牛タン「ねぎし」の社長の著書です。東京新宿を拠点として、全国に店舗を展開している会社ですが、実は、福島県いわき市で創業で、社長自身もいわき市出身です。2011年度日本経営品質賞に受賞し、スタッフを大切にする経営スタイルを賞賛されています。看板メニューの牛タン・とろろ定食は、同社が初めて世に出した賞品とのこと、定食としてはちょっとお高めの価格ですが、丁寧に調理した牛タンと、産地と健康にこだわったとろろは、個人的に大好きです。

事業は順調にいったわけではなく、当初1968年に父親の事業が倒産し、当時勤めていた東京の百貨店を退職。1970年に福島県いわき市に株式会社ねぎしフードサービスを設立したのがきっかけ。当初は、宮城県、福島県、茨城県の3県に多業態を出店する「狩猟型経営」だったそうです。すなわち、利益を経営目標の第一に置き、そのために流行の業態をいちはやくキャッチし、それを業界に先駆けて素早く開店する。そして先行者利益を十分に獲得するというものでした。非常に利益率が高かったそうで、どんどん店舗を展開していった。

しかし、既存店に売上ノルマを課す一方、既存店の改修や店長・スタッフらに対して、売上ノルマを課すだけの「刈り取り」型の経営をしていった。利益を経営目標に掲げ、そのために各店に売上ノルマを課し、そのために店舗のスタッフシフトを組んでいた。その結果、ある店舗で、突然、スタッフ全員が反乱を起こし、開店できなくなった。その理由は、店長以下、すべてのスタッフが同業の他店に引き抜かれるということ。経営とスタッフの間に信頼関係がなかったので、わずかな給料の差だけで、あっという間に人材が流出してしまった。

これを反省の糧として、スタッフを大切にし、店長に経営への参画をしてもらう「農耕型経営」に変更。併せて、経営の目が細かく行き届く、牛タン+とろろの同一業態での展開に変更し、さらに同一地域すなわち、東京新宿に集中出店を行ないました。これがじわじわと持続的な会社・社員の成長の原動力となり、日本経営品質賞につながりました。

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現在でも、根岸榮治氏のような、成功と失敗を繰り返し、成長を続ける創業・経営者がいるのですね。それもいわき出身者にいらっしゃることに、郷土の誇りを感じます。かつては、牛タンねぎしのいわき支店が、平駅前に出店していた時期もあったそうです。いつか「ねぎし」創業の地に、回帰してくださることを夢見ながら、あっという間に読破してしまいました。