手塚治虫氏の幕末のマンガ「陽だまりの樹」によれば、主人公の伊武谷万二郎の最後は、上野彰義隊として最後を遂げます。その上野彰義隊の壊滅の主要因が、官軍が実践に持ち込んだアームストロング砲です。これは、日本で大砲の鋳造に最初に成功した、肥前鍋島藩が作ったといわれています(異説もありますが)。

長崎港の警備の役割を、福岡藩ともに担っていた佐賀藩は、外国との接点もあったはずで、イギリスから本場のアームストロング砲を購入し、研究しました。そして、藩内に作った日本初の反射炉でそのコピーを作ったわけです(技術的にかなり高度なものでしたので、本当に本場のアームストロング砲に匹敵する能力があったかどうかは、異論ありますが)。

その当時のレプリカがこちら。上野彰義隊に白兵戦をさせず、お茶の水の高台から一方的に上野の森に砲弾を撃ち込み、壊滅させたので、よほど大がかりな大砲かと思っていましたが、さにあらず、かなり軽装な野戦砲でした。

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車輪がついているので、移動しやすそう。機動力は、砲撃力とともに、野戦における重要なポイントです。

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銃口は約10cmくらいでしょうか。砲身の中は、ライフルのような溝が切られていて、砲弾の方向性を安定化させていました。当時の技術としては、相当高いレベルだったと思います。それをひとつの小藩が模倣して作ろうという発想・行動力に驚かされます。先が見えないものに対してチャレンジしていく姿勢は、「坂の上の雲」に描かれる明治の人達の発想力・行動力にも共通します。日本人の誇りです。爪の垢を煎じて飲みたい。

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