどうかも、(雄か雌かさえも)、素人目には全くわかりませんでした・・・ごめんなさい。ただ、鰻の完全養殖の意義と、その可能性は理解しました。日本は魚の養殖に関する研究は、世界一進んでいると思います。オンリーワンになるためにも、ぜひさらにその道を突き進んで欲しいと思いました。

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