合名会社四家酒造店さんにお邪魔しました。現在、福島県浜通りで樽から日本酒の醸造を行っているのは、こちらと太平桜酒造合資会社の2軒だけです。四家酒造店さんといえば「又兵衛」ブランド。普及品の上撰・佳撰だけでなく、純米酒や吟醸酒、原酒等のラインナップがあります。

この季節はちょうど新種の仕込みが始まるころです。南部杜氏さんが5名ほど常駐し、春までさまざまな種類の酒造りが行われます。考えてみると日本酒醸造は、いったん仕込んだ酒は原則として1年で売り切らなければならないし、人気が出たからといって年度の途中で増産することもできないという、ちょっと変わった消費財です。また販売先は継続的に取引している問屋さんや酒屋さんであり、卸売価格も大きく動かせるわけではないので(消費者は高値で買うかもしれませんが)、利益が爆発的に成長するわけでもありません。地道な商売です。

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仕込み・醸造をしているのは、内郷高坂団地の入り口すぐのところ。あまりに平の市街地から近く、高坂団地に隣接していることに、軽い驚きを覚えます。明治に建てられた建物の入り口は風格があります。

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蔵のどこにも看板がみあたりません。表札には「四家又兵衛」とだけかかっています。

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全国新酒鑑評会等で金賞を何度も受賞しており、それらの賞状が壁一面に掲額されていました。その受賞の割には、いわき市外での認知度はいまひとつ。なぜならこの「又兵衛」は福島県のいわき市外ではほとんど販売していないから。まさに本物の地酒といえるでしょう。
 
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麹を作るムロ。温度・湿度管理がなされます。ちょうど出来上がった麹を出したところでした。

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麹から、モトと呼ばれるものを作ります。素人目には、蒸かした米を粘度高く、ぐちゃぐちゃにしたようにも見えます。

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スタンダードクラスのお酒には、チヨニシキという酒米(福島県産)を使うそうです。共同の精米所であらかじめ精米し、精米歩合は65%。これが吟醸酒になると、山田錦や五百万石というような酒米を使用するし、精米歩合も50%や35%にまで磨かれます。磨くということはその分の米からできるお酒が減るということ。単純に精米度70%と35%では、製品となるお酒の量が2倍違ってきます。すなわち大吟醸の原価率は、普及品のそれの2倍です。販売価格にそれが反映されても当然でしょう。

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このような酒樽で醸造がすすめられます。厳密にはタンクごとに温度や条件により、酵母の働きが異なることから、味に差が出ます。それらを均質化した上での商品化となります。

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現在は、家族を基本としたコンパクトな経営をされており、規模は追求しないとのこと。また大規模な醸造工場見学客を受け入れていないとのことです。手堅く、まじめな経営と感じる一方、第三者の視点からは、地元に密着した醸造観光工場として十分なポテンシャルを感じました。地元の又兵衛ブランドの愛飲家ならば、一度その製造過程を見たいはず、またそれを見ればさらに愛着を持つので、杯が進むのではないか。

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注)上記写真は、すべて許可を得て撮影しております。