福島第一原発の1-6号機を視察しました。まず、免震重要棟で、東電の方から概要説明を受け、手袋・マスク・靴カバーをすべて着用して、東電の構内専用バスでの移動です。積算線量計も装着し、視察中に浴びた総放射線量も、退出時に測定します。なお、構内バスの途中下車はできず、見学はすべて車内からでした。

まず免震重要棟から出て1号機に向かいます。空間放射線量は0.3μSV/h程度だったのが、ぐんぐん上がりすぐに数μSV/hになりました。1-4号機は、福島第一原子力発電所事故により破損、事故停止となり、すでに2012年4月で廃炉が決定しています。

<福島第一原発 重要免震棟を視察は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/43026960.html
IMG_4384

4号機の真下に来ました。震災当時、建物の4階の共用プールに大量の使用済み燃料が保管されていて、危険な状態だったため、優先して共用プールからの燃料棒の取り出しが行なわれた建物です。現在は、すべての燃料棒が取り出されているため、基本的に核汚染はないはずですが、それでもこの付近は125μSv/hという、非常に高い空間放射線量でした。

なお、取り出された使用済み燃料棒は、水を張ったプールではなく、新たに「乾式キャスク」という、コンクリートの容器に格納されています。その乾式キャスクも、福島第一原発の敷地内に保管されています。核物質防護の観点からも、この原発のセキュリティを高めなければならない。しかし一方、高すぎるセキュリティは、原発廃炉作業の足かせでもあり、そのどこかで折り合いをつけて作業を進めなければならないところにつらさがあります。

IMG_4403

1-4号機は敷地南側の大熊町にありますが、5-6号機は敷地北側の双葉町にあります。そのせいか、1-4号機(青色)と、5-6号機(緑色)とでは、外壁のデザインが異なっていました。5-6号機は、東北地方太平洋沖地震当日は、定期点検のため停止中だったため、大きな被害はありませんでした。とはいえこちらも、1-4号機と同様、再稼働しないことが決定しています。

IMG_4413

福島第一原発が立地する、大熊町と双葉町が接する海岸線は、高さ30mの断崖絶壁にあり、本来であれば東日本大震災時の15mくらいの津波では、全く問題がない高さでした。しかし設置にあたって、30mの台地を掘削して、高波・津波に対して「十分安全な高さ」を考慮し、海抜10mの設置で決定、施工されたそうです。なので、免震重要棟は海抜30mの位置にあるのに、1-6号機が設置された場所は、海抜10mです。原子炉および発電機建屋出入口の高さ、敷地造成費、基礎費、復水器冷却水の揚水電力料などがもっとも合理的で、しかも経済的となるようにと、決まったそうです。
 
確かに過去に起こったチリ地震での津波は3-4m程度であったことを考えれば、そのような判断もあったのでしょう。しかし、既に30mの高さがあったのに、あえて掘削しなくてもよかったのではないか。後出しジャンケンではありますが、もし経済性よりも、リスク回避を第一として大規模な地盤掘削工事がなければと、悔やまれてなりません。
 
IMG_4414

こちらが外部電源喪失の直接の原因となった鉄塔の倒壊です。この鉄塔の倒壊がなければ、外部からの電線は切れなかったので、原子炉を外部から冷却することができました。今から見れば、単なる倒壊した小さな鉄塔の残骸ですが、これが大規模災害の主要因のひとつかと思うと、感慨深いものがあります。原子炉施設は、いずれのパーツも非常に重要で、そのバランスで成り立っており、複数のバックアップ体勢が絶対に必要です。

IMG_4418

注)上記写真は、事前に許可をもらい、同行した東京電力の社員の方に撮影してもらいました。