一般質問

7番 吉田実貴人

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安心の医療に向けて
(1)   医療関係の市の全体計画について
    市全体の医師・看護師数や産婦人科等の計画策定の必要性
これまで市内の医療人材不足が何度も指摘されていますが、そもそもいわき市全体を俯瞰した、いわき市のあるべき医療の姿はどのようなものなのでしょうか。一例をあげれば、医師数・看護師数はどの程度の水準を本気で目指していて、誰がいつまでにどのような対策を、計画・実行するのでしょうか。市内で新生児を産むには、現在市内では8つしか分娩取扱医療機関がないといわれており、今後数年間で、現役医師の高齢化や出産時の訴訟リスクから、さらに廃業せざるをえない分娩取扱医療機関が続くことが確実視されております。これに対して誰がいつまでにどのような対策を、計画・実行するのでしょうか。
医療はまちのインフラであり、しっかりとした計画策定が必要だと思います。そこで市全体の医師・看護師・産婦人科等の計画策定の必要性を伺います。

 

(保健福祉部長答弁)医師数、看護師数及び産婦人科をとりまく医療等の体制構築につきましては、医療法に基づき福島県が策定している「福島県医療計画」の中で、いわき医療圏も含め、各医療圏別に、現状、目標及び対策等が位置づけられているところであります。このことから、市といたしましては、独自の目標等を示した計画の策定は考えておりませんが、医師及び看護師の確保や、周産期医療の確保に必要な事業につきましては、今後も県との連携を密にしながら、「福島県医療計画」に基づき対応して参りたいと考えております。

 
    策定・実行責任を持った部門の設置
医療人材不足については、表面的な現象を取り上げて場当たり的な対応を図っても問題は解決しません。第1に「関係者の認識を変える」ことが必要です。すなわち行政・議会・住民が地域医療のあり方や医師に対しての思い込みを捨て、現在の地域医療や医師の置かれた状況をきちんと認識することが必要です。地域医療のあり方について学び、なぜ医師が地域から去って行くのか、医師の立場になって考えることが大切です。第2には、認識を変えた上で「行動を変える」ことです。医師不足を引き起こす原因となっていることは、すぐに変えていくことが重要です。知的専門職としての医師が働きがいを持って仕事ができる地域の環境を作っていくことが大切です。そして第3に、人々の認識と行動を変えていくためには「人と人とをつなげていく」ことが必要です。医療現場と行政、医療現場と住民、住民同士が立場を越えて地域の医療について議論する場と人が必要です。現在、地域医療に関する人々の意識はばらばらで、思い違いも多いです。議論するとき、立場や考え方の違いから深刻な意見の対立になりやすいです。立場や考え方の溝を埋めるために、関係者の考えを整理し、お互いが理解することが必要です。
これまでこの、人と人をつなぐことが軽視され、一方的に組織や権力を使って「やらせる」ことで問題を解決しようとしてきました。しかし組織とか権力では人の心は変わらず、問題をより悪くしてしまう可能性が高いと思います。現在の市の行政、いわき市病院協議会、市立総合磐城共立病院、市内の民間病院、いわき市医師会等いずれの医療関連団体も、いわき市全体を俯瞰した「人と人をつなぐ」機能を持っておりません。
特にいわき市は市単独で、福島県医療計画の二次医療圏であることから、このような機能を持ち、いわき市全体を俯瞰した計画の策定・実行責任を持った、一定の権限とスタッフを有する部門を持つべきと考えますが、その検討状況を伺います。

 

(保健福祉部長答弁)企画・策定責任を持った部門の設置につきましては、県の責務において「福島県医療計画」の進行管理が行なわれているところであり、本市において独自の組織の配置や人員の配置は考えていな状況にあります。

 
(2)   市内の産婦人科医育成について
    現状について
日本の産婦人科医療全体を見渡したとき、危機的状況といわざるを得ません。これは、産婦人科医の減少、特に産科医に関しては顕著で、全国で約3,000人が不足しているといわれております。
いわき市内の産科現場に立つ医師は、市立総合磐城共立病院を含めても10数名程度のみで、今後増加は見込めず、医師の過重な負担・疲弊が続いています。福島県内を見渡しても今後10年間で約2割の産科医が減少すると予測されています。
そこでまず、市内の産婦人科医育成の現状の認識を伺います。

(保健福祉部長答弁)市内における産婦人科医師の育成につきましては、産婦人科医師を目指す研修医も含め、総合磐城共立病院及び福島労災病院の
2病院が厚生労働大臣より臨床研修指定病院に指定されており、希望者と病院がマッチングに至った場合は指導医のもと臨床研修医を実施することとしております。

   
産科医招聘にあたっての課題について
産科に関しては、医事紛争・医療訴訟の増加、刑事司法の医療現場への介入の問題、さらには新医師臨床研修制度による二次医療施設の勤務医の減少も起きております。さらに、福島県浜通り地域は低放射線被ばくを遠因とする風評被害や交通アクセス等、さまざまな理由により外部からの医師招聘は容易ではありません。したがって、産科医、特に勤務医の労働環境は悪化の一途をたどっているといえます。直近では福島県立医科大学の寄附講座を開設し、産婦人科医3名を総合磐城共立病院へ派遣してもらっていますが、緊急避難的な措置であるため、派遣期間終了後にいわきに定着するとはいえないと思います。それを改善するには、産科医を自前で育てるか、どうにかして招聘するかになるわけですが、そこで産科医招聘にあたっての課題について伺います。

