放射線医学研究所の緊急被ばく医療施設を訪問しました。東海村JCO臨界事故の患者3名が搬送されたところです。緊急被ばく医療といっても、まずは外部被ばくの測定(α線、β線、γ線等)、次に身体の除染です。除染の基本はまず流す、そして拭き取る。それでもダメならはぎ取る。緊急被ばく対応に魔法はない、ということを改めて感じました。

緊急被ばく医療施設に搬送されるような放射線関連の事件は、そう多くありません。代表的な事件としては、以下の2件ですが、偶発的な事故や念のための検査も含めて、直近10年間で累計100名未満だそうです。
・東海村JCO臨界事故 患者3名(全員死亡)
・千葉市におけるイリジウムによる放射線被ばく事故 2名(直接触った手の指が欠損等)

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左:緊急時放射線対応チームの隊員の制服
中央:同チームの医療職の制服
右:一般の方が着る、いわゆるタイベック
中央・右とも、ガンマ放射線を遮る機能はありません。それでも着用するのはあくまで衣服に付着する放射性物質をタイベックの着脱することにより、防ぐことができるというものです。

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搬送された患者は、まず表面に付着した放射性物質を測定することから始まります。左から、それぞれアルファ線、ベータ線、ガンマ線の測定装置です。

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上記の3種類の機器を使用して人力で測定するには時間がかかります。体全体の表面に付着している放射性物質をいっぺんに測定する装置もあります。その名も「体表面汚染モニタ」。WDCのようですが、WDCは内部被ばくを測定するもので、こちらはあくまで表面汚染の外部被ばくを測定するものです。

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重篤な初期被ばくを受けた患者の措置室です。外部被ばくの放射線量の測定が終わった患者は、除染が必要かどうかで分類されます。もし除染必要となれば、次のステップに映ります。

除染の基本はまず流す、そして拭き取る。それでもダメならはぎ取る。ケガ等をしている場合は、医療用ベッドに横たわりながら、なおさら慎重に除染するそうです。

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ベッドでの除染が有効でないと判断されるような全身の汚染がある場合は、浴槽?に似た温浴施設で放射性物質を洗い流します。東海村JCO臨界事故の患者3名も、全身汚染だったため、この施設を使用したそうです。現物かとおもうと身震いがしました。

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以上は外部汚染の初期対応でしたが、内部汚染に対しては全く別のアプローチとなります。内部汚染は、洗い流したり、拭き取ったりすることが物理上できません。すでに体内に取り込まれている放射性物質を、どう体外に放出するかが課題です。

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すでに体内に取り込まれた放射性物質を取り除くには、大きく分けて以下の3つの方法があります。
①放射性物質が体内に定着しないように、放射性物質類似の物質である「ヨウ素剤」を摂取する
②放射性セシウムを体外に放出するように、「プルシアンブルー」を摂取し、それに吸着させ、体外に放出させる。
③プルトニウムが対象として、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA:diethyrene diamine tetra acetic acid)に代表される「キレート剤」を飲む。

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内部被ばくの検査機器であるWBC(ホールボディカウンター)で実際に測定したデータです。縦軸が放射線の強さ、横軸が放射線の波長の違いです。写真の黄色のでっぱりがセシウムによる検出値、画面右奥の折れ線のでっぱりが、放射性物質カリウムによる波形の特徴だそうです。カリウムは自然界にたくさんありますし、人間の体の維持には必須の物質でもあります。

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甲状腺の異常を早期に発見する機器がありました。患者は座ってのど元に放射線をあててもらいます

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注)上記写真は、事前に放医研様の許可を得て、撮影したものです。