(保健福祉部長答弁)産科医師の招へいにあたりましては、平成
16年度の新臨床研修制度の開始に伴う大学の医師派遣機能の低下に加え、当直や深夜の緊急呼び出しなどによる負担や、訴訟リスクが高いことなどから、産科を目指す医師自体が減少しているなどの課題があるものと認識しております。

   
奨学金制度の新設
医師臨床研修マッチング協議会が公表している資料によれば、福島県立医科大学附属病院の、初期研修医のための小児科・産婦人科・周産期コースは、平成20年度から定員枠5名で開設されております。しかしフルマッチした実績がなく、充足率が過去7年平均で約9%となっています。要は、そもそも産科を希望する県内の研修医が異常に少ないということです。初期研修で産科を選択しなければ、産科の専門医の道は限りなく遠いものとなってしまいます。
安心して出産できるかどうかは、それぞれの家庭にとって非常に重要なことでもありますが、企業にとっても喫緊の課題です。すなわち社員が安心して暮らせるまちでなければ、スキルがある社員ほど他市へ転職してしまうからです。実際、それを非常に危惧している経営者の声を聞きます。
医療の制度設計を担当する国や、地域医療計画を担当する福島県のせいにするだけでなく、基礎自治体としていわき市ができることもあるはずです。例えば、自前で中長期的に産科医を育てることです。医師となるには極めて高い学力が要求されるとともに、私立大学であれば高額の学費負担も、家庭に要求されます。
福島県では、周産期医師増への支援として、県内で産科・小児科として勤務する意志のある医学生に対して平成27年度から月額35万円の修学資金を出すそうです。医療はまちのインフラ、そして人への投資は必ず、市の財産となります。いわき市にも医学生に対する月額235,000円の奨学金がありますが、それを拡大・拡充すべきではないでしょうか。そこで、産科をはじめとする特定の診療科医師を目指す医学生に対する奨学金制度の新設・拡充する考えについて伺います。

(保健福祉部長答弁)奨学金制度におきましては、福島県において、平成
27年度より、周産期医療分野に進む意志のある学生に対し、現行の修学資金に上乗せして月あたり35万円までを貸与する新たな制度の創設が予定されていることから、当面、当該制度の効果等を注視して参りたいと考えております。

(3)  
市内の助産師育成について
    現状について

さまざまな理由により外部からの医師招聘は容易ではありません。一方、出産は産科医師のみが担うのではなく助産師らのサポートスタッフの助力によるところが大きいといえます。正常な経過の妊娠分娩に関しての助産行為は、助産師が単独で行うこともできます。産科医師をサポートする役割として助産師の役割は大きいと思いますが、市内の助産師育成の現状について伺います。

 
    勤務看護師が助産師を希望する際の課題について
助産師の資格を得るには、4年制の看護大学で学ぶか、もしくは看護師が助産師学校などの養成機関で1年以上の専門教育と実習を受け、国家試験に合格しなければなりません。いわき近傍の養成機関には、福島県立総合衛生学院助産学科と茨城県立中央看護専門学校助産学科があります。しかし一般受験の競争倍率が高く、いわき市の看護師がなかなか入学できない状態が続いております。その要因として、ベテランの看護師の実務経験値がペーパー試験に反映されないということがあります。
そこで、勤務看護師が助産師を希望する際の課題をどのように認識しているかについて伺います。

(保健福祉部長答弁)病院等に勤務する看護師が助産師となることを希望する場合の課題といたしましては、看護師側では、勤務しながら助産師養成所に入学するための試験対策を行なわなければならないこと、養成所在学中は看護師としての収入がなくなること、更に、再就職に対する不安なども考えられます。また病院側においては、助産師養成所に入学する看護師に代わる、新たな看護師を確保しなければならないなどの課題が考えられます。

茨城県立中央看護専門学校助産学科には、茨城県内産科施設の就業施設長による推薦によってベテラン看護師が推薦枠で入学できるという制度があります。ぜひ福島県においても、福島県立総合衛生学院助産学科に同様の制度を導入していただくべく、ぜひ市からのサポートをお願いします。

 

    奨学金制度の新設
いわき市では、助産師を養成する専門学校などに通う方に月額10万円の修学資金を貸与する制度があります。卒業後1年以内に助産師となり、すぐに病院に勤務することが条件で、5年勤務すれば返還を免除されます。一方、これは総合磐城共立病院で勤務することが条件となっております。市内で勤務する助産師を増やすという政策目的を考えれば、市内の民間病院へ勤務する方にも奨学金を拡充すべきではないかと考えます。そこで、奨学金制度の新設・拡充の必要性について伺います。

(保健福祉部長答弁)助産師への奨学資金制度につきましては、卒業後の県内での就労を条件とした、福島県保健師等修学資金制度があります。また、本定例会に、総合磐城共立病院における新たな修学資金に関する条例等を提出しているところであります。更に、市内の病院等においても独自の取組みにより助産師の確保に努められていることから、新たな制度創設の必要性は薄いものと考えております。

(4)  
看護大学設置への支援について
    看護大学新設を検討している大学への支援の検討
市内に勤務する看護師を増やすためには、その学校の開校が一番効果的です。現在、いわき明星大学が看護学部の新設を検討している旨を発表しております。またその他の大学も水面下で看護学部の新設を検討していると伺っております。非常に時宜を得た活動と思いますし、医療インフラの拡大のためにも歓迎すべきことと思います。そこで、このような大学へ市としてどのような支援をする可能性があるのか伺います。

(保健福祉部長答弁)看護学部の新設に対する支援につきましては、現時点において、大学から具体的な要請等が出されてないことから、支援の内容を明言することは困難でありますが、今後、大学からの要請や要望などが示された場合には、市として可能な支援策について検討して参りたいと考えております